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町案内

「この町はね、迷った時は坂の一番下に行けばいいんだよ!」


「えぇっと......うーん......もう一回聞いてもいいかな?」


町案内をしていた悠から何の脈絡も無く言われた言葉に凛は戸惑い、何とかその謎を解いて友好関係を壊したくないと頑張ってみたがダメだった。


「凛ちゃんごめんね。ちょっと悠!関係ない話をしているところから急に脈絡のない話に切り替わられてもわからないよ!っていうか、私ですらわからないよ!何で今!?」


(菜月ちゃんもわからなかったのか、良かった私だけじゃなくて)


「うーんとね、町案内していたらここが何処だかわからなくなっちゃって。そう言えばこの町って坂を下りれば目印がいっぱいあるじゃない?それで凛ちゃんも迷ったら坂を下りればいいかと......」


悠の答えに菜月は頭を抱えた。


(悠ちゃんも迷子になったってわけ?)


「そうだったわ。悠、方向音痴だった。方向音痴の悠が町案内をするってことすんなり受け入れた私の失敗だわ。」


菜月はクルッと凛に向き直し、


「ごめんね。悠方向音痴だったわ。」


「うん。菜月ちゃんの嘆く声聴いてた。」


「....うんそうだね。」


そう言って凛と菜月は見つめ合い、そして2人して思わず吹き出した。


「「あははははははは!」」


笑った2人を見て悠は、何で笑っているのかわからず首を傾げていたが、自分もそんな状況が可笑しくなって笑った。



しばらく3人で笑い合ったあと。


「あー、笑いすぎでお腹痛い。それじゃ、改めて説明するね。」


菜月が一番先に笑いの壺から抜け出し話だした。

そのあと凛も悠の2人も何とか笑いの壺から抜け出し、聞く体制に入った。悠もである。悠は聞かなくてもいいだろうに、町の住人ではないのか?


「まず、凛ちゃんこの町の形わかる?」


「うん、丸い形してるね。」


「そう、この町はちょっと変わっていて、円形の形で道路も等間隔で円形に通っているよね。そして円の中心から時計の1時や2時のように12方向に真っ直ぐ円の外に向かっているね。」


「うん、結構特殊な道になってるよね。」


「そう、で、円の外側には学校や図書館、スーパーとか駅とか、公共施設が丸く並んでいるよね。だから自分の家が何処の公共施設から坂を登っていけばいいのかが分かっていれば、道に迷っても、坂の下の目印で必ず家に着ける。と悠は言いたかったんだよね?」


「うん、そうそう!」


悠は自分の言いたかったことをちゃんと分かってくれる菜月に嬉しそうだった。


「そうか。なるほど。それじゃ私の家は、坂下りると何があったっけ?」


「図書館だね。そして私の家は駅だし、悠の家は八百屋から上ると家に着くことができるよ!」


「そうか図書館だね。分かった。迷子になった時は坂を下りて、図書館から上って帰るようにするよ。教えてくれてありがとう!悠ちゃん、菜月ちゃん!!」


凛がお礼を言ったので悠、菜月2人は笑顔になって、


「どういたしまして!!」


こうやって町案内は問題なく進んでいった。





このひふみ町という町は特殊な町である。


日本の真ん中ら辺に位置し、大きな町からは少し離れた山にできた町で、国のモデル都市の縮小バージョンとして建てられた町である。


この町の形は特徴的で、円形である。

小高い山全体が町となっていて、山の頂上が円の中心である。この円の中心に大きな木を植え、その周りが広い公園になっている。

その公園を中心に等間隔に円が広がり地図の等高線のように道路が出来ていて、その円の道路に住宅が丸く並んで建っている。この道路は完璧な円であるため隣の道路に行くことが出来ない。これを解消するため、円の中心から、時計の文字盤の数字の方向に12本、真っ直ぐな道が引かれている。これは町の円の端まであり、人々は縦横無尽に町を行き来できるようになる。町の一番端の道路に小中高の学校に大学までもあり、図書館や役場、スポーツ施設や映画館、商店街まで丸く並んでいる。


なので全ての道が真っ直ぐに登って行けば、中心の公園に行き着くという不思議で特殊な町だった。





凛は、悠と菜月に案内してもらった町を何とか頭にインプットして、これからこの町で暮らせそうである。まだわからないところは追々、友達となった悠と菜月について行けば何とかなりそうだ。

凛がそう考えている時に、


「カーン、カーン、カーン」


と響く音が聞こえた。


「この音何?」


すかさず凛が2人に聞くと、


「紙芝居屋さんの合図だよ!」


2人は答える。そしてすかさず菜月が、補足の説明をした。


「紙芝居屋さんが拍子木を叩いて町中を回っている音だよ。それを合図に私たちは公園に集まるんだよ。」


「そうなんだ。この音すごく響き渡っている。」


「うん、そうだね。そこも不思議なんだよね。紙芝居屋さんって、町の中腹の道路を1周しているだけで、町全体に知らせるんだから。」


悠が不思議そうに言う。


「え?1周だけで?この音響きすぎじゃない?今日案内してもらったけど、下から頂上まで結構あるよ。」


凛も驚いている。


「そうだよね。改めて考えてみると、ちょっと不思議だよね。」


菜月が改めて不思議に思った。


(不思議なところはそこだけじゃないんだけど……)


凛は、2人には言えないことを考えていたが、そんな考えを吹き消すように、


「まあ、不思議だけど、それより私たちも早く紙芝居屋さんに行かなきゃ!お菓子売り切れちゃうよ!」


「そうだね。人気のお菓子なんて争奪戦だから、急いで行かなきゃ!」


悠も菜月も慌てている。2人の慌てぶりを見た凛は、


「お菓子って争奪戦なの?じゃあ、早く行こう!」


急いで3人は、紙芝居屋さんが来る、町の中心の公園に急いで向かうのだった。

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