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4 勇者に逃げられた女神

「ふぅ……歩き疲れましたね」

「何ホッと一息ついてんだテメー! もう夕方じゃねーか! 今日の収入ゼロどころか出費三万セルクじゃねーか……!」


 この世界に来て二日目、いざ初クエストとなるものばかり思っていたが実際は違った。


『学生服で行くつもりですか? 今後のことも考えてまずは買い物でもしておいた方が良いと思いますよ?』


 そんなことをアルネに言われ、確かにな、と思って買い出しに出たのだが、予定以上に買ってしま――買わされた。

 生活必需品は手に入れたが、知らぬ間にカゴに入れられた物だったり、一食千セルク程度の昼食二人分だったり、無駄な出費も多かった。


 というより、昼食代くらいは払ってやっても良いのだが、それでも昼食に千セルクとか高すぎだし、そもそもなんで俺が、お前が欲しい物まで買わねばならんのだ……おまけにこの女神、そこら中の店に興味を示して入っていきやがる。そのせいですっかり夕方だ。


 そういうわけで、クエストなんて到底行けるわけもなく、一日が終わりを告げようとしていた。


「でさ、なんでお前は俺の部屋に来たわけ?」


 俺の部屋を訪ねてきたと思ったら、何を言うわけでもなくベッドで寛いでやがるアルネに聞いてみた。


「ん? 今日はこの部屋に泊まるからに決まってるじゃないですか」

「――はっ? 今なんて?」


 なんか、耳を疑う思いもよらぬ返答が返ってきた気がした。


「今日の宿泊費持ってませんから、この部屋に泊まります。さっき受付で確認したら、借りてるのは部屋だから泊まるのは何人でも大丈夫だって言われましたし。そうゆうわけでカズキさんは床で寝てください」


 なるほど。宿がそういう決まりなら問題ないのだろうが……そうじゃない。


「ふざけんな! なんで俺が床で寝ないといけないんだよ! 早よ出てけ!」

「カズキさんは女神たる私に野宿しろと? ただでさえ、この宿にだって満足していない私に野宿しろと? それに、この世界の野宿は危険なんですよ?!」


 アルネは強い目で何かを訴えかけてくる。だけどごめん。俺、お前を女神として見てないから。


「——嫌ですそんなのっ! あっ! そうだ、なら仕方がないので女神たる私が一緒にこのベッドで寝てあげても良いですよ?!」

「――なんですとっ?!」


 そうなってくると話が変わってくる。早々に追い出すのは早計かもしれない。だってつまりそれって、そうゆうことですよね?


「ハッ……! なんですかその目は。卑猥なことを考えてますね。やーらしー、キモーい」


 と、アルネは鼻で笑った後、ジトっと睨んでくる。


「結局そう思うなら最初からそんな提案すんじゃねー! もういいからとりあえず出てけや!」

「――ちょ、ちょっと待ってください! ならこれはどうでしょう? カズキさん、文字が全く読めてませんよね?! 日常的に見かける言葉を私が書き起こしてひらがなでの意味も添えた物をあげますから、どうか私もこの部屋に泊めてください!」


 なんて、アルネは懇願してくるがそれは結構有難い提案だなと思った。

 その提案なら、二千セルク渡して別室用意してあげても良いかな? とも考えたが、アルネはそれを言ってこないし、節約の為だと自分に言い訳をして心の奥に引っ込めよう。


「わかった、それなら良いけど」

「では、カズキさんはこれから一ヶ月床で寝てくださいね」

「――さっきベッドで一緒にって! ……って、一ヶ月?」


 今日限りじゃないの?! いや、確かに期間については何も言われてないけどさ。


「幸いカズキさんは一ヶ月この部屋を借りてるわけですし、そうすれば私は宿泊費を使わずに済みますし、自由に使えるお金が増えるじゃないですか。それも一ヶ月分も」


 なんて、アルネは笑顔でサラッと言ってのけるが……。


「――ちょっと待てぇっ! なら毎日千セルク寄越せや! お前、ただでさえ俺を床で寝かすつもりなんだろ?!」

「ならしょうがないんで、妥協して月の半分くらいはベッドを使わせてあげます。だからお金はあげません」


 アルネはなんとも上から目線で言ってくる。


 借りてるの、俺なんだが?


 とはいえ、もはやこれ以上言い合ってても平行線な気がしてならない。


「はぁ……わかった、わかったよ。もうそれで良いや……」


 仕方ないから俺が折れることにした。


 ――って! なんで俺が妥協させられてんだよ?!



◇◇◇



 夕食を終えた後一足先に風呂に入り、浴場から戻ると、部屋に設置された机に向かい、アルネがせっせとペンを動かしていた。その姿を見て、やっぱこいつ結構良い奴なのかもなぁと、一瞬だけ思ったが、夕食での出来事を思い出したらやっぱムカついてきた。

 俺が昨日と同じ三百セルクのオムライスで我慢する中、我が物顔で二千セルクのステーキを注文しやがったのだ。人の金を一体なんだと思ってやがるのか、その時の幸せそうな顔ときたら、なんとも憎たらしいもので……。


『カズキさん、そんなジロジロ見たって一口もあげませんよ?』とか言い出す始末。


 クソ女神が……! 昨日まで四万セルクあったのに、もう八千セルク切っちまったじゃねえか。


「できました!」


 そう言ってアルネは両手を上げ背筋を伸ばしている。


「おー、お疲れさん」

「あ、いたんですか? 戻ってくる時ノックぐらいしてもらえます?」


 何度も言うけど、ここ俺が借りた部屋なんですが? なんで俺がノックなんてしなきゃならんのだ。


「はい、これ。とりあえず持っとけば困らないと思います。まぁ、覚えれるならテキトーに覚えてください」


 アルネはエトワール語? 文字? が、ひらがなでどう読むのか書き起こした自作冊子を渡してきた。


「サンキュー」

「では私、お風呂入ってきますので」


 アルネはそう告げ、部屋を出ていく。


 ベッドに寝転がり、貰った冊子を開いてみると、一ページ目に、何故か料理名がずらり。そこから先は五十音順でこの世界の文字が意味する単語の内容がひらがなでどう読むかが並んでいた。最後のページには、あ行から順にこの世界の文字でどう表すかが並んでいる。


「ほぉー、意外としっかりしてんなぁ」


 アルネだから手を抜くのも全然予想してたのだが、それは要らぬ心配だったみたいだ。


 こうして見ると、ローマ字っぽいがそうじゃない文字は、読めないけど読もうとすると発音がひらがなと同じらしいから面白い。


 流石なんでも有りの異世界だなぁ。


 なんて感心していると、ちょっと眠くなってきた。



「――っ?!」


 右半身に強烈な痛みが走ると同時に、自分が寝てしまっていたことに気づいた。


 いってぇな、ベッドから落ちたのか……?


 と、ここで、(うずくま)る俺の頭上に影が差し込んだのがわかった。


 うん、そうゆうことね。俺は寝相が悪くて落ちたんじゃなくて、落とされたってわけね。


「テメェ……何すんだ」

「受付に聞いたら布団用意してくれましたよ? 一日追加五百セルクで。とりあえず十日分お願いしてきました。お金払ってきてください」


 と、アルネは俺の問いはスルーして、またもや金の掛かる話を始めた。


「布団あるならせめて敷いてから落としてくんない?! つか、何勝手に話進めてきてんだよ」


 そんなオプションがあるのは知らなかったし、布団が使えるのは有難いのだが、一気に十日分は金が掛かりすぎる。


「この私がわざわざカズキさんの事を思ってしてあげたっていうのに文句あるんですか? というか、もう、借りちゃいましたし」


 そう言ってアルネは追加オプション用紙らしき物をチラつかせる。


「このクソ女神が……」

「――あぁーっ! 今私の事、クソ女神って言った! 明日、仮にクエストに行けなかったとしても生き延びれるように三千セルクくらい残るように計算してあげたのに、クソ女神って言った……!」


 喚き散らすアルネを他所に、俺は渋々追加オプション代を支払いに行った。


 支払いを終えて部屋に戻るとアルネがベッドでゴロゴロしていた。一応、俺の布団は敷いてくれたみたいだが、そのくらいはやっておいてもらわないとまったくもって割りに合わない。


 部屋の灯りを消して、布団に入る。


「カズキさん、気になってたんですが、ホームシックになったりしないんですか?」


 ベッドの上からアルネがそう尋ねてくるが、そんなの決まってる。


「絶賛ホームシックだけど? 帰りたくて帰りたくてしょうがないけど?」

「ハッ……! 子供か」


 なんかしんみりとした感じで聞いてくるから、慰めてくれるのかと勘違いしてたけど、そうでした、こうゆう奴でした。


 アルネはいつもの調子で鼻で笑い、俺を小馬鹿にする。

 一回ぶん殴って良いかな?


「この際ですので、カズキさんにちょっと良いこと教えてあげますよ」

「あ? んだよっ……」


 どうせロクでもないことのような気がした。だってアルネだし。


「私の記憶が正しければ、この世界での一ヶ月はカズキさんのいた世界での一日程度だったはずです。体感時間自体は全く変わる事はありませんがね」

「――はっ?! 何それどゆこと?!」


 予想に反して結構重要なことを教えてくれた気がする。


 ここは○○と×の部屋ですか?! 


 なんて思ったりした。


「時空の違いみたいなものです。カズキさん、この世界に来て何日目ですか?」

「二日だけど……」

「寝て起きたらここにいた的なことを言ってましたよね? 仮に、寝た直後にこの世界に転移したとしたのなら、カズキさんのいた世界から、カズキさんが消失してから二時間も経過してないのですよ」


 マ、ジ、か……それってつまりは――。


「じゃあ俺、もしかしていなくなったことにすら気づかれてないかもしれないのか?!」

「カズキさんが最後、その世界でどうゆう状況だったか知りませんが、その可能性は大いにありますね」


 おいおい、今頃家族が俺を――なんてめちゃくちゃ不安だったけど、まさかまだ気付かれてないかもしれないなんて思いもしなかった。


「なら最悪、こっちで三年とか掛かっても向こうでは三ヶ月くらいってわけか。いや、なるべく早く帰るに越したことはないけど、まだ何とか死亡認定されずに済むかもしれないよな?」

「遂に魔王を倒す気になりましたかぁ? でもそれはちょっと早過ぎますよ」


 そうは言ってない。他の方法を模索して足掻けるかもと思っただけ。


 てか早過ぎるって何? お前は俺に魔王を倒させたいんじゃないの? 言ってる事が矛盾している気がする。


「ですが気をつけてくださいね。こっちで経過した時間は向こうに戻っても同じですから。三年掛けると不自然に歳を取って変に思われますよ? それに、私も老けますし、三年は嫌です」

「うげっ……! ま、まぁでもそりゃそうだよな。つかお前、今何歳なわけ?」


 見た目から判断すると、俺と同じかちょっと上かといった感じだが……。


「私ですか? そんなのわかりません。天界に時間なんて概念ありませんから。神の命は天界にいる限り永遠ですよ。大体この辺りの見た目で成長は止まるんです。後は、下界に降りた時は時間という概念に身を委ねることになるので、その分老けるといった感じです。まぁ、この世界ではとりあえず十七歳って設定にしてあります」


 マ、ジ、か……永遠の命とか、ちょっと羨ましい。しかも天界とかいう場所にいれば体力の衰えも無さそうだ。


 アルネの場合、精神年齢の成長も停止してそうだけどな。見た目なら十七歳で妥当だが、中身は妥当ではない気がする。


「へぇー、不老不死ですか。神って凄いんですねー」


 嫉妬のあまり、棒読みになってしまった。


「下界に降りればその法則崩れたり。私も死にますよ? 下界では。戦って負ければ死ぬかもしれませんし、どのくらい掛かるのかは知りませんが、時が経てば寿命で死んでもおかしくありません」


 おいおい、そんなリスク背負ってまでどうして――。


「お前、ここに来た理由は?」


 天界とやらにいれば絶対死なないのに。


「はぁ……女神って基本、下界に降りたがらないんですよねー。老けるし」


 と、アルネは一度白い目をする。


「創造神クレアトル様より、全女神に通達がありました。どの女神でもいいから一名、この世界にて勇者を連れ魔王を倒すサポートをしろと。それが終わるまで天界には戻さない。但し達成した暁には、願いの宝玉を使わせてくれるという条件で。ですが無いんですよ、女神たちに願いなんて」


 アルネはそう淡々と語るが――。


「で、結局じゃあなんでお前ここにいんの?」

「そんなの、他の女神たちと違って私には願いがあるからに決まってるじゃないですか」


 ほぉー、それはちょっと興味あるかもしれない。


「その願いって?」

「天界にいた時と今の願いはちょっと違うんです。それはカズキさんに――やっぱなんでもありません! 教えませんよーだ!」


 ここまでの前振りはなんだったのか。てっきり教えてくれるものだと思ってたんだけど。長々と語っておいて結局これですか。もういいわ。


 あ、でも最後に一つだけ気になることが――。


「そういや勇者とやらはどうしたんだよ? 連れてきたんじゃねーの?」

「――あのクソ勇者っ! 思い出すだけでイラつくクソ勇者……! 魔王を倒すって言うからわざわざ転生させてやったっつーのに……!」


 表情こそ見えないが、ベッドの上から歯軋りと共に憎悪に満ちた声が聞こえてくる。

 そういやこいつ、昨日から勇者の話になるとこんな感じだったな。口調まで変わって、まるで別人なんだけど。


 ――まさか勇者、魔王に挑んで死んだとか?! それで天界に戻る術が無くなって怒ってるとか?! あり得そうで怖い。


「この世界に来て一週間、今から約三週間ほど前のことでした。朝目覚めてから、彼の宿泊する部屋に起こしにいったのですが既にもぬけの殻でした。私が持ってるとじゃぶじゃぶ使うからって言うから、天界で用意した二百万セルクを彼に預けてたのですがね……」


 つまり、あれだな。そうゆうことだよな。


「許せません! 私のお金と、この世界に来る前に貸した<<魔剣・レフレクシオンソード>>を返さずに消えるなんて」


 うむ、こいつ、勇者に逃げられたんだな。勇者にちょっと共感してしまうのが気が引ける。


 だが、勇者が二百万セルクなんて大金を持ち逃げさえしなければ、俺の金がこいつに良いように使われることもなかったはずだから、やはりこいつが連れてきた勇者は俺にとっても悪だ。


 どーせ今頃、その金で思う存分異世界ライフを満喫してんだろーな。


 まぁ、それはそれとして――。


「レフレクシオンソードとは?」

「振れば相手の異能攻撃を反射する剣です」

「なんだそのチートみたいな剣は?! そんな大事なもん持ち逃げされんじゃねーよ!」


 聞けば、二百万セルクなんかよりよっぽど価値がありそうだ。


 その剣さえあれば俺だって良い線いくかもしれないのにっ!


 と、淡い期待を抱いたりしたが、無いから無駄な期待だ。


「私だって、まさか勇者が消えるなんて思ってませんでしたよ! でも、レフレクシオンソードでは魔王やその側近たちは倒せませんから」


 なーんだ。魔王倒せねーのか。ならいらね――ってなるかボケェッ!


 それあれば多分だけど、ブルサン狩りなんてしなくてももっと難易度の高いクエストでわんさか金が稼げそうではないか。


 ふざけんなよクソ勇者! 俺のレフレクシオンソードを返せ!


「何かの間違いで魔王に挑んでもっかい死ねばいいのに……」


 と、アルネが到底女神とは言い難い恐ろしいことを呟く。剣の恨みか、はたまた金の恨みか、多分金だな。いや、天界に戻れないことへの恨みかも。


「というかさ、魔王を倒したいなら俺より他に頼める奴その変に大勢いるだろ? あいつらめちゃくちゃ強そうじゃん」


 こんな見ただけでわかる非力な俺に頼むより、彼らに頼んだ方が圧倒的に良いに決まっているのに、何故俺に何度も何度も頼んでくるのか一応知りたい。


「彼らは今のカズキさんより圧倒的に強いですよ。この国総動員で戦えば、魔王軍にとっても大きな損失となるでしょう。でも無理なんです。魔王自体は倒せず、皆死んでしまいます」

「それすなわち、やっぱ俺じゃ勝てねーじゃん?! 余裕で即死じゃん」


 うん、やっぱ魔王を倒すなんて夢物語だわ。断ってよかった。帰る為の別の方法を探そ。


「まぁ、それも含めて、現状魔王には手を出さない方が得策ですよね? 魔王も魔王で、自軍の損失は避けたいのです。だから全面衝突にならないよう、魔獣を生み出すだけに止めてるのですよ」

「それで俺に魔王を倒せって、なんか矛盾してない……?」


 手を出さない方がいいんだよな? それに勝手に手を出して魔王の怒りを買ったりしたら、この世界の人々から見た俺は完全に悪ではないか。


「『いずれ生まれし魔王の力強力なり。世界纏まりとも敵うことなし。故に、魔王に手を出すべからず』」

「何言ってんの?」


 世界中が束になっても勝てませんよーってことだよね? 死にたくなきゃ魔王を刺激するなってことだよね? ついさっき言ってたことでは?


「その昔、創造神クレアトル様が当時のエトワールの王に告げた言葉です」


 マジか。その圧倒的に偉そうな神様、未来予知までできんのかよ、すげーな。というか、そんな偉いお方が下界に降りてくることなんてあるんだな。


「『いずれ天界より女神、およびその女神選びし者この地に降臨す。その者、魔王倒す者なりけり。我、この剣、エトワールの地に封印す。その者、強さ身につけこの剣の封印解きし時、魔王滅びる時なり。その日来たりし時まで、王家一族、この剣守るべし』ふぅ……」


 と、アルネがここまで言い終えると、ベッドの上から小さく息を吐く音が聞こえた。


「つまりですね、王宮に封印されている剣を使えば魔王を倒せるはずなのですよ。でもそれを使えるのは別世界から来た女神の連れだけみたいです」

「へー、そーなのか。じゃあ逃げだした勇者なら倒せるんだな。どうぞがんばって探してください」


 俺は勇者じゃないし、関係ない。他人に任せて、そして俺は元の世界に帰る!


「いえ、あのクソ勇者はもう探しません。偶然会ったら射殺します。この世界、銃ありませんけど。……そうではなくて、私はクレアトル様が特に勇者とは断言していないことに気付きました。言ったではありませんか、別世界から来た女神の連れだと」


 なるほど、二回言われて理解した。冒頭、物騒なこと言ってたけど……。


「ですから、魔王を倒す件、全然今ではなくて良いので、むしろもっと後でも良いので、時が来たら考えてみてくださいね」


 俺も資金が溜まり次第こいつから逃げ出してやろうかと頭を過ったが、今後の俺の成長がどれほどか今の俺にはわからない。実は才能があってめちゃくちゃ強くなるパターンもあるかもしれないし、そうなれば魔王を倒すのも考えてみてもいいかもしれない。


 やっぱ一応、ホントに一応だけど、元の世界に帰る為の最終手段として残しておこう。


「はいはい、そのうちなー、もしかしたら考えるかもなー。んじゃ、おやすみー」


 そう告げて、目を閉じた。


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