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妖精さん、産廃について考える

【産業廃棄物の最終処分場問題】


S市は、日本一の富士山のふもとに広がる工業都市である。

かつて公害問題を引き起こし、怪獣映画の題材となったこともあるS市。

怪獣映画よりもむしろ、陽生がよく覚えているのは、

テレビアニメ「魔法のマコちゃん」の第12話、「海のひびき」の1シーン。


マコが、老いた漁師の最後の願いをかなえるため、「人魚の命」に願いをかける。

老人の眼前にかつての美しい海が広がり、そして老人は微笑みながらそっと息を引き取る。

夕日が沈むと同時に、もとの醜い姿に戻る海。工場は相変わらずモクモクと黒煙を上げている。

マコは叫ぶ。

「海を殺し、おじいさんを殺したお前たち。これでもまだ、まだ足りないの!」

魔法では何も解決できない。

公害問題を解決に導いたのは、市民の強い怒りと、それに対する産業界の深い反省だった。


そして、現在のS市は、「公害を克服した街」として、中国からも視察団が来る近代的な都市へと変貌している。

人々の本当に長い、長い努力の末、海を、自然環境を、取り戻していったのだ。


ただし、公害問題を克服し50年たった今も、S市の税収を工業が支える形に変わりはない。

変わったのは、様々な「環境技術」が取り入れられていることだ。

煙突から出る煙は、水蒸気がほぼ100%という状態。かつて「ばい煙」と呼ばれた汚染物質はフィルターによって除去が可能になった。

それでも何十万人ものひとたちが生活する以上、ゴミは出る。この「一般廃棄物」は、市の清掃工場に運ばれ、焼却炉で燃やされる。

その燃えカスを埋めるための最終処分場はどうしても必要。


都会ではどうしているのか。

原発問題と同じだ。それは大人の事情というやつ。いわゆる「お金で解決」。

結局、弱い方へ、弱い方へと、負担は押し付けられる。

東京の電気を賄うために、200km北の福島県に原子力発電所をつくり、

そして、そこで出た核廃棄物は、そこからさらに400km北の青森県に捨てる。

この問題と同じ構図が、ゴミ問題には存在する。

今も、自前の最終処分場を持たず、他県へと捨てに行く自治体が多い。


しかしS市は、かつての公害問題の反省から、最終処分場までを自分たちの街で賄うことを決意した。

工場から出る産業廃棄物。これを限りなくゼロにしようという努力が、全市をあげて続けられた。それは「ゼロ・エミッション計画」と呼ばれた。

しかし、どうしても最後には「残渣」が残る。家庭ゴミの焼却灰も残る。

そこで、地元の地権者たちと相談の上、埋め立てに利用する面積を最小限にとどめるよう「環境基本計画」を定めた。

現在の最終処分場の近くには新たな処分場は造らない。つまりこれが最後だという事を地元町内会とも合意し、市長が調印した。


昨年から「新環境クリーンセンター」の建設も始まった。

新技術を取り入れたこの焼却場が完成すれば、家庭ゴミの焼却灰が回収され、リサイクルに回されることになる。

僅かに残った残渣は、セメント固化され、密閉型処分場へと埋められ、跡地は畑に戻すという計画だ。

この「クローズド型最終処分場」には産業廃棄物の受け入れも可能。ただし、セメント固化費用などが掛かるため、受け入れ料金は通常の3倍になる。


処分費が現在の3倍。

ここに産業界が難色を示し始めた。


建設業団体そして商工会議所のエライ人達がそろって、市に陳情にやってきた。

陳情の場には、産業委員長も呼ばれていた。


「それはお困りですね」

選挙の時は真っ先に頼りになる建設業界。

そして、大票田の産業界を代表する商工会議所。

市長はニコニコしながら対応する。


妖精さんはタブレットを操作しながらオレに聞いてくる。

「環境基本計画を見せて」

『来年が改定年度になってる。そして、これが最新バーション』

「改定って?」

『10年ごとに見直してる』

「じゃあ、計画変更は可能なの?」

『可能だが・・・問題はこれだ』と地元住民との合意書の写しを示した。

そこには「この処分場を最後とする」と書かれている。


妖精さんは頷き、陳情者たちにタブレットの画面を向けた。

「この合意書がある限り、新たな穴を掘ってゴミを埋めることは出来ません」


陳情者たちは我が意を得たり、とばかりに言いつのる。

「そうなんですよ。そこをなんとか・・・していただけないかと」


「そこをなんとかって???」

妖精さんには「忖度」とか、「気は心」という交渉方法が理解できない。


「すこし穴を大きくするだけでも、出来ると助かるんですがね」

「いや、すでに山麓には20カ所の最終処分場があり、総面積も規制されています」

話は平行線をたどる。堂々巡りだ。

業を煮やした市長が割って入る。

「まあ、なにか方法を考えてみましょう」


「では一つ、よろしく」

そう言いながら陳情団は帰って行った。


その数日後、

民間企業である「環境保全公社」に、職員を出向させ、新たな処分地建設場所を探すという交渉事に従事させると、市長は発表したのだった。


産業廃棄物は「安定型」や「管理型」と言われる処分場に埋め立てられます。

腐敗しても周辺の環境を汚染しないものは「安定型」へ。それ以外は「管理型」へと分別されます。管理型処分場の穴の底にはゴムシートが敷き詰められ、浸出水のペーハーなどが厳しく管理されますが、そのため毎年何百万というお金が水処理施設の運転にかかります。環境基準を満たせば、河川放流が許可されるので、あらかじめ10年分ぐらいの管理費を積み立てておくのが普通です。ところが最近では10年では「終了届」が出せない処分場が増えています。とくに県の検査が厳しくなったという話は聞きませんが、そうなると資金が枯渇してしまう、つまり儲けをすべて吐き出すことになります。

そこで注目されているのが本稿で書いた「クローズド型」です。セメント固化してから埋めるので「浸出水」の心配がありません。埋め立て後すぐに建物を建てたり、畑にしたりできるので、長野県の佐久インターチェンジ周辺で実績があります。

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