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第56話 想いを乗せた剣

 「ここで決着をつけよう、ヘルド」


 同じ“英雄たちに育てられた者”のはずが、ヘルドに追い詰められるグラン。

 その理由は、周囲への影響を考えてしまっているからだ。

 ならばと、グランは究極奥義を繰り出す。


「【虹の世界(レインボー・ワールド)】」

「……ッ!?」


 グランから、六色の属性が放出される。


「うおおおおおおおおお!」


 火・水・土・風・光・闇。

 尋常じゃない量の属性が、全て均一となって。

 その六つの属性は(ぼう)(ちょう)し、やがて新たな次元を創り出す。


 その光景には、三英雄も息を呑んだ。


「グランの野郎!」

「やったのね……」

「うむ、完璧じゃ」


 これは彼らでさえも理想論で終わったものだ。

 全ての英雄の(わざ)を受け継いだ者にしか扱えない、正真正銘の究極奥義だ。


「おおおおおおお!」

「ぐっ!」


 膨張する空間はやがてヘルドを取り込む。

 この空間にいるのは、グランとヘルドだけだ。

 すると、その効果はすぐに現れる。


「ぐぅあッ!?」


 ヘルドが血を吐きだしたのだ。

 当然すぐに完全回復するが、グランは忠告した。


「この中で気を抜けば、死ぬよ」

「てめえ……!」


 この空間【虹の世界(レインボー・ワールド)】は、六つの属性に満ちている。

 絶え間なく全属性魔法を受け続けているのと同じだ。

 つまり、自らも全属性魔法で打ち消し合わなければ、すぐに体は崩壊する。


 だが、グランにもデメリットはあった。


「この量の魔法、いつまで出していられる?」

「……」


 グランは空間を保つため、全属性を放出し続けている。

 毎秒、ヘルドと同量の魔力量を消耗しているのだ。

 それでも、グランはこの魔法を展開した。


「これで全力を出せる」

「……!」


 この空間は外からは見えるが、中から外へ魔法が飛び出さない。

 自らの強すぎる力で、周囲に影響をもたらさないための空間だ。

 そうして、二人は理解した。


「全力でお前を倒す! ヘルド!」

「ハッ、いいねえ!」


 今から行われるのは、どちらの魔力が先に尽きるかの死闘(デスマッチ)だ。


「だが、ガッカリだなあ!」


 先に仕掛けたのは、ヘルドだ。

 この空間にもすでに順応し始めており、瞬間移動さながらの速さを見せる。


「お前がここまでして守るのが、あんな(ちり)どもだとはなあ!」

「塵じゃない! 友達だ!」


 グランも正面から受けると、激しい攻防が始まる。

 ただ、さっきと違うのはグランだ。


「……ッ! やるじゃねえか!」

「それはどうも!」


 グランは全力を初めて見せる。

 今までの学院でも本気ではあったが、必死ではなかった。

 自分と対等以上の相手を倒すため、(つちか)った英雄の業が次々と繰り出される。

 

「「【無間斬】……!」」

「「【虹の裁き】……!」」

「「【全天に架かる虹レインボー・オブ・オール・コスモス】」」


 剣聖、魔女の業を筆頭に、賢者の知識で相手の攻撃を読む。

 だが、相手もまた同じ英雄を師にする者だ。

 何十手、何百手先を読んだ最善手で、両者はお互いに同じ業を出し合う。


 攻防はまさに互角。

 両者を決定づけるものはない──かと思われた。


「グラン!」

「グ、グラン!」

「グラン君!」


 地上から、ふと声が聞こえてくる。

 声を上げたのは、ニイナ、シンシア、アウラ。

 グランと最も仲が良かった三人だ。


 それには後続も続いた。


「グラン君!」

「チッ……グラン」

「ふふっ、グラン君っ」

「「グラン君」」


 シャロン、エルガ、アリア、双子のイルミア・イルメアだ。

 島の端でヘルドの分身を倒した後、学院に駆けつけたようだ。

 彼らの声援は、グランの背中を押す。


「うおおおおおおお!」

「ぐっ!?」


(な、なんだこの重さは……!)


 二人が対峙して、初めてヘルドが押し負ける。

 

 そして、声は世界中からも集まる。


『少年!』

『グラン君!』

『英雄に育てられた少年!』

『最後の希望よ!』

『英雄の少年!』

『『『勝ってくれーーー!!』』』


 その全てがグランの原動力となるのだ。


「みんな、ありがとう」

「ぐううぅぅ……!」


 それから、三英雄が手を掲げる。


「グラン、やれ!」

「頼んだわよ!」

「全て預けるぞ」


 その手から流れていくのは、自身の魔力。

 グランに少しでも助力しようと魔力を預けているのだ。

 それには、全世界の者が続いた。


「「「グラン……!」」」


 世界の中心ディセント島に、世界中の魔力が集まる。

 それは全てグランに譲渡されていく。

 まさに世界の想いだ。

 

 対して、ヘルドは感じていた。

 自身の魔力が底を尽きかけてきているのを。


(ク、クソがぁっ!)


 手を掲げているのは、全員ヘルドにとっては“塵”。


 だが、塵も積もれば山となる。

 人々の魔力も積もれば大きな力となる。


 また、それだけではない。

 分身で消費した魔力は本人から失われる。

 ここにきて、七傑やシンシア達のもぎ取った勝利が効いていた。


 グランだけではない。

 学院のみんな、三英雄、その他の人々。

 誰一人欠けていては、この展開にならなかった。


「ヘルド、お前は何も分かっていない」

「……!」

「お前は誰かの為に戦ったことがあるのか!」

「……ッ!」


 互いに英雄たちに育てられた者だ。

 力に関しては同等である。


 両者を分けるのは一つ。

 守る者の差だ。


「この世界は力だけじゃない。自分一人で完結するようにはできていない!」

「ぐううぅぅッ!」


 グランの剣が、徐々にヘルドを押し始める。

 もはや誰が見ても勝敗は決していた。


「俺の勝ちだ、ヘルド」

「……ッ!!!」


 最後の一押し。

 世界の想いを乗せたグランの剣が、ヘルドの体を斬り裂いた──。

近々で完結予定です!

最後までお読みいただけると幸いです!

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54話から話が飛んでいて56話がないので、もしかして、この話は56話で55話が消えてますか?
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