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天使と呼ばれた白い悪魔  作者: 伊勢
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先日、目出度く(?)購入をされました、奴隷の私には未だに名前というものがありません。

以前居た奴隷商では25番と呼ばれていましたが…


それはさておき。


ここに来てから私の毎日は日々驚きで充ちています。

それは何かと言いますと、当初想定していた事とは全く違うことが起きているからです。


それはとてもいい意味で、です。


まさか、こんな事が起こるなんて…今回の購入者であるご主人様には本当に感謝しかありません。

というのも、奴隷であるはず私はこれまで生きてきて初めて穏やかな日常と言うものを体感しているのです。





私達は屋敷についてすぐに連れていかれたのはなんとお風呂場でした。そこで全身の汚れを洗い落とし、恐る恐るお風呂から上がれば今度はボロ布では無いピカピカの服を着せられました。なんと、驚く事に新品の洋服です!

当たり前ですが、奴隷の私は今までに暖かいお湯なんて使ったことありませんでした。お風呂とはこんなにも気持ちのいいものなのかと感動したものです。ましてや服なんては誰かのお下がりのボロ布しか着たことがありません。


その後も、暖かい食事に相部屋ではありますがそれぞれに部屋をあてがわれ、フカフカのベットまで用意されているのです。部屋なんて、奴隷商館なら狭い檻ですしベットなんて贅沢なものありませんでした。そもそも、ベットというものを私はここに来て初めて知ったくらいです。

正直、突然のこの状況に頭がついて行きません。奴隷には有り得ないほどのこの好待遇に私含め他の奴隷仲間達は皆驚き、それ以上に困惑し警戒しました。


ーー何故、奴隷相手にこんな事をするのか?


当たり前ですが、今までこんな事をしてくれた人はいませんでした。奴隷商館でもこんな扱いはされません。

しかし、私達は狼狽えながらも次第にご主人様に購入されたことに感謝するようになりました。それはそうです!


ご主人様だけは、私達(奴隷)をまるで普通の人間のような扱いをして下さったのですから…




奴隷に人権はありません。


一般的に私達は人であって人では無く、犬や猫などの動物…いえ、それ以下の虫けらのような存在として扱われます。

なので普通はもっと乱暴に扱われます。

むしろ暴力は当たり前の事です。

時には死んだ方がマシだと思うような扱いもされます。

実際それで死んでしまう奴隷も多いです。

けれど、奴隷を殺してもそれは罪にはなりません。


ーーだって、虫を殺しても誰も罪悪感なんて感じないでしょう?


これが世間一般で言う奴隷の扱いなのです。

なので普通は服も部屋も食事も用意なんてされません。あったとしてもそれは質素で残飯のようなものを振る舞われるのが普通です。


なのに、ここのご主人様…御屋敷では旦那様と呼ばれています…はそんなことを一切されません。

購入されてすぐ私達にとって旦那様は神様のような存在となりました。それでもやはりどこかで警戒はしていたのです。今までの扱いが…今の状況が私達にとって異常なだけなのですけれど…酷すぎましたので。


いつ、乱暴にされるのか?

いつ、理不尽な命令をされるのか?

いつ、殺されるのか?


内心ビクビクしている仲間は多かったのです。

ですが旦那様は私達にいつもニコニコと丁寧に優しく接してくれました。少ないながらも賃金まで下さいました。

奴隷相手に、ですよ?有り得ませんよね。


旦那様は本当にとても変わった方です。

次第に仲間たちは警戒をとき旦那様を敬い慕うようになっていきました。


誰から見ても旦那様はとてもいい人です。

奴隷仲間達も皆口々にそう言っています。


しかし、私にはその優しさが酷く気味悪く感じるのです。旦那様の笑顔が時折とても恐ろしいものに見えるのです。


こんなにも良くしていただいているのに…何故でしょう?


私自身、この感情がどこから湧いてくるのかとても不思議でたまりませんでしたが…


奴隷の私に旦那様を疑うことなんてできるはずもなく。

ザワつく胸を抱えたまま私は今日も今日とて奴隷らしく何も考えず、そして奴隷らしくない普通の生活に身を置くのです。





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