妖精さん 一般質問をする
間が空いてしまいました。
2020年の3月、4月というのはどういう時期だったのか、きっと思い起こす時がくるのだろうと思っています。事情をお察しください。
【妖精さん 一般質問する】
地方議員の大切な仕事の一つに「一般質問」という権能があります。
権能、つまり公的な権利そしてその能力のこと。
・・・妖精さんの場合、その能力に問題はない。
問題があるのは、「暗黙の了解」とか「しきたり」とかいうものを理解できないこと。
まったくの「一年生議員」の状態で一般質問に挑むというのは、つまりLv.1(レベル1)でダンジョンに潜るようなものです。
地方議会の会議は「ロバート議事法」(ロバート・ルール・オブ・オーダー)に則って進められますが、これは文書化されているので、妖精さんには理解出来ます。
議員の発言は主に、質疑・質問・討論・動議の四つに大別されるんですが・・・
まず「質疑」と「質問」がどう違うのか、そこから説明します。
質疑は、議題となっている事件について疑義をただすことで、議題を外れることは出来ないし、自分の意見を述べることも出来ません。そして、質疑には回数の制限があります。
一方、質問は、執行機関に対し説明を求め又は所信をただすことで、議員固有の権能とされるものです。
一般人は一般質問出来ない。
そして、ここが大事なんですが、公序良俗に反するものでない限り、何人も(なんびとも)その発言を制限することは出来ないという、重たい権利です。
一般質問の一週間前に「質問趣意書」を提出し、執行部との調整が図られます。
これこれこういう質問をしますよと、事前に通告するわけです。
S市の場合、1回目は市長が答え、2回目以降は所管の部長が答えます。質問を市長へそして部長へと掘り下げていきます。
提出された「趣意書」によって、どんな質問がされるか市長は判っているので秘書課が答弁書を纏めます。でも、その場で掘り下げられて質問される部長にとっては堪りません。
だから、質問趣意書が提出されると、職員は「ヒアリング」と称される、議員との打ち合わせに飛び回ります。
そして何とかして2回目以降の質問を、聞き出そうとします。
かつては、質問趣意書にただ一行「市政全般に関すること」と書いて提出した剛の者もいたそうです。
執行部の非を鳴らすだけならそれでも良いでしょう。
でも、議員が具体的に政策執行に関与できるのは「一般質問」だけです。
陽生は年4回、すべての定例会で一般質問しています。
定例会ごとの一人60分の持ち時間で、どうやって自分の意見を政策に反映させるのか、そこが地方議員の腕の見せ所です。
ところが、年に一度も一般質問に立たない議員もいます。
「オレは市長の与党だから」というその方の言い分に、陽生は目を丸くしたことがあります。
市長は、与党議員の自分の言うことを聴くのは当たり前、とでもいうのでしょうか。
実際、そうした議員は
「あそこの側溝に蓋をかけてくれ」とか「あそこにカーブミラーをつけてくれ」といった地元からの要望をもって、市役所内を飛び回っています。
確かに生活道路には「危険な場所」が隠れていることがあります。
陽生も、危険と考えれば、自治会長さんと一緒に陳情に歩きます。
でも、住民自治と団体自治は、きちんと区別されるべきものだと陽生は考えます。
要望書に町内会長名はありますが、そこに議員の名前はありません。
しかし役所の方は必ず、「〇〇議員が同行していた」と記録を残します。
中には、子弟の就職を頼むような悪質な「口利き」もあるからです。
「要望」というものは、のちに団体自治の場で「あの件はどうなりましたか?」と聞けるものであるべきです。
まさか「オレが頼んだあの子は市役所に採用されるのか」と聞く議員は、いません。
「〇〇センセイに頼んでもダメだったけど、誰々センセイだと陳情が通った」
などと、まことしやかに語るお年寄りがいますが、今はそんな事はないない。
昔は交通違反の揉み消しが出来たとか聞くけど、近代社会の議員にそんな権能はありません。
どこの未開文明だ、そりゃ。
陽生自身が建設業に詳しいだけあって、カーブミラーや側溝の修理といった陳情をよく受けます。
でもそうした細かい要望をするのは、住民自治側、つまり自治会長さんの仕事です。
S市でも、生活道路関連で毎年200件くらいのそうした陳情が上がります。優先順位をつけて、順に工事を発注するのが団体自治側の仕事です。
昨年の積み残しがあると、その分だけまた次年度に回される工事が増えます。
どの要望が通り、どの要望が次年度に回されたのか。議員を使って陳情するよりも、自分が要望した箇所がその後どうなっているのか。そうした状況をスマホを使って「見える化」してはどうか・・・というのが、今回の陽生の一般質問です。
以下、そのやり取りを本会議議事録から。
◆11番(田中 議員) 生活道路の老朽化については、市の職員がパトロールして歩く、もしくは苦情が入ってから写真を見ながら確認して歩くというのは大変な作業だと思います。交通安全施設、「センターライン」であるとか「止まれ」であるとか、そういった道路の路面に書かれているものに関しては、残念ながらすごく遅いなと。これは警察といろいろやりとりしなければいけないということがあるんでしょうけれども、こういったものについての取り組みはどういうふうになっているのでしょうか。
◎(建設部長) 確かに白線等については薄くなっている部分が結構見当たります。ある程度の予算確保をしている中で、職員によってそれらの薄くなっている部分を把握してやっている。それ以外に、市民からのここが薄くなっているよというような情報をもとに、対症療法という形になってしまいますけれども、そういう形でやっている。計画的に白線を直しているという状況ではございません。
◆11番(田中 議員) そこで、資料として皆さんのお手元に配らせていただいておりますのが、最新技術を活用した維持管理手法の導入です。「まちレポート」というアプリケーションについて紹介させていただきたいと思います。これはグーグルマップと連動して、ここの道路が悪くなっているよ、ここの白線がもう消えちゃっていますよ、危ないですよといったようなものを市民の方々が自分で写真を撮って、位置情報も同時に通報することができるアプリです。市の職員が苦労して1点1点集めるのではなく、こういった市民からの情報を利用してはいかがでしょうか。
◎(建設部長) こうしたアプリを使えば、情報は、道路に限らずいろいろなものが集まってくると思います。今後多くの課にわたる話になってきますので、あらゆる情報が入ってくることが予想されますので、その辺、調整等相談しながら、判断していきたいと思っております。
そして、
このアプリは、陽生の一般質問から2年後に、S市に導入されることになります。
「一般質問」について書きました。
地方議員の仕事の醍醐味は、
こうやって政策を実現していくことにあります。
次は「新型コロナウイルス」について書こうと思います。