スローガンその8「ようこそエリートワールドへ」
彼女はポケットからスマートフォンを取り出し、どこかへ電話をかけた。
「誰かに助けを求めたのかい?」
「えぇ。本日のビックリドッキリフレンズよ」
「は?」
「いでよ!」
「ひっ……」
突然右手を高く掲げて叫ぶものだから、少女も驚いてしまったようだ。これはブラックリストに登録されるかもしれない。ロールキャベツ定食美味しかったのだがな……。
「地より生まれし緑の使い手! 乾いた荒野をその魂で花園へ変えたまえ! 我がスール、草蒸莉苅菜ァ!」
なんなんだこれは。いや、なんなんだこれは。
「蝶茶韻理、いい加減にしろ。他の客にも迷惑が……」
と言いかけたところで、誰かに肩を叩かれた。
「あぁすみません。すぐに黙らせますので」
振り返ると、そこにはやや薄めの灰色のような……アイボリーホワイト、とでもいうのだろうか。そんな色の上下に分かれた作業服をまとい、向かって右側の頭部に明るい緑色のエクステを付けた女性が立っていた。変わった容姿をしているが……不思議と「ださい」とは思えないほどに自然に着こなしている。顔立ちも整っているし、シュッとしたスタイルだ。
「お待たせしましたっすwww」
「早かったわね、苅菜」
かりな。ということは彼女が蝶茶韻理のスールなのか。……すまない。「類は友を呼ぶ」という言葉がよぎってしまった。
「草をむしって刈りまくる! 草蒸莉苅菜っすwww!」
「草をむしっているというより草を生やしまくっているようにしか感じないのだが」
「チッチッチ。わかってないわねぇ」
「何がだ」
「エリートはその広い人脈を巧みに使いこなしてこそ……よ。苅菜は私の学生時代のスール、いわば妹分。優秀じゃないはずがないわ」
「お褒めにあずかり光栄っすwww」
「……にしても来るの早かったわね」
「たまたまこのお店に来てたんすよwww」
「偶然ね!」
「偶然っすねぇwww!」
本当か? 本当に偶然なのか?
「ってことで苅菜、力を貸しなさい」
「何をすればいいんすかwww?」
「かくかくしかじかで、このままじゃ私達無銭飲食になるの。金をよこしなさい」
力は借りるのに金銭は借りないんだな。
「はいっすwww」
君はいいのかそれで。姉貴分にたかられているんだぞ。
「心配なようね碧」
「心配というより呆れているだけだ」
「なにも問題ないわ。苅菜はどんな時もお金を出してくれるフレンズよ!」
「っすwww」
「すっごーい(棒読み)(思考放棄)(脳内がドッタンバッタン大騒ぎ)」
「これがエリートワールドというものよ!」
「よっ! 日本一wwwwww」
「もうどうにでもなれ」
作者はエクステとウィッグとメッシュの違いが分かりません。