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その1
11月22日なので
魔王に手紙が届いた。
彼の両親から「お前も独り立ちして随分経っているのだから、いい加減身を固めて孫を見せてくれ」という内容の手紙だったらしい。聞けば魔王は貴族の三男らしいので跡取り問題からは遠いが、親としていまいち動向が謎であるいい歳した息子にお節介の手紙(定期便)を送って来たようだ。蛇足だが、魔術師は総じて婚期が遅れがち、というのが世間の認識である。
魔王は手紙を読むと、顔をしかめた。
「どうしたの?」
魔王が長い事神妙な顔で便箋を睨んでいるので、聖女が訊ねる。
「うちの両親は邪教の徒かなんかだったんでしょうか」
「は?」
いきなり何を言い出したんだ、と聖女が眉を寄せた。
「魔王に子供を作れとは……世界征服でも企んでいるんでしょうか」
「……いや、ただ単に自分の息子が魔王だと知らないだけだと思うけど」