7 扁桃腺摘出④
傷がゆっくりゆっくり治ってくると、ボーッと(というのも語弊があるのですが)入院しているのが、もったいない気がしてくるものです。
毎日のようにお見舞いに来てくれている夫(お父さん)も、息子と二人だけで暮らすのに、口に出しては言わないものの疲れが見えてきます。
痛み止めの飲み薬を出してもらい、固いおかずを食べず大人しく?やわらかご飯を食べていれば。
別に、家で養生してればいいんでない?
そんな風に思うようにもなりました。
なので、主治医(耳鼻咽喉科)に相談。
でも(何故か)きちんとした返事は帰ってきません。
駄目なら駄目だと、論理的に説明してほしい患者。
しかし主治医は、退院してもいいとも悪いも言わず(言う必要を彼は感じていなかったのか)
「(傷の)治りは順調ですね」
と言うだけ……のように、感じました。
もちろん、何があるのかわからないし、傷の治り方には個人差等々あるでしょうから、いい加減なことは言えないのかもしれませんが。
それならばそれで、
「傷は治ってきてますが、○月○日までは入院していてください」
と、期限をきちんと示してほしかったのです。
もちろん、ある程度の期限は示されていましたが(手術後十日から二週間、的な)、十日と二週間では四日も違います。
お医者の感覚では四日くらい、誤差の範囲内かもしれませんが。
留守宅を守るお父さんにとっては切実です。
仮に『手術後十日』で私が退院すれば、残り四日、完全復活ではないものの母親がいることで子供の世話を、仕事が始まるまで少し休むことが出来ます。
しかし丸々二週間、私が入院すると。
仕事が始まる直前まで、気を張って子供の世話をしなくてはなりません。
彼はもちろん、何も言いませんが。
子守りに慣れていないし、疲れているだろうな~、と私としては思っていました。
その辺の機微が、お医者さんには今ひとつ伝わらずにやきもきしていました。
「あ、じゃあ術後十日で退院してください~。いいと思いますよ~」
軽~い口調でそういう人、1名。
腎臓内科へ新しく赴任してきたらしい、まだ若い女の先生です。
ほとんどは耳鼻咽喉科の先生が診察していましたが、たまに腎臓内科の先生も診察に来ます。
その時に、退院の日取りがどうなるかちょっと相談してみると。
何とも軽~く、そう言われました。
マジですか?
やったー!
なので、そのつもりで退院準備。
夫へもそう伝えます。
が……。
「は?」
明日退院していいんですよね?
そう言うと、耳鼻咽喉科の先生が低い声でそんな感じに答えます。
「誰がそんなこと言いました?」
「え? でも腎臓内科の若い先生が……」
そのつもりでいたことを伝えると、耳鼻咽喉科の先生は苦笑い。
「そうですか……退院するかどうかは僕が決めるんですけどねえ……」
ボヤくようにそう言いつつも、まあ彼がかねてから言っていた通り私の傷の治りは順調なので、しぶしぶ、退院を認めてくれました。
「万が一、のどの出血があった場合。すぐに来てくださいね」
脅かされつつ。
痛み止めや化膿止めの薬を処方され、退院の手続きをして……帰宅!
お疲れ私!
お疲れお父さん&息子!
だけど……あの若い腎臓内科の先生。
後で耳鼻咽喉科の方からクレームが来て、上司である腎臓内科の『色白細面・怜悧な眼鏡を光らせた優男風ドクター』に、めっちゃ怒られたのではないかしらん?
彼女、報・連・相の大切さを身をもって知ったかもしれませんね。
……ファイト!