3話
リョウが凛に好意を寄せていることがわかったといっても、今までの俺たちの関係は変わることはなかった。というのも、リョウも俺も初恋、まして俺はリョウの恋路を応援すると言ってしまったこともあるからだ。
リョウの告白から数週間後のことだった。
今日の授業が終わり、俺は天文サークルの部屋に来ていた。そこにはすでに凛も来ていて、友達と談笑しているところだった。
と、凛は部室に置かれている、誰が持ってきたかは分からないがいつの間にか使われていたポットのお湯を使い、何か飲み物を作っていた。ちらっと見えた容器の中にある粉の色からしてコーヒーだろうか。
凛がコーヒーかー、可愛らしい顔して味覚は大人っぽいのかなー。
とか思っていたら、凛は「あちっ」という声を出し、顔を顰めていた。…可愛すぎか。
「可愛すぎか…」
無意識のうちに声に出していたのだろう。それが悪かった。
「へぇ〜」
後ろから聞こえてきた声にはっとする。ばっと振り返ると、そこには間宮香織さんがいた。…ニヤニヤとしながら。
「君は凛ちゃんのことが好きなのかい?」
「えっ」
「ん?あれ、違うのかい」
「いや、違くはな、…じゃなくて、なんでわかるんですか」
「いや、君が凛ちゃんの方を見ながら『可愛すぎか、今すぐにでも抱きしめたいぜ』て言ってたからねぇ」
「いや、絶対そんなこと言ってませんよね?!」
というか、俺が言っていた(?)であろうセリフを無駄にイケボで言わないでほしい。
「やー、ごめんごめん、でも前半部分はおもいっきし声に出てたよ」
「うわ…、まじですか…」
やべぇ、まじ恥ずかしい。まさか声に出していたなんて、それも間宮さんという人脈の広い方に聞かれてしまった!そんなの、俺が凛のことが好きなのがすぐに広まってしまう!
そんな心中を察したのだろうか、
「あ、いや、でも別に誰にも言うつもりないし、というか、みんなそんなに君のこと気にならないから、言っても面白くないと思うし」
「いや、急に毒舌吐かれても!」
なんでこの方はさらっと俺の心を壊しにくるの?!そこまで仲のいい間柄でもなかったよね?!
「あっはっは、いやー、ごめんね、つい言っちゃった。許して?」
「ぐっ…、こんな美人の間宮さんに赦しを乞われたら許さざるを得ませんよ…」
「美人?やん、嬉しいこと言ってくれるじゃん」
「にしては全く照れてないですね」
まあ、間宮さんにとって美人と言われるのは日常茶飯事だから慣れているのだろう。仕方のないことだ。
「あ、やっぱりただ許してもらうのも申し訳ないから…」
「…から?」
「お姉さんが恋愛相談にのってあげる!」
「いや、いいです」
「即答?!」
「いや、まあ…」
だって、今の状況はリョウのこともあってかなり複雑で、それにリョウを応援するって決めたし…、いや凛のことはめちゃくちゃすきだけど…。
「いいじゃん!聞かせてよ!若者の恋愛聞かせてよ!」
「間宮さんも若者ですよ。というか、それただ単に恋愛話を楽しみたいだけですよね?」
「うっ、そ、そんなことないよぉ」
「動揺しまくりじゃないですか」
いつも余裕のあるように見えていた間宮さんがあたふたしているのは少し面白いな。
「もう、そうだよ!ちょっと聞いて、楽しみたかったの!」
「開き直らないでくださいよ…」
「い、いいから!ほら、お姉さんに全部話しちゃいなさい!」
「え、いや、ちょ」
結局、俺は間宮さんに質問攻めをされ洗いざらい話してしまったのだった。