第8話
第8話
家の扉1枚を隔て、ことりと鈴奈は久しぶりに言葉を交わす。
「体調胴どう?風とか引いてない?」
「からだは…とくに…」
「それならよかったよ~!」
身体面に関しては何も問題がなさそうで鈴奈はひとまずその点は安心した。
「最近すごく思うことなんだけど、学校行ってて1時間目で眠くて気が付いた時には4時間目終わりかけてたりとかよくあるんだ~」」
すぐに鈴奈が話し始める。
ただ彼女から出てくる話は他愛もない物ばかりだった。
今日何があったや周りの友人たちのこと。
戦闘のことやことりに対してのことは自ら話したり聞こうとしない。
学校生活で出てくる話も授業のことはまったくで、よく聞けば何しに学校へ行っているんだというレベルばかりの話だった。
最初こそことりはなぜそんな話ばかりするのだろうと考えはした。
だが次第に話のばかばかしさにうなずいたり、こわばっていた顔や口が緩くもなっていった。
もちろん扉を隔てているから鈴奈にそんなことはわからない。
それでも彼女はそんな中身の内容な話ばかりをして、1時間ほど経過した。
「というね~」
「っ、ふふっ。」
「お!笑った!聞こえたよふふっていったの!」
扉越しでもその声が聞こえた。
ただ話を聴いて笑ってくれた、それだけで鈴奈は自分のことかのように喜んでいる。
「っ…なんか、ツッコミどころ多いぁ~と…。」
「…桐崎さん、でもそんな話をしに来たんじゃないですよね?この間の…」
「え?なんのことー?」
ことりも本来話すべき内容はわかっていたはず。
だが鈴奈は知らない事かのようにふるまう。
「この間の、その…私の…」
「…ん~、話したくない感じだし無理に聞く気はないよ?」
「ただ鈴奈は、ことりちゃんが学校に来られればいいなぁ~ってそれだけ。」
彼女からの返答はことりに取って見当違いなもの。
ただ、それはそれで彼女としては難しい。
「私、学校には行けないです…桐崎さんも見たと思いますけど…私は時折あぁなります、コントロールができなくて…周りが見えなくて…」
「普通じゃないんです…」
自らも自覚のある状態。
生きていく中で彼女は周りとかかわるべきではない、普通ではないとした。
「普通ってなに?世の中いーっぱい!人いるよ?沙弓ちゃんから知ってみれば鈴奈なんて普通じゃないーって言うかもしれないし、面白くないと思う。」
「でも、私は…私がいることできっと迷惑をかけてしまいます。」
「なんでなんで?」
「周りが迷惑って関係ないと思うし、というか人は周りに迷惑をかけながら生きていくものだーって教わったよ?」
「迷惑をかけたとしたら、あとはその迷惑をかけた自分をどう許してあげるか~って。」
自らの言葉に帰ってくる返答でその先の言葉を詰まらせることり。
鈴奈は続けて語り掛ける。
「ことりちゃんは今のことりちゃんがいやって感じで、それを直したいって感じで 無理してると思う。」
「それに原因があるんじゃないかなーってのは思うけど、嫌なことばっかり考えたらそれが続いちゃう。」
「まずは鈴奈に甘えるってところで!鈴奈なんでもやるよぉ~!いじめられたら守ってあげるし!勉強も教えちゃう!!鈴奈のくっつき虫になっちゃおうよ!」
鈴奈は立ち上がり、扉に体を向けて高らかに宣言する。
自らに依存していいと、そう言っているようだ。
「それで鈴奈も困ったことがあったら、ことりちゃんのくっつき虫になって迷惑かけちゃう。」
迷惑をかけて言い、その言葉通りことりに余裕を持ち始めた時鈴奈も迷惑をかける。
誰にも迷惑をかけない人はいない、鈴奈はそれをわかり切っているからそのような発言を続ける。
「…あっ…。」
そんな時だ、運悪く端末にニヒトの出現アラートが入る。
「ごめんことりちゃん、鈴奈いかないと。」
地面に置いていたかばんを持つ。
「あとは学校でっ!あ、そうだ!この間の男の人はちゃんと生きてるからね!」
最後にそう伝えニヒトの出現位置へ走り出す鈴奈。
結局最後の方はことりの声を聞くことができずにいた。
鈴奈が話したことでことりがどう思ったか、知りたかったが今は知ることができない。
でもまずは目の前のことに集中、そう心に言い聞かせる。
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~1年C組~
翌日
朝のホームルーム前。
まだ授業すら始まっていないにもかかわらず鈴奈はとても眠そうだった。
後ろの同級生が声をかける。
「ど~したの?」
「いやぁ~、昨日夜遅くまで歌と踊りの練習してて~…疲れて~」
自主練習を遅くまでしていたことで眠気がぬぐえていない。
まして昨日は戦闘もあった、早く寝ればいいだけの話だったのだが自業自得だろう。
「またせんせ~に怒られるぅ…」
「席が近かったら、私も起こしてあげられるんだけどね。」
「ほんとだよぉ~…え?」
鈴奈は思わず顔を上げた。
まだ少し不安そうな様子のことりが制服をしっかり着て鈴奈の前に立っていた。
「ことりちゃん!!」
「おはよう。」
ことりがしっかり鈴奈の目を見て挨拶する。
「やっと会えたねっ。」
「うん…すぐにやらないといけない事あって。」
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~地下室~
「遅れてしまってすみません、あの時は助けていただきありがとうございました。」
その日の放課後、鈴奈 沙弓 園子 陽華に助けてもらったことの感謝を述べた。
「学校、来てくれるようになったのね。」
「はい、桐崎さんが何日も通ってくれて。」
「こりゃ~身を挺して守ったかいありましたなぁ~」
まだ包帯がすべてとれてはいないものの病院から退院した園子もその場にいる。
彼女を守り切ったことを誇って鼻を伸ばしている。
「ありがとうございました、秋先輩っ。」
「それで、まだ自分のことで精いっぱいで時間がかかるかもしれませんけど…何かお手伝いできることがあったら力になりたいです。」
「今日は、それその2つを言いに来ました。」
助けてもらったことの恩。
そしてそれをお返しできるよう、少しずつ手伝いたいとの申し出を全員にしたのだった。
「私たちは見返りを求めてやってるわけではないわ。」
陽華はそう伝えるが
「いえ、私がやりたいこと…なので…だめですか…ね…」
彼女の言葉、自らの意思でここにきているわけだ。
「っ、わかった…少しずつお願いするわ。」
その申し出を受け入れた。
「ありがとうございますっ。」
自らの余裕ができ始めた時、秋と同じように外部として手伝うこととなる。
そんな彼女の様子を見て、沙弓は鈴奈に告げる。
「昨日は、言いすぎたわ…ごめんなさい…望んではいたけれどこうなるって信じられなくて。」
そう謝罪する。
ただ鈴奈は
「気にしないでっ!やってみないとわからなかったんだもん、もしかしたら沙弓ちゃんが正解だったかもしれないし…わかんないっ!今がいいならそれでいいと思う。」
全く気にするそぶりはなく、場合によっては沙弓の判断が正しいことも本人はわかってのことだった。
安心した沙弓。
ただ同時に、沙弓は鈴奈に対して思うところが出てくる。
彼女はなぜここまでの行動ができているのか。




