妖精さん、パワハラに悩む1回生議員から相談を受ける
主人公:『田中陽生』~S市議会議員。交通事故で、自動運転AIに棲んでいた妖精さんと入れ替わる。その頭脳はタブレット端末経由で議会に。
今回は陽生も4回生となり、会派の中堅どころとなっている、そんな頃の物語。
多くの地方議会は議会運営の円滑性を確保するために「会派制」を敷いています。
会派は政党とは違い、 議院内での活動に限定された議員の団体のことです。
つまり会派の会長であれ、議長であれ、国政選挙では違う議員の応援をしたりしています。
今回はそれを強要してはならない…という話です。
そして今回でこの物語は一旦終わります。(政治家になろう2に続く…かもしれない)
陽生たちは6人でひとつの会派を構成している。S市議会では最大勢力だ。
今回はその6名で兵庫県を視察に訪れていた。ビジネスホテルでの朝食後、会派の久米会長と1回生議員の山田がなにやら深刻そうに話し込んでいた。
「どした?」と話しかけると
「なんでもない」と、二人はそそくさと散っていった。
よーく考えてみると、あれが問題の始まりだった。
・・・でも妖精さんは、大体において、よーく考える事はない。
後日弁護士が作成した「事実整理書」には、以下のように書かれている。
『会派の長に対し、ハラスメントの事実を報告・相談』
『しかし、注意・是正は一切されず、行為は継続した』
パワハラ成立のためには次の3つをすべて満たす必要がある。
①優越的地位を背景とした言動
②業務上の必要性・相当性を著しく逸脱
③職務遂行環境の著しい悪化
職務遂行環境の著しい悪化、というのは例えば実害があったことを立証しなければならないんだけど、山田はその後バセドウ病を発症してしまう。
特に眼球突出に効果のある新薬もあるが、この薬が高い。
診断書には「強い精神的ストレスが主因」と書かれており、山田は治療費を求めるための争いを起こすべきか悩むことになる。
実は、この年の暮れには市長選挙が予定されていた。
久米会長はその選挙に立候補すべく運動を始めており、1回生議員の悩みなどにかかずらう暇がなかった。
も一つ言えば、加害者というのが元議長という大先輩で、来るべき市長選挙では自分を応援して欲しい大物。そのためには副市長のイスだって用意するつもりだった。
出来るだけ表沙汰にならないよう振る舞うのが自分に一番得だと考えたのも当然だろう。
そもそも先輩からのイジメの切っ掛けというのも、地元選出の国会議員の選挙がらみだった。
「選挙企業回りの時間をとれないか?」
「すみません。用事があり、参加できません」
「議会の公務は無いはずだが?個人的な用事なら変更して欲しいが?俺も様々な日程を調整した上での提案だよ!」
「申し訳ありません。日付も時間も調整できないので、参加できません」
「返事のしようがない。話にならない!」
その後こうしたLINEが延々と
①21時以降から深夜帯にかけて
②反復的かつ執拗に
行われる様子がすべて保存されていた。
そのスクリーンショットを見せながら、山田は「久米会長に相談したんですが、結局何もしてくれません」と、はじめて陽生に相談した。
妖精さんは楽しいことは大好きだが、こうした陰湿なイジメの話には弱い。
「どうするです?」「逃げよう」「逃げよう!」
『面倒なコトにナルかもしれない』
「逃げるです」「一緒に!」
こうして6人いた最大会派は二つに分裂することになる。
陽生は山田ともう一人を伴って、新しい会派を結成することにしたのだ。
S市議会では会派の最小単位を3人と決められている。
それ以外、単独で活動しようとする議員は「無会派」と呼ばれ、その活動に様々な制限を受ける。
例えば議題を決定する「議会運営委員会」での発言権が無い。つまり議会運営に口を挟めず、出てきた議案を審議するだけになる。また要所要所で設置される「特別委員会」に配属されることもない。
発言権は弱いが、その分、仕事も少ないという事になる。
同じ議員報酬を受けておきながら、そうした区別ってどうなんだろうね。




