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【特別企画】安倍首相に捧げる

主人公:『田中陽生はるき』~S市議会議員38才。交通事故で、自動運転AIに棲んでいた妖精さんと入れ替わる。その頭脳はタブレット端末経由で議会に。

「妖精さん」~先史人類時代、地球を支配していた存在。脳死状態だった陽生を、現在、絶賛自動運転中!

衝撃的なニュースが流れた。

国政選挙の期間中、遊説中の元首相が改造拳銃で撃たれ、死亡したというものだ。

アメリカと違い、銃規制が広く行われている日本で、民主主義国家で、白昼こんな事件が起きるとは考えもしなかった。


陽生はSNSで絶え間なく流れる情報に目を通していた。

そこで、気になる外報に目を止めた。MOON?


『このBBCが伝えるMoonってなに?』


妖精さんは陽生の質問に、質問で返す。

「民主主義の反意語はなーんだ」

『え? 社会主義とか独裁主義?』

「ちがうよ。そのどっちも、人間さんが選び取ったものだよ」

『どういうこと?』

「デモクラシーの反意語はシオクラシ―」

・・・

『そうか!』

「うん。ヤンウェンリを倒したのは?」

『地球教・・・?』

「ピンポーン」

・・・

『今回の事件、どう思う?』

「神さまですか?」

『え?』

「人間さんは神さまですか?」

『もちろん違う』

「人間さんはお菓子をくれます。神さまだと思ってたです」

・・・

妖精さんの様子がおかしい。

「神さまは、時々、ひどいことします」

悲しげな妖精さんにかける言葉を失った。


陽生が大学生活を送ってた時代、カルト宗教の勧誘がはやった時期があった。

「真如苑」をてっきり焼き肉屋だと思って、ついて行きそうになったこともある。

当時、新聞赤旗を賑わせていたのは「国際勝共連合」という文字。そして都内の大学に巣くう「原理研」という名のサークル。


当時の保守政党はアカから日本を守るという名目で、お隣の国からやってきたカルト宗教と深い関わりを持った。

日本のマスコミは、今回の犯行の動機を「ある宗教団体に恨みを持った」と一報したが、すぐに「ある団体に」とトーンを下げた。しかし外電は、ちょうどその教祖が来日していたことと合わせて、この団体について詳細に伝えている。


今回殺された方の祖父が立ち上げた団体が守ったカルトのせいで、自らの孫が非業の死を遂げたのだとすると、それは歴史の皮肉としか言いようがない。


皮肉なのは警察も同様で、アカに勝つという大義名分があり、政権政党に深くに入り込んでいたから、原理には手を出さなかった。オウム事件のあとも原理は野放しのままだった。彼らは、このカルトをお目こぼししたツケを、自らの大失態という形で払わされる羽目になった。

 

最初は「政治テロか?」という評論家もいた。

しかし、今回の犯行が「心理的威圧や恐怖心を通して、譲歩や抑圧などを図るもの(テロの定義)」とはとても思えない。選挙期間中であり、狙われたのが政治家だとしても、犯人が達成しようとする目的が判らない。

 

ビッグコミックスペリオールに連載されていた 「サンクチュアリ」という劇画のワンシーン。

選挙戦の最終盤で、凶弾に倒れた男がテレビカメラに向かって叫ぶ。

「お前ら、投票に行けよ!」

特定の候補者が、暴力団と関係が深いことを暴露するために行った蛮行(だったと思う)。

それを見た若者たちは陸続と投票所へ足を運ぶ。

結果として投票率は劇的に上がり、その候補者が当選するという話・・・だったような。(うーん。もういっぺん読み返してみよう)


この事件を受けての、ある評論家のコメントを、

意味不明な部分も含めて、記録として全文引用する。

「これから供述内容で確定してもらいたいんですが、もしあれくらいの特定団体との関連性くらいで〇〇さんに殺意を持ったというのであれば、僕は〇〇さんをね、世間がですよ、これ政治家だからある意味仕方がないっていうところがあるのかも分からないけれども、物凄いね、ある意味、その命を奪ってもいいじゃないかっていうような言説がもうあふれ返っていて、そういうことが多少なりとも影響してたってのは、この犯罪に影響してたってことであれば、僕はこのネット社会の表現の自由っていうのは守っていかなきゃいけないんだけど、だけど一方でこういう犯罪を誘発してしまうってことに関してどう社会的な体制を築くのかっていうのを、単なる民主主義への挑戦とか政治テロだってことじゃなくて、そこをしっかりね、政治家は考えてもらいたいです」


この評論家は、「こういう事件を誘発するネット社会」の問題を指摘し、

「あれくらいの特定団体との関連性くらいで」と同情して見せる。


「あれくらいの特定団体」というのが、宗教団体だとすると、

外電が深刻に伝える意味が解る。

日本人は、「政教分離」の意味するところが理解できないが、

彼らは、カルト宗教の恐ろしさを骨の髄まで理解しているのだ。


「デモクラシーの反意語はシオクラシ―」

つまり

「民主政治」の反対は「神聖政治」ということ。


「人間さんは神さまですか?」

いつの時代も、宗教は神の代理人を名乗って民主主義に挑戦する。


しかし海外には、キリスト教民主同盟のように、普通に宗派を名乗る政党もある。

日本人には奇異に感じるかもしれないが、

彼らは普遍的な宗教には常に寛容だ。

つまり「政教分離」とは「カルト禁止規定」なのだと考えると理解しやすい。


例えば、公明党を政教分離していないと揶揄する向きもあるが、

創価学会は「カルト」ではない。だからノープロブレム。


いずれにしても、

元総理が凶弾に倒れて一命を失うという驚天動地の事件が起きたにも関わらず

いずれの政党も、それぞれ最後まで選挙戦をやり抜いた。


日本のデモクラシーも捨てたもんじゃない。

元総理の冥福を祈りたい。

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