ずぶ濡れの出会い
初投稿です。よろしくお願いします。
空を見上げていた
昔は澄み切った青色を写していた空はいつの間にか燻んだ灰色になっていた。
灰色の空は雨を含んで、空の下にあるありとあらゆるものに降り注いだ。
雨に当たらない場所は人里離れた場所だと、大樹の下しか無かった。
雨が降り始めてからしばらくすると、とある大樹の下に転がりこむように走ってくる人影があった。大樹の下に入って来た急なお客さんは十になったくらいの痩せた少年で息を切らしていた。まっさらな白色の髪は顔にくっつき、黒色のフード付きの上着はびしょ濡れで少年の体温を奪う機能しか持ち合わせていなかった。そして小さな傷がいくつもある鞄を肩にかけていた。
少年は肩で息をしながら警戒するように周囲を見た後、何もいないことを確認すると鞄から少し湿った刺繍入りのハンカチを取り出して、上着を脱いで身体に付いた雨粒や汗を拭き取ろうとしていた。
そんな時だった
「...ここで服を脱ぐのはやめた方がいいよ?」
とすぐ隣で声がした。
少年は驚き、脱ぎかけた状態で大樹の下から飛びのいた。
脱ぎかけなので前も見えず、背中に大粒の雨が落ちて思わず「寒っ!」と声がでる。
すると先ほど声がした方向からクスクスと小さな笑い声が聞こえてきた。
思わず声の主を見てみると、少年の優に倍以上の身長をもち、紫色の尖がり帽子にローブを羽織った人物がこちらを向いていた。少年は人生で初めて見るような奇異な存在に驚き、立ちすくんでしまった。
「...えっと、ごめんね?お、驚かせるつもりは無かったんだけど突然私の近くに来たから声をいつかけようか迷っていてね?それでどうしようかと考えていたら君が服を脱ぎ始めるから・・・・・・・ゴニョゴニョ」
その人物はあたふたしつつも、それはそれは長い釈明をしていた。
一方、少年は相手の言葉は聞こえているものの先ほどの雨により体力を奪われているせいで話に全然集中できていなかった。
「・・・だからね、別に私は君の体を見ようとしていたわけでは無くだね。ただ・・・」
その人物の釈明が終わるより早く、体力は限界にきてドサリという音を立てて少年は地面に伏してしまった。
「!!! ど、どうしよう身元は分からないし、と、とりあえず師匠の家に運ぶしか...」
そんな戸惑うような声を受けながら少年はしばし、意識を手放した。