第2戦士アバロンと英雄の城
ゼブラインの猛攻を必死に交わしているライレン。せめて場所さえ良ければ、まさかこんな所で白昼堂々ドラゴンを呼び寄せる訳にもいかない。今のライレンにはいい手段が思い浮かばなかった。最終手段として空中移動を解除し透明化して一旦この場を離れるしかないと思っていたその時。
「そこまでだ!城の真ん前で何をしている。この無礼者!」
と怒鳴り声が聞こえてきた、そしてそれと同時にかなり早い斬撃がライレンとゼブライン二人の間を通り抜けていく。
(なんだ?この斬撃、ただの斬撃じゃない。何かがおかしい。)
ライレンは何か違和感を感じた。がその時にはもう遅かった。何とライレンとゼブライン両者とも異能力を発動する事が出来なくなったのである。発動できない、それはつまり魔力が無くなったという事だ。2人は一体何があったのか理解出来ず斬撃が飛んできた方を見ていると城の中から1人の女がこちらに向かってきた。髪は金髪でポニーテール、かなり重そうな鎧を見にまとい剣を片手に持っていた。さっきの違和感のある斬撃の正体は彼女の剣にあるとライレンは予想した。
「て、てめぇ…なんの真似だ?どんな小細工を使いやがった。どいつもこいつも邪魔ばっかりしやがって、誰だお前は!!」
ゼブラインはかなり激怒しながら何者なのか彼女に問いかけた。城の中から来たことを考えるとこの城の兵士、王直属の護衛など色々考えられる。斬撃を見ただけで只者ではないとライレンとゼブラインは分かっていた。きっと逃げていった門番が助けを求めたに違いない。
「お前たちに名乗る必要はないと思うがまぁいい。私はフェルマン城 第2戦士 アバロンと言う者だ。城の前で暴れている者がいるという通報を受けやってきた。喧嘩をするなら他所でやれ!」
彼女の名前はアバロン。フェルマン城の戦士という事はこの城、そして王を守る護衛軍という事。第2戦士と言っていたが戦士の中にも位があり分けられているという事なのか詳細はまだ分からない。が城の関係者という事は確定だったためライレンは次の行動に出ていた。
「すみません。ご迷惑をおかけしました。気が動転してしまっていて…これには事情がありまして、緊急でこちらの王様に用が会ったのですが会うことは可能ですか?」
ライレンはそうアバロンに尋ねた。少しでも可能性がある事はすべて試そうと思ったのである。無駄に頭に血が登り、荒れていた時間がすごく無駄だったと後悔もしていた。
「王様に用?一体何の用だ。2人ともそれを述べよ。何故か理由を聞かないと話にならん。」
アバロンはライレンとゼブラインに対し同時に質問した。
「ちっ。言うしかねぇか。単刀直入に言うぞ。俺たちが住んでいるトリタ村にこれから1週間以内に魔物がたくさん湧いてくる。それが原因で崩壊しちまう。姉が異能力者でな、少し先の未来が分かんだ。さすがに相手すんのが俺一人じゃ骨が折れる。だから応援を頼みに来た。俺たちの村とフェルマン城は同盟を結んでいるはずだ。俺はゼブライン、今年の魔力診断で合格した男だ。ちなみにこいつは母親が攫われただの抜かしてたぜ。王様に相談にでも来たんじゃねぇか?」
ゼブラインがライレンの内容も軽く説明してしまった。
ライレンの話も緊急だがゼブラインの話がホントならかなり危険な話だった。詳しく何匹かは分からずただおびただしい数の魔物が1週間以内に攻めてきて村を崩壊させるらしい。この男にも他人のことを考える気持ちがあるのかとライレンは驚いていた。果たしてこの両者の話をまともに聞いてくれるのか、そして何故急に魔力が無くなったのか気になることで頭がいっぱいだった。
「なるほど。お前たちが嘘をついていないのは大体は分かった。未来予知ができる能力者がいる事も家族が突然失踪したなどと言った話もよく耳にする。ゼブラインと言ったな。増援は腕利きのやつ1人でもいけるか?かなりの実力者だと思うぞ。」
アバロンは自信満々な顔で聞いてきた。
「今すぐ連れて行けるならそいつでもいいがそんだけの実力者なら後でやりあって見てぇもんだな。んでそいつは城の中にでもいんのか?」
「ん?何を言っている。今お前の隣に居るではないか。一目で分かった。お前も中々だがその男は相当な才能を持っている。手を貸してもらえ。先程の敵は今の友、と言うだろ?」
何とアバロンが提案したのはライレンとゼブライン2人で共闘し村に現れる魔物を倒してこいというものだった。
先程の敵は今の友などと言う言葉も聞いたことがない。普通に考えてさっきまで殺し合いの勢いで戦っていた相手と共闘などまず有り得ない。仮にその村を救ってもライレンにとっては得がひとつもないのだ。手伝いに行く意味すらないと思っていたライレンにたいしアバロンはこう言った。
「もちろんこの村を救う事に協力してくれたら母親が攫われた話この私がしっかり聞き協力しよう。正直今こっちもごたついていてな。少々手が回らず大変なんだ。どーだろう?」
どうやらフェルマン城でも何かあったのかごたついているようで他の事件などに手を貸している余裕が無いようだ。さらにフェルマン城は昔からかなり有名な所で色々な地区と同盟を結んでいて結んでいる所で何かあった時は助けに行くなどしているため別名英雄の城だとアバロンから聞いた。