夢の中で
ミシ…ミシ…ベットのきしむ音が鳴る。
「またこの夢か。。」
ライレンは夢を見ていた。広い荒野の真ん中で分厚い一冊の本を強く握りしめ立ち尽くしている自分の夢を。
ここ湖月と言う星では2400万人の人口がいる。そして個人差はあるがみな魔力をもち生れてくる。そして年に1度20歳を迎えた者達が魔力を診断する日がある。そこで診断した結果一定の魔力量を超えていた場合異能力を授かる権利が与えられるのだ。
何故そのような権利があるのかと言うとこの星には戦闘員が必要であるからだ。 この星には沢山の魔物や犯罪集団が多く存在し頻繁に事件が発生している。
そのため、この星の治安を守るために魔力の多いものを厳選しスカウトしている。異能力を授かる事を選べば必ずこの星の兵士となら無ければならない。これは絶対条件。
もしそのルールを破れば即座に腕利きの兵士たちに追われ捕縛されるだろう。そして二度と自由な生活は送れない。今までに異能力を貰いそのまま逃亡され今じゃ犯罪集団に入りかなりのお尋ね者になっている奴もいると聞く。
それが原因で余計にルールが厳しくなったのだ。そしてライレンの誕生日は4月1日、魔力診断日と同じ日に誕生日を迎える。
ライレンには夢があった。この星を守る兵士となり魔物や犯罪組織全てを倒し平和な世の中を築き上げるという大きな目的が。
「大丈夫かしら…」
ため息をつき心配するライレンの母
ライレンは生まれた時から診断なんてしなくても分かるほどの恐ろしい魔力が滲み出ていた。一体何故その様な事になったのかは未だ不明である。
起床したライレンが眠い目をこすりながら家の2階から1階へ降りてきた。
「おはようライレン、昨日はよく眠れた?お誕生日おめでとう。お祝いしてあげたい所だけど先に魔力の診断へ行くのよね。もし異能力を得られるようになったらやっぱりあなたは…」
「もちろん能力は貰うつもりだよ。本当は何の能力になるのかその時にならないと分からないらしい、けど俺には分かる気がするんだ。母さん、俺また同じ夢を見たんだ。その夢で俺は異能力を使っていたんだよ…うっすらだけど覚えてるんだ。ちゃんとどんな能力になったのか、この先どーするかは帰ってきたらしっかり話すから心配しないで。」
「そう…きっと止めても無駄なのよね。母さんは本当にライレンの事が心配なの。だからこれだけは約束して。絶対に父さんのようにならないで。自分の命は大切にして。私を1人にしないでね。」
「うん、約束するよ。僕だって母さんを1人になんてしたくない。そんな事したらあっちにいる父さんに会う時が来ても顔向けできない。」
とても重い会話が続いている。能力者になると言うことは犯罪組織や魔物達と戦う時が必ず訪れるだろう。自分の身に危険が伴う事が多くなる。
何より母はそれが心配で仕方がなかった。きっと父親もそういった関連の事で被害にあい、この世から去ってしまったのか。
「そうよね。父さんの分まで私達が長生きして幸せでいないと後で怒られちゃうわね。分かったわ今はこれ以上何も言いません。今日は誕生日だしいつもより豪華なご飯用意して待ってるから楽しみにしててね。」
母はまだ言いたい事がたくさんあったようだがそれを言うのを我慢する事にした。今日はライレンの誕生日、切り替えてちゃんとお祝いしてあげようと考えたようだ。
「気をつけて行くのよ!行ってらっしゃい。」
「ありがとう母さん、今日のご飯楽しみにしてるから!それじゃあ行ってきます」
寂しげな表情で見つめる母を背中に、ライレンは家を出た。
父親がいなくなってからずっと止まっていたライレンの時間はここから動き出す。この先の人生に一体何が待ち受けているのか、能力者になりそれからの苦難を乗り越える事がはたしてできるか。
ライレンの新しい物語はここから始まる。