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自己紹介

 名前はなんだい?とヤーガと名乗る女性から問われたが、少年はその場に立ち尽くしながら口を閉ざしたままだった。ヤーガはそんな少年をまじまじと見てこう言った。

 

「何とか言ったらどうなんだ!私は自他共に認める美魔女だが、黙っている相手の心を読む力は持ち合わせて無いんだよ!どんな事情も言わなきゃ伝わりゃしないよ!」


 世間で魔女と呼ばれる存在を見たことが無いから、美魔女という言葉が果たしてヤーガに適した言葉なのかは、少年は知らなかったがヤーガが言い終えた後、ポツポツと喋り出した。


「……名前は、ありません。」


 その言葉にヤーガは眉を潜め、「何だって!名前が無いだと?あんた親はどこに居るんだ、私がぶん殴ってやる!名前は親が子供に最初に与えてやるものだろうに。」


 ヤーガはそう叫ぶと少年はまた小さな声で喋り出した。「親はどこに居るのか、分かりません。僕は半年前に村の教会に置かれてたそうです。」


 教会の前に子供が置いていかれる事は、そこまで珍しい事では無いが普通は子供をこさえたはいいものの、面倒を見れない貧しい家庭が赤子を教会に預けるケースが多く、10才にもなるであろうこの少年を置いていくのは変である。もう働ける年だし、わざわざ置いていくメリットが少ないからだ。


「置かれてたそうですって、あんた……その前はどうしたんだい?」ヤーガの声には少年に対する怪しさと心配が混ざっていた。


「その……それより前の記憶は無いんです。思い出そうとしてもモヤがかかったみたいで」


 するとヤーガは、少年の顔を覗き込んだ。少年は少しびっくりしたものの、その場から動かなかった。


「ふん、まあ嘘は言ってないようだね。それであんた帰る家はあるのかい?」


 少年は嫌なことでも思い出したのか下を向いて黙ってしまった。


「もし無いなら、此処で生活すると良い。」


 その言葉に少年はパッと顔を上げ、「良いんですか?」と問うように言う。


「ああ、あんたが納得するまでいて良いよ。ただし!此処で生活する者にただ飯食らいは要らないよ。仕事をしないんだったらさっさと追い出すからね!」


「ありがとうございます!お願いします!」


「なんだい少しは元気な声が出るじゃ無いか、此処で生活するならその元気を忘れ無い事だよ。」辛気臭いのは嫌いだからね、と呟きながらヤーガは手をポンと叩く。そして少年の前で宙に指で文字を書き始めた。


 ヤーガが指先を白色の光で光らせ宙に文字を書くと、それが残り形を成していく。あっけに取られているとヤーガは書き終わったのか、指の動きを止める。


「これで良し!あんたの名前は今日からラサクだ!」


 そうヤーガが言うと宙の文字は少年に向かって飛んで行き少年の胸の中に入っていった。少年、もといラサクは文字を触ろうとしたが触れる事はできなかった。ただ、その文字が身体に入っていった時、初めて心臓が動き出したかのように心も熱くなっていた。


 気がつくと、ラサクは涙を流しておりヤーガがその様子に気づいて少し驚いていると誰かが家に入ってきた。


「ただいま〜あの少年君、起きた?……ってええ!?何お婆ちゃん子供泣かせてんの?」


 ずぶ濡れの時に大樹の下で会った女性だ。と涙を止めようとしながらラサクが思っていると、


「誰がお婆ちゃんじゃ、この小娘!私の事は美魔女と呼びな!大体あんたは・・・」


 なにかしょうもなさそうな口喧嘩が始まってしまったなあと思っているといつの間にか横に蛇のマエルサが居た。


「ラサク此処は危険だ、あのしょうもない争いに巻き込まれる前に他の部屋に隠れるよ。」


 どこから話を聞いてたの、と問いかける前にマエルサはラサクに素早く巻きついて移動を始めた。

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