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ガラガラ…
ゴトゴト…
翌日、私達はお屋敷に来た時と同じように馬車に揺られ旦那様の言う新しい仕事場へと連れていかれました。
小さな窓から見えるのは鬱蒼と生い茂る木々だけで、何処へ向かっているのかは分かりません。
そういえば…旦那様の御屋敷も森の中にあります。
初めて御屋敷を見た時はまるで大きな自然の檻のようだと感じたのを思い出します。
ーーあぁ、ここから逃げ出すことは絶対に出来ないのだな…
奴隷生活は長いですが…初めてそんなことを思ったのです。何故、あんな事を思ったのか今更ながらに不思議ですけど。あの時は漠然とそう感じたのです。
それは今も…いいえ、私は再度思うのです。
ーー私はきっと、逃げられない。
◇◆
馬車に揺られ3時間程だった頃、漸く馬車が止まりました。長い時間ずっと揺られていたものですから、すっかり体が固まってしまいました。馬車を降りて空気を肺いっぱいに吸い込んで、ぐぐーっと思いっきり体を伸ばしたいところですが、旦那様がいるので我慢です。
それにしても、前に乗った馬車ほどでは無いですがやはりあの狭い空間でじっと座っているのは嫌いです。何よりとてもおしりが痛いですしね。
ーー旦那様に連れてこられたそこは、まるでお化け屋敷の様な所でした。
家の壁にはびっしりと蔦が生い茂り、遠くではカラスがギャアギャと忙しなく鳴いています。暗い森の奥にポツンと建っているそれは、不気味な雰囲気を醸し出しており、とっても怪しい雰囲気満点の場所でした。
「うわぁ…お化け屋敷」
「ひぃっ」
私の後ろで奴隷仲間が何か言ってます。
気持ちはわかりますが…旦那様の前ですよ?
頑張って心の声は抑えてくださいな。
しかし…今更ですが旦那様が言うお仕事とは一体何なのでしょう?詳しいことは結局知らされていないのですよね。
まさか、このおば…御屋敷のお掃除でしょうか?
私たち以前に連れていかれた奴隷達もここにいるのでしょうか?と言うよりも、もしも本当にこのお屋敷のお掃除が旦那様の言う“手伝い”なのでしたら先に来ていた方たち含めてもとても大変な作業です。そもそも、ここまで荒れ果てているのならいっその事建て直した方が早いでしょうに…
…え、まさか。違いますよね??
流石に私達だけでここをお掃除なんて無理ですよ??
本当にそんな事を言われたらどうしようと内心焦ります。
私達は奴隷ですから、大工仕事なんてしたことないですし。御屋敷で下働きをしていたとはいえ、やっていたことは洗濯や部屋の掃除で建物の修繕などは経験ありませんし…そう考えているうちに、旦那様は私達を置いてさっさとお化け屋敷へ進んでゆきます。
慌ててその背中を追いつつ…もしも、ここのお掃除が旦那様の言う“手伝い”では無いのだとしたら。
こんな廃れた森の奥に、何の様なのでしょう?
ここには一体何があるというのでしょ?
それとも…ここに何か怪しいものでも隠してたりして。