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天使と呼ばれた白い悪魔  作者: 伊勢
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プロローグ


ガラガラ…

ゴトゴト…


暗い森の中を何台もの粗末な馬車が列を生して進んでゆきます。


暗く狭い馬車の中には、年齢・性別・人種問わず様々な人々が乗っていました。唯一共通する事は皆一様に濁った汚泥のような瞳をし、ボロボロの服とも言えないボロ布を纏っていることでしょうか。

疲れきり、生きることを諦めているその目は過去の出来事から絶望を知っているからでしょう。


この行き先にあるのは後にも先にも只管に地獄だけ。

生きるのも死ぬのも痛くて苦しくて辛いこの現実の中。


“幸せ”何てものは、存在するのでしょうか?


ジャラジャラ…


時折鳴るその音は私たちを縛る鎖の音。


身も心も太く長い鎖に雁字搦めにされて囚われている私達はそこから逃げ出すことも出来ず、首と手足に重く硬い枷をぶら下げて、ただただ馬車に揺られるのです。


ガラガラ…

ゴトゴト…



ふと、小さな格子のついた窓から見えた外には雲ひとつなく晴れ渡った蒼い空が広がっていました。


チチチ…


可愛らしい声を上げて白い小鳥が空を飛んでいます。

広大な空の元、己を縛り付ける鎖も檻もない外で自由に飛びまわるその姿はとても美しく、眩いほどに輝いていました。暗闇に慣れてしまった私の目には眩しすぎるほどです。


ーーあの鳥は、一体どこへ行くのでしょう?


己の気の向くまま何処へでも飛んでいける翼を持つあの鳥とは違い鎖と檻に縛られ自由のないこの身は一体どこへ行くのでしょう…?


小さく狭い馬車の中。

何処へ向かっているのかも分からないまま。

私はそっと目を閉じ壁に凭れます。


ジャラジャラ…


…そういえば何も知らされず、分からないずくしの私にも一つだけ分かることがありました


それは


今も昔も、この先にも(現在過去、そして未来)


私に“自由”はないということ。





チチ、チチチ…


自由を知る鳥の声を聞きながら、私は現実から目を背けるように目を閉じるのです。



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