精神調律師《メンタルチューナー》【完結】
私と同じように精神が不安定気味な人が、少しでもこの話を読んで自分の身体をコントロール出来るようになれば良いと思います。
人間には音や音楽と同じように波長がある。
波長は千差万別で、同じ波長を持った人は居ない。
波長は常に一定の波を打っているが、気分が高揚したり、逆に落ち込んだりすると途端に乱れてしまう。
乱れた波長は体調に影響を与え、息苦しくなったりお腹が痛くなったりする。
つまり、波長とは精神。
私は、そんな精神を調律する私専属の調律師だ。
調律とは、楽器の音を調べ、調子を整えること。
私が精神を安定させることを"調律"と呼ぶのは、さっき話した精神が波長であることが関係している。
不安定になった精神を安定させることは、狂ってしまった音を元の音に戻すことと似ている。
じゃあ、どうやって精神を調律するのか。
ここでも音・音楽が関係してくる。
例えば子守唄。
そんなに疲れているわけでもないのに、精神が安定する歌声や音楽、リズムを聞かされると、不思議と眠ってしまう人もいる。
それは何故か?
子守唄は、精神が安定している時の波長と似た波長だからだ。
その波長が近ければ近いほど、すぐに眠りに就くことができる。
それと同じことをすれば良い。
どうしても辛くなった時。どうしたら今日を、明日を、未来を生きる力にすることができるのか。どういう方法で、今日を、昨日を、過去を振り返らないで前を見ることができるのか……。
そんな不安を抱える人間は、自分が落ち着いている時の波長と似た波長。もしくは元気な時の波長と似た波長の音を、音楽を聴くと、不安が遠くに行ったり、悲しみが顔を引っ込めてしまう。
俗に言う"元気になる曲"だ。
特に私は不安を感じやすい。しかも、それが胃に影響を与える。
そういう時、BPMの低いゆっくりした曲を口ずさむ。
頭の中で流すだけよりは、口ずさむ方がいい。
理由は、ゆっくりした曲は二分音符や全音符が多い。と言うことは、深く息を吸って長く伸ばす歌詞が多い。
つまり、意図せず深呼吸をすることになる。
そして、大事なのはイメージすること。
出来るだけ新鮮な空気を取り込んで、肺を酸素で満たし、酸素が血液によって身体の隅々まで運ばれること。
頭の中の不安を別の事象を想像することで塗りつぶす。
これも調律に役立つ技術の一つだ。
後は環境も大事な要因の一つ。
誰かが隣で寄り添ってくれる安心感も捨てがたい。けど、私の場合は一人の静かな空間の方が上手くいく。
風が心地良い開けた原っぱ。
地元の大きな川が流れる土手沿い。
月明かりのもと、夜風を浴びて……。
特に秋から冬に変わる、空気が澄んだ肌寒い時期が好き。
そういう自分が好きな場所を見つけ、想像し、波長を整える。
大事なのは呼吸を深く、ゆっくりすること。
頭の中をネガティブイメージにしないこと。
更に、意識が出来るのなら心拍数をコントロールすること。
心拍数も一定のリズムを刻んでいる。
音やリズムなら調律師の出番。
私達は、この世界で生きている。
いくら現実が辛くて、ゲームや小説、漫画の世界に逃げ込んだとしても、それは架空の物語。
流行りのVRMMOや異世界転生という代物が実際に無いこの世界で、目の前の現実を生きるために、私は今日も精神の調律を繰り返す。
いかがでしたでしょうか?
私は不安が胃に直接来ます。
小さい頃は摂食障害にもなりました。
その時の不安を再発させないよう、こうして自分の精神を"調律"してるのです(笑)。