6 ステロイドパルス②
さてさて。
教科書通り?に、私の治療はまず、『ステロイドパルス』から始められることになりました。
ただ……。
「初めてステロイドパルスを受けていただく場合、入院になります」
担当医は宣う。
……え?
ちょっと、また入院~?
勘弁してよ、ウチは手のかかる小さい子がいるのにー。
口に出しては言わないものの、私の顔を見てその不満を察したドクターは、苦笑まじりに言いました。
「ステロイドパルスを一番最初に行った時、大抵の人は血糖値が急上昇するので、場合によってはインスリンを注射しなくてはなりません。ですから、血糖値の観察と管理をするため、入院していただきたいのですよ」
(げえええ? けっとうち~~? いんすりんんんー?)
IgA腎症、という病については何とか呑み込み始めた状態で、その治療の過程で糖尿病対策的な措置も必要と聞き、げんなりする私。
インスリンの注射とか、結構重い糖尿病患者に施される処置じゃないですか、ヤダー。
げんなりしつつも、やらねばこの病で最大限の足掻き『現状維持』すらままならない、と聞かされれば、やるしか患者の進む道はありません……とほほ。
ところで。
腎生検後の治療を開始する時期に、ウチの息子はようやく幼稚園へ通い始めました。
四歳児のクラス(学年としては五歳児クラス)からの二年間、通わせることになりました。
いえその……実は。
近所の公立幼稚園(二年保育)に通わせようと思っていたのに、息子の学年から募集がなくなるということを、三歳になる年の秋ごろに知りまして。
(少子化のあおりか、ウチの近隣では公立幼稚園や公立保育所が次々、閉鎖になる時期でした)
あわてて、通えそうな近くの私立幼稚園に問い合わせましたが、時すでに遅し。
月に4~2回、午前中だけ遊ばせてもらう感じのプレ幼稚園的なものは定員に空きがあったので、四歳児の頃はそれに通い、正規の通園は次の年(五歳児クラス)から……ということに。
正直、超マイペースで自分の興味(だけ)に忠実なヤツを、三歳から入園させるのは若干不安があったこと(通園渋って毎日ごねそうだと思いまして……)も相まって、まあこの選択は、怪我の功名だったかなと後で思いましたけど。
ただ、元々公立の幼稚園に通わせるつもりでしたので、私立幼稚園に通わせると教育費が一気に跳ね上がり、家計の練り直しを迫られました~(笑)。
閑話休題。
F病院で血液検査をする頃は初冬でしたが、腎生検を行う時期には、季節は春へ移ろっておりました。
そして、ちょうどステロイドパルスが始まる時期に、息子は幼稚園へ入園しました。
入院となると、また夫に世話をかけることになりますが、たとえ半日でも幼稚園が看てくれているのなら、送り迎えの煩はあるものの前回よりは私も少し気が楽です。
懸念していたヤツの幼稚園行き渋りも(秋が深まる頃までは)なく、今までと違う環境が新鮮なのか『幼稚園好き♥行く!』と、息子のテンションアゲアゲの時期でもありました。
そういう意味でも、ステロイドパルスを始めるいい時期だったといえましょう。
腹をくくって、入院の準備を始めました。
ステロイドパルス・初日。
(一日一回、ステロイドを大量に点滴するのを、三日間入院して行われます)
息子を幼稚園へ送った後、夫に病院まで送ってもらい、入院の手続きを済ませて寝間着に着替え、待機。
軽い問診等の後、ステロイドの点滴が開始。
点滴そのものはただ大人しく横になって、ボーっと、薬剤が空になるまで待つだけです。
そしてそれが終わると、後は安静にしているしかやることはありません。
……暇。
暇ではありますが、何か実のあることは出来ないのですよ~。
今回もそれなりに本やCDを持ち込んでいましたが、結論としてやはりあまり落ち着いて楽しめませんでしたね。
決められた時間(3~4時間おきくらいでした)に看護師さんが様子を見に来て、血圧・体温・血糖を測られますし。
血糖に関してはプチっと針を刺し、血を採って計測します。
「あー、やはり血糖値が上昇気味ですねえ」
看護師さんの言葉に、テンションが下がる私。
「明日のステロイドパルス実施後、今より血糖値が上がるようなら、インスリンを投与することになります。心にとめておいて下さいね」
「……はい」