5 腎・生・検③
翌朝。
熟睡できたとはいえないながらも、それなりに眠れたので寝不足で辛いというほどでもない、曖昧な状態で起床・洗顔。
午前八時以降は水分も摂れないので、談話室にある無料サービスのお茶やお白湯を汲んできて、ゆっくりと飲んで時間をつぶします。
そうこうしているうちに、とうとう検査の時間がやってまいりました。
ドキドキ。
検査室(手術室)へ移動し、ベッドにうつ伏せになります。
複数の看護師さん、麻酔医の先生、そして検査を実施する腎臓内科の先生が取り囲む中、まずは『硬膜外麻酔』を打つ為の、痛み止めの麻酔が打たれます。
(ちょっと痛い)
それが効いてきた頃を見計らい、横向きになって腰を丸めるよう指示されます。
丸めた腰へ『硬膜外麻酔』。
腰から下が、ぼやんとした感じになります。
体勢は再びうつ伏せに。
「これ、痛いですか?」
メスか何か(多分)でつんつん、と、腎臓内科医の先生が腰のあたりをつつきます。
「えと、ちょっと痛いです」
もぞもぞそう答えると、ふんふん、と彼がうなずく気配。
「ではもう少し待ちましょう」
十秒くらい(あくまで私の感覚では。もっと短かったかもしれませんし、長かったかもしれません)経って、再びつんつん。
(んんんん?)
どう答えたものか、困惑する私。
さっきより痛くはないのですが、つつかれている感覚はバッチリあります。
「あ、何か当っているような感覚はありますよ。でも痛くはないのでは?」
困惑を察してそう問う医師の声に、私はうなずきました。
ほんなら始めましょとでもいう雰囲気になり、私の腰あたりに機械がやってきます。
エコーか何かで腎臓の位置を確かめながら(多分。うつ伏せだから医師の様子や状況は見えない)……、バスン!
少しずれてもう一度、バスン!
……終了。
あっけないものでした。
麻酔が効いていますから、『バスン!』時に痛みはないです。
ただ、それなりに強い衝撃はありました。
事前の医師からの説明で『ゴムパッチンのきついヤツ』的なたとえで聞かされていましたが、確かにそんな感じでした。
うまいたとえだな、と、内心ちょっと感心。← さりげなく上から目線?
あの衝撃は、『ゴムパッチン』にかなり近い感覚でした。
検査そのものは、確かにそれで終わりました。
が。
どちらかというと、それから後の方が患者にとって鬱陶しい状況になります。
麻酔が切れてくると、痛みはそれほどでもなかったものの(痛み止めも出た記憶が)非常に腰が『重だるい』状態になります。
ベッドから降りてポータブルトイレで用を足すだけも、結構しんどいのですよ。
(医師の許可なく病室から出るなって言われたけど)
よろよろとベッドに戻ってため息を吐きつつ、私は思いました。
(そんな元気、ないよ~)
腰が、だるーい!
動く気になれなーい!
ついでに、本を読む気にも音楽聴く気にもなれなーい!
……仕方ない、寝よ。
ボーっと、あるいはうつらうつらと、しているしかない状況で検査当日は過ぎました。
さてさて。
ここから少々尾籠な話を書きます。
麻酔の後のお約束。
腸がちゃんと動いているのか確かめる必要があるからでしょう、定期的に巡回に来る看護師さんから、排便があったか確認されます。
ブツが出たらナースコールで呼んでください、とも何度も言われます。
まあその、腎臓はともかく胃腸は、メチャ元気で優秀(優秀すぎるのか、食べたものがもれなく栄養として吸収される模様……つまり太りやすいのです! 胃腸が優秀なら腎臓も優秀であって欲しかったんですけどねえ)な私。
(拙作『しーちゃんに困ってる』参照。ダイマみたび)
こちらは即、クリアしました。
尾籠な話、終了。
ごにょごにょな部分(大切なことではありますけど)が過ぎた後も、腰はダルいまま。
二日目くらいからようやく、少し楽になってきましたけど……ごく微細ながら生身にバスンと針を打ち込むのですから、やはりそれなりにダメージがあるのですねえ。
それでも懸念されていた大量出血もなく、予定通りの日数で退院することになりました。
結果は退院して一週間後くらいに判明するということで、その辺りに診察の予約が入ります。
あー、やれやれ。
なんだかヘンに疲れました。
長居は無用とさっさと荷物をまとめ、迎えに来てくれた家族と一緒に帰りました。
かーちゃん帰ってきたよ、息子。
お父さんもお疲れさまでした。
俺たちの闘いはこれからだけど(本格治療は病名の確定後になります)、今日はみんなで仲良く、ご飯食べてお風呂入って、寝ましょう!