第1話
「そなたとの婚約は破棄させてもらう!元の世界に戻れっ!」
「…………………………………………………………………………はい?」
私の名前は、ラリ・ミエル。10歳の頃に異世界に召喚されてから今日まで聖女をしていた。
まず、聖女とは日本人がここ異世界に召喚された人だけがなれる。この世界で修行をして終わったら聖女の力を解放し、国民のために使うことが仕事である。
それでそこから5年後……に新しい日本人がやってきた。その名は月明 奏。
彼女は私の次の聖女として修行をし、聖女になったら次の王と結婚するはずだった………。
だけど、現在の王 アンリー・クーカー。馬鹿王。もう1度言う。馬鹿王。
絶対にフツーの世界(これからは現世と呼ぼう)でも人気者にはなれない。馬鹿だし、女好きだし、金好きだし、我儘だし、自分が偉いからって自慢するし…………。私は嫌だったけど…………現世に戻れないって言われたし、身の安全のために了承したんだよね………。
そこからは何をしないのはなんだから、市民達に炊き出しを行ったり、怪我人を治したりして貢献した気がするんだけどなぁぁ。まぁ、でも戻れるのはいっか…………。
ちなみに奏は私のように王室から召喚されたわけではない。お忍びで街をまわっていたら出会った子。
1人だったから拾ったら偶然異世界人だった。そして、それを馬鹿王に報告して、見せたら気に入っちゃたらしくて……でも、まだ修行の途中なのに跡を継ぐのは大変………。
「アンリー様。奏さんはまだ修行は終わっておりません。この状態で聖女の力を解放するのは危険です。」
「うるさい。どうせ、お前がこの世界にいて俺と結婚したいだけだろう?」
「………………………………………。」
そんなことはありません。全く。というか、戻れるならいいです。ただ奏さんが心配なだけです。はい。全く、あなたと結婚したいわけでは。
「なに黙り込んでいる。まぁ、どうせそうなんだろう。しかしな………実際お前より奏のほうが美人だ!奏のほうが俺の嫁が似合う!」
…………あー……うん………この国の行く末が心配だ……。
「奏、明日には聖女の就任式を行う。」
「………えっ。国王様、予定より1ヶ月も前でございます。さすがに聖女の力を解放するのは………。」
「奏、俺と結婚するのが1ヶ月早まるのだ。いいだろう?」
「……………………………………………………………………チッ。めんどくさい………。」
「何か言ったか?」
「いいえ。なんでも。………わかりました、ご命令とありましたら。」
奏さん………心の声が………。でも、その気持ちわかります。
「そうだ、奏も聖女になったら改名しなくてはな。そうだな……カナデ・ツキリンとはどうだ??」
…………なに、ツキリンって。マスコットの名前かよ。
「国王様……さすがにツキリンは……。ツキリはどうでしょうか。」
「あぁ、そうだな……奏が言うのなら……それではその準備としてまずはこの元聖女を捨てなくてはな。神官、やれ。」
「……はっ。ラリ様、どうかお許しください。」
「いえ、しょうがないわ……。神官様、今までお世話になりました。」
「はい……。」
あぁ……これでやっとあの世界から解放された…………。
こんにちは、スズラです!「異世界から戻ってきましたっ!」の第1話を読んでいただけありがとうございます。