表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/58

第29話 アウラの剣技

<三人称視点>


 ディセント学院、放課後。

 生徒たちあわただしく闘技場へ向かう。


 本日の序列戦『グラン対アウラ』を見るためだ。


「またあの一年か!?」

「まじで話題尽きねえな!」

「最近あのグローリアとやったばっかだろ!?」


 グランが学院に来てまた一か月経たず。


 全ての対決を含めれば、一年序列二位エルガ、一年序列三位ニイナ、英雄に最も近い者グローリアに続き、四戦目。


「よろしく。グラン君」

「はい、アウラ会長!」


 ついに、『七傑』にして学院生徒会長──アウラ・フェイティアと序列戦を行うこととなった。


「うおおおおお!」

「一年いけえ!」

「今回も期待してるぞ!」


「アウラ様ファンクラブ声出すぞ!」

「「「おおっ!」」」


 会場の勝利予想は半々。

 いや、むしろグランの方が多いかもしれない。


 それほどに、直近のグローリア戦のインパクトは強かった。


 そして、闘技場内で握手を交わした両者。


「それより、本当にいいのか? グラン君」

「?」


 今一度、今回の戦いについて確認する。


剣のみで戦う(・・・・・)というのは」

「……」


 アウラとて『七傑』の名に恥じない魔法を持つ。

 それでも、異常すぎるグランに対してはさすがに劣ってしまう。


 つまり、その差がなくなる分、この条件はアウラに有利にはたらく。


「もちろんです。俺から提案したことですから」

「分かった」


 だが、提案したのはグランからのようだ。

 彼には何か考えがあるのかもしれない。


「ワタシも剣士として、君とやりたかったんだ」

「ベストを尽くしましょう」

「ああ」


 言葉を交わし終え、両者は互いに距離を取る。


『始め!』


「……」

「……」


 審判のコールがあったにもかかわらず、両者は大きく動きはしない。


 一歩寄っては一歩下がり、互いに距離を保つ。

 まさに達人の間合いだ。


「「「……」」」


 観客もそれが分かっているだけに大きく声は上げず、固唾を飲んで見守る。


 そうしてしばらく、


「──!」


 珍しく先に動いたのはグラン。


「……!」

「実戦だとより(はや)いな」


 手合わせの時とは違うグランのスピード。

 だが、それをアウラは受け止めて見せる。


 ──そして、


「もっと上げますよ!」

「ああ、来いッ!」


 そこからは一転。

 両者の剣が中央で激しくぶつかり合う。


「うおおおおッ!」

「はあああああ!」


 グランが仕掛け、アウラが受ける。

 アウラのカウンターをグランが受け流す。


「なんだよあれ!」

「見えねえ!」

「速すぎだろ!!」


 あまりにも速い太刀筋に、観客は息を呑む。

 なお、全てを目で追えている者はほとんどいないだろう。


 そんな中、


「……!」


 胸の前で両手を包み、心配そうに行方を見守る少女が一人。

 アウラ専属のメイドだ。


(アウラ様……)


 彼女は、(あるじ)がグランと接するようになってからの日々を思い出していた。


───


 とある日の夜、アウラの部屋にて。

 グランとアウラはすでに何度も会う仲だ。


「兄上……」


 兄の形見である剣を手に取るアウラ。

 たまたま少し扉が開いていたことから、メイドは廊下から言葉を聞いてしまっていた。


「兄上、最近変な縁が生まれました」


 ぐっと力を込めたまま、言葉を続けるアウラ。


「グラン君って言います」


 言葉を重なる度、剣を握る力は強くなる。


「明るく、強く、剣も魔法もできる。まるで兄上を見ているようです」


 “高貴さ”という点では全く違う。

 それでも、アウラは確かにそんな風にグランを見ていた。


「それに、あの剣術……兄上とそっくりなんです」


 アウラがグランを初めて招いた日。

 彼女はグランの剣の師匠について詳しく尋ねた。


 尊敬する兄とグランの剣術が、限りなく似ている(・・・・・・・・)ものだったからだ。

 

 そして、何度か手合わせを行った二人。

 アウラはほとんど確信を得る。


「彼と兄上の師匠は、同じ人なのかもしれませんね」


 剣に優れていたというアウラの兄。

 彼は実は、剣聖ザンから剣を教わっていたのだ。


「それが、それが……」


 そうして、アウラは一層剣を強く握る。


「ワタシには懐かしく思えて仕方なりません……!」


 涙を一粒こぼすアウラ。

 グランに最初に近づいたのは、こんな理由からだったようだ。


「そんな彼はワタシと友達になってくれました。さらに前を向くよう導いてくれます」


 それから、そっと形見の剣を置くアウラ。

 

「ですが、だからこそ、ワタシは彼を超えたい」


 改めて決意を新たにした。


「兄上と同じ剣技の彼を超えて、過去のものにする。いつまでも囚われないようになるためにも」


 いつものキリっとした目に戻るアウラ。


「グラン君に直接対決で勝ちます。そして──」


 だが、そこには少しの寂しさもあった。


「兄上のことは全て忘れよう」


───


 アウラはそんな思いのために戦う。

 

 そしてそれこそが、アウラがグランと互角以上に戦う理由でもあった。


「いくぞグラン君!」

「……!」


 アウラは兄を亡くしてからも、いつも兄の剣術を相手にイメージして研鑽(けんさん)してきた。

 剣聖ザンから教わっていない彼女には剣術はマスターできなかったが、その副産物を得たのだ。


「アウラ会長……!」


 いつしかアウラの剣術は、対剣聖に特化(・・・・・・)し始めていた。


 イメージで何千、何万と剣聖の剣術と戦ってきたアウラ。

 それが実り、本番でついにグランを押し始める。


「おい、会長が押してないか!?」

「やっぱりすげえ!」

「でも、一年はグローリアを倒した剣だぞ!?」


「「「アウラ様ーーー!!」」」

 

 この流れに観客は大盛り上がり。

 その歓声に応えるよう、アウラもギアを上げた。


「決めるぞ、グラン君……!」

「……!」


 だが、グランはニヤリと笑う。


やっぱり(・・・・)そうでしたか」

「──! ぐっ!」


 グランの一瞬の反撃。

 剣を弾かれ、距離を取らされたアウラは、今の攻防をとっさに振り返る。


(今、何が起きた……?)


 だが、すぐに理解はできない。

 対剣聖に特化されたアウラの剣技のはずが、完全に対策外からの攻撃だったのだ。


「そう簡単には負けません、会長」

「やはりそうでなくてはな……!」


 両者の決着はまだ先のようだ──。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

お読み下さりありがとうございます!
面白かったら★★★★★で応援してね!
皆様の反応が力になりますので、よろしくお願いします!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ