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思い切り泣いたあとは、花が開くように蔦が開いた。そこから歩き出した時、


「ティンキーは、草花に愛されているな」


月夜に微笑んだオース様に、ドキドキして顔を背けてしまった。


あれから、閉じ込められる夢を見なくなった。生活にも慣れてくると自然に笑っていた事に気づく。


すると、涙を流してないのに。花がふわりと咲いた。思わずしゃがみ込み花を撫でると、次々と花が開く。


「私、泣いてないのに…」


誰に言うでもなく、独り呟く。


「やっぱり、愛されているな」


その声に振り返ると、オース様が微笑んでいた。


「でも、これじゃあ、私は笑ってもいけないのでしょうか?」


ダメだ。感情を出してはいけない。

俯く私へ、オース様の手が伸びて、優しく頭を撫でられた。


「良かったな。ティンキーが笑えば草花も笑い、ティンキーが泣けば草花が慰める。俺は草花が羨ましい」


何を言ってるのか分からず、オース様を見上げると。


「俺はお前が好きだ。草花よりずっとな」


カッと、顔が熱くなる。オース様の言葉が信じられない。


「でも、私は…」


アストラ様から逃げてきた私が、オース様と一緒にはなれない。今更ながら、何故結婚してしまったのだろう。せめて、結婚前に逃げていれば。


でも、それだとオース様と会えなかったかも知れない。


「大丈夫だ。全ておばば様から聞いている。ティンキー、俺と一緒にこの国を出ないか?」


一瞬、オース様の言葉の意味が理解出来なかった。この国を出る?


「半年、いや3ヶ月後に行こう。俺が守ってやる」


ふわりと抱き締められ、月夜の晩を思い出す。私はこの温もりに甘えても良いのでしょうか?


「オース様。私も好きです。一緒に連れて行って下さいますか?」


背後から抱き締められた腕に自分の手を添える。


私は彼が好き。


気付いた気持ちに嘘はつけない。


それから二人でアンサ様へ話をした。最初は渋っていたが、二人が本気だと信じたアンサ様から、許しを得た。


「ティンキーちゃん。本当にいいんだね?私の知り合いを訪ねなさい。手紙を持たすから、それを見せれば協力してくれる。


オース。お前はちゃんとティンキーちゃんを守るんだよ!」


手を強く繋ぎ二人で頷くと、アンサ様も笑って頷く。多分、祖父母とは二度と会えない、アンサ様とも会えないだろう。


しかし、私は彼と一緒に生きたい。



******


「お前達!!ティンキーはどこだ!」


彼女が屋敷を出たと、王宮に知らせが入り。急いで屋敷へ帰ると怯えた使用人達を、俺は怒鳴りつけた。


何故だ!何故逃げた!


彼女は俺を覚えていない。頭では分かっていた。あの夏の日々を。


別荘へ来て、俺は1人で森へ入った。そこで会った少女は、少し生意気で、でも、弱虫な俺の手を握り、色々な場所へ連れて行ってくれた。


『この先に行こう!』


いつものように、俺の手を引っ張っていく少女。


『これ以上行ったら、危険だよ』


俺は少女を引き留めたが、


『大丈夫よ、この先に綺麗な湖があるんだって』


あまりに可愛らしいく笑うから、


『しょうがないな』


俺は怖さを隠して、少女と共に湖へ向かった。


本当に綺麗な場所で、振り向いた少女に笑いかけると、少女は俺の耳元で囁いた。

急に顔が近付いて、真っ赤になった俺に。


『あのね。私は……』


少女の息が擽ったいのと、恥ずかしいので、俺は少女を突き飛ばしてしまった。


倒れた少女が俺を見てびっくりしてたが、恥ずかしさと罪悪感で俺は、前を見ずに走り出す。


バシャーン!


何かに躓いた俺は、湖に落ちた。


『今、助けるわ!』


少女は、湖へ飛び込むと必死で俺の服を掴み、岸へ泳ごうとするが、服を着たまま子ども二人が、上手く泳げるはずも無く。


『みんな、彼を助けて!!』


少女が叫ぶと、ほとりにある花が咲き乱れ、蔦が俺と少女へ絡まると岸へ引き上げてくれた。


『大丈夫?助かったのよ』


ふわりと笑った少女に、俺は言ってはいけない言葉を発して逃げ出してしまった。


『バケモノ!!』


少女は悲しげに微笑んだのが、目の端に見えたが、俺は逃げてしまったのだ。


それから、少女の事を両親へ聞いたが誰も教えてはくれなかった。


大人になり、少女を探した。そしてやっと見つけた少女は、髪と瞳の色が変わり幼少期の記憶が無くなっていた。


俺のせいだ!!


髪と瞳の色が変わり、草花を操る人間。

あの夏の日々から、少しずつ調べていたら、大人になり、かなり古い文献を見つけた。


【プランツェの愛し子】


隣国のおとぎ話と思われている。誰も見向きすらしない話。しかし、俺は真実だと知っている。


プランツェの愛し子は、草花と話が出来る。草花は愛し子を守り愛する。


これがもし、王家に知られれば、彼女が利用される。今度は俺が守らなければ。


そう思っていたのに。彼女は俺を見ない。


再会した彼女は、誰より美しかった。本当は抱き締めて、俺のモノにしてしまいたかったが、もし、あの夏の日々を、俺が彼女へ言った言葉を思い出してしまったら……


そう思うと怖くて彼女の傍に行けなかった。


両親には、黙って結婚をした。彼女の能力を隠す為に、屋敷には必要最低限の使用人だけにして、彼女との接触を禁止した。


王宮での仕事、領地の事。目まぐるしい日々だったが、これが終われば休みが取れると、ゆっくり彼女と過ごせると思っていたのに。



まだ、間に合うだろうか?

彼女に全て打ち明けて、許してもらえるだろうか?


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