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9 リザードラン

 リドルを待つことしばらくして、討伐ギルド前に怪物が引く馬車のような乗り物が停まった。


「なぁ、アルネ。前から聞きたかったんだけどさ、結構見かけるあの乗り物は何? つかあの怪物は魔獣じゃねえの?」

「あれはリザードランです。人も運べますし、物も、倒した魔獣も何でも。流石に巨大魔獣は無理ですけどね。で、あれは怪物ではなくノスリザード。魔獣ではないですが、そこそこ強いみたいです。結構懐っこいらしいですよ」

「ほぇー、倒した魔獣まで運んでくれんのか。便利だな」


 ノスリザードさん、今まで怪物って言ってゴメン。知らなかったんだよ、キミの有能さを。懐きやすいなんて、もう俺の中では安全な生物の立ち位置に仲間入りだ。


 それにしてもリザードランとは良いものだ。


 俺たちなんて、毎回毎回ゲージでせっせとブルサン共を西の門まで運んでさ。あれ、大変なんだよねぇ。ちょっと欲しいかも、リザードラン。


「そうだカズキさん! いつかお金が貯まったら買いませんか?」

「俺も欲しいなぁと思ってたとこ。いくらくらいするんだろうな」

「はてー、わかんないですけど百万セルクくらいじゃないですかね?」

「――高っ!」


 まぁでもそりゃそうか。

 圧倒的にいてくれたら心強そうだしその値段でも納得できる。


 と、ここでリザードランからリドルと女性二人が降りてきた。


 操縦席? らしき所にいた男性もそこから降りて、リドル以外の三人はそのままギルド内に入っていく。


「ほれ、剣と盾だ! 存分に使ってやってくれや」

「おぉ、普通にしっかりしてんなこれ! どうもありがとな!」


 衛兵が持ってるような太い剣ではなく、腰に装着しておける細い剣。手に持って構える感じの大きな盾ではなく、腕に装着しておく感じの小さめの盾。


 なんかカッケーな。


 と、貰った剣と盾を構えてみる。


「……おい、なんか言えや」


 俺を見て、只々無表情のアルネにそう言う。


「可もなく不可もなく。言ってしまえば普通ですね。特に何の感想も浮かばないです」


 すると、アルネは表情を崩さずにそう答えた。


 それ、一番困るやつなんだけど。褒められるでもなく笑われるでもなく、一番どう返せばいいかわからないやつ……いや、普通すぎて逆に反応に困らせたのは俺なんだろうけど……アルネじゃん? いつもみたいにバカにしてみろや……って、俺はMか……。


「ところでリドルさん、あのリザードランはどうされたのですか?」

「あぁー、あれはワイらパーティーで購入したんだよ。懐っこくていい奴なんよぉ」


 ノスリザードが懐っこいのはどうやら本当らしい。我が子を見るようにリドルがノスリザードを見つめている。


「なぁ、アルネ、パーティーとは?」


 ここにきて意味を知らない単語が出てきた。この世界に来る前に天界で勉強でもしてきたのか、結構物知りなアルネだったら当然知ってると思い聞いてみた。


「チームみたいなもんです。カズキさんと私も一つのパーティーなんですよ。名付けて、『究極女神とその他一名もやしを添えて』と言ったところですね」


 と、簡単に説明をしてくれたのだが……。


「――ふっざけんな! 何だその料理名みたいな名前はよっ! しかも明らかに俺を貶してやがるし、却下に決まってんだろがっ! なぁーにが、究極女神だ……普通にクソ女神だろうがっ!」

「――あぁっ! クソ女神って言った! クソ女神って! この女神たる私が、今の私たちにピッタリのパーティー名を考えてあげたって言うのに、クソ女神って言ったぁ……!」


 あーだこーだと喚き始めるアルネ。


 おい、お前さっき、喚いてた俺に恥ずかしいって言ったよな? 今、俺が結構恥ずかしいんだが? そして俺、お前も喚くな恥ずかしい。


 と、その様子を見て立ち止まったり振り返ったりする人たちを見て思った。


「アンさんたち、ワイそろそろ行かんとならんのよ」


 リドルが少々困った様子でそう言うと、


「――ちょっと待ってください! 最後に、あのリザードランはいくらくらいでした?」


 アルネは大雑把に百万セルクくらいだと予想してたが、それでも実際の相場は気になったのだろう。


「ワイらのは二百万セルクだったがぁ、相場は百五十万から、高くて四百万セルクといったところよぉ」


 おぉ、アルネの予想よりもっと高い……というかリドルたち、二百万セルクも出したのか、凄いな。


「そうですか……教えていただきありがとうございます」

「良いってことよぉ! んじゃ、みんな中で待ってるからワイは行くわぁ」


 アルネは少々沈んだような表情をし、対するリドルはこれからクエストにでも行くのだろう、少々気合の入った表情でギルド内に入っていった。


「カズキさん……四百万のリザードランを買いましょう!」

「いや、買えないと思って落ち込んでたんじゃないんかい……」


 いちいち紛らわしい奴だな。俺はぶっちゃけ買うの諦めたよ。


「では早速! リザードラン目指して手始めに、ちゃっちゃとルナード倒しちゃいましょう!」


 と、気合が入ったらしいアルネに腕を引っ張られ、ギルド内に入っていった。


 今回のクエスト、仮に成功したとして二万セルク。アルネが買いたいらしいリザードラン、四百万セルク。


 気が遠すぎる……うん、無理。

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