メギスとシルバーバレス
急ぎ外へ出たライレン。ゼブラインの姿はもう無かった。人の迷惑にならず何も無い少し広い所がいいと考えていたがいい所が一向に思い浮かばない。
ゼブラインはどこへ行ったのだろう。彼とは出来るだけ関わりたくなかったがこう言う時は正直使えると思っていた。人を寄せつけないオーラ、風格が滲み出ているからである。どこへ行くか迷っているとメギスがライレンの肩とポンッと叩きそのまま走り去っていく。着いてこいと言っているのか、確信は全くないがこのまんま時間を無駄にしたくないとメギスの後ろを追う。
30分程度走ったであろうか。気がつくと街の外れまで出ていて周りは人が住んでいるのか分からないほど静まり返り、建物などはかなり錆び付いているように見えた。
ライレンが住んでいる街は湖月の南地区にあるマリアナという街、そこから出たことが無かったライレンにして見れば少し街外れに出ただけでも冒険になる。するとメギスは走るのをやめて立ち止まった。
「はぁ〜。疲れた。久しぶりにこんなに走っちゃったよ。まさかこのペースに付いてこれるなんて君体力あるじゃん!」
「はぁ…はぁ…いや、かなり疲れたよ。正直もう足が動かなくなる所だった。ところでここは?」
ライレンがメギスに尋ねる。
「ここは昔、犯罪集団に攻め込まれて被害にあった場所さ。マリアナの住民たちはこっちまで本来なら住んでいるはずだったけど攻め込まれて有り金全部持ってかれ最後に放火までしたんだよ。とんだ外道っぷりだよな。」
通りで錆びているにしては限度を超えていると思っていたがしっかり見ると何ヶ所か燃え跡が残っている。証拠隠滅の為に最後に放火をしたのだとしたらメギスの言う通りとんでもない集団だ。犯罪集団は1つのグループだけではない。ニュースで聞いた事があるだけでも最低3つのグループがある事は知っている。こんなヤツらを野放しにしてられない。一刻も早く異能力をしっかり使いこなさないと。
確かにここなら人もいないし迷惑をかけるようなことにはならないだろう。しかし何故メギスは此処を知っていたのだろう。ただの知識なのかそれとも…と考えているとメギスは異能力を発動させようとしていた。
既にどんな能力が手に入ったのか分かっているように見える。アイティスもゼブラインもそうなのだろうか、そう考えながらメギスを見ていると空から何かの鳴き声が聞こえてきた。とても大きな鳴き声、そして姿が見えてきた。それは4メートルを超えるだろうか、それぐらいの大きさの翼をもった鳥がメギスの元に3匹ほど集まってきた。
「びっくりしたかい?これが俺の能力。こいつらはシルバーバレスっていう鷹の1種だよ。この銀色の翼はかなり強固でね、建物や岩山に傷を負わせるなんて軽々やってしまう。」
そしてメギスから詳しく聞くと彼の能力はこのシルバーバレスという鳥を何匹まででも自由に従え命令することが出来るという能力らしい。
この鳥は湖月にいる生物の中でもかなり希少で詳しい生息地は不明。全部で60匹適度しか今はいないようだ。そしてメギスは数年前シルバーバレスがたまたま森の中で怪我をして羽休めしている所に遭遇し水や食料をあげ面倒を見たことがあると言う。
そしてアロマから能力を貰う時、黄緑色の光を見ているとその中に自分とシルバーバレスが写っていたと言っている、これでこの能力になると確信したようだ。
「次は君…いやライレンの番だよ。あの時の光を見てライレンの能力にすごく興味が湧いちゃってね。」
「分かった。この能力だという確信はないけどきっとこれだと思ってる物はあるから…試してみる。」
そう言ってライレンは目を閉じた。