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さちれいにサチアレ!  作者: 壊れ始めたラジオ
調査員リサーチ編
7/9

スローガンその7「昼食でしょ? 無銭でしょ?」

 OLという言葉を知っているだろうか。「office lady」、略してOL。一般的には企業に勤める女性のことを指す単語だ。


「地球儀を回せばー」


 僕、番門碧つがいかどあおいもそのOLの一人。校内が世紀末の様相を呈していたほどのいわゆる「底辺中学」の出身だが、縁あって伊ヶ崎波奈いがさきはなに拾ってもらい、今は天寿てんじゅの監査室で働かせてもらっている。他に副業をしているのだが……それはまた別の話だ。


「どこまでも行けるはずー」


 そして僕はOLの中でも「エリート」と呼ばれる存在であると自負している。もっとも、上には上がいるが。


「わくわくの願いを夢見て過ごしー」


 まずは天寿てんじゅのトップである伊ヶ崎波奈いがさきはな社長兼私立星花女子学園しりつせいかじょしがくえん理事長。いわずもがな、だ。


「何もかもを巻き込むのさー」


 さらに副社長で社長と恋仲の彼方結唯かなたゆい、専務、常務と続いていく。……しかし、僕達は知っている。天寿てんじゅには影のNo.3がいることを。星花女子学園せいかじょしがくえん現中等部三年生の東雲宇佐美しののめうさみ……だ。社長からその才能を認められている彼女は会社の上層部や役員にも顔が利き、ある程度の決定権まで持っている。過去には天寿てんじゅ御用達のネット声優「Nebburicoネッブリコ」のプロデュースに携わっていた実績もある。出世は確実。次期社長は彼女なんじゃないか……と社内では専らの噂さ。僕も彼女には頭が上がらない。


「晴れの日も雨の日もー」


 東雲宇佐美しののめうさみを3番目とすると、僕は17番目となる。


 そして……天寿てんじゅで20番目に偉い人間が……隣を歩いて先程から『バレバレ痛快』を口ずさんでいる彼女だ。


「……商店街に来たはいいが……どうする、蝶茶韻理ちょうさいんり

「追いかけてー、捕まえてー、大きな夢をすこってくのー……。……んー、そうねぇ……適当にここでいいんじゃないかしら」

月見屋食堂つきみやしょくどう……定食屋か。ふむ、賛成だ」

「じゃ、入るわよ」


 蝶茶韻理ちょうさいんりが入店すると、10代らしい齢の少女が出迎えてくれた。


「いらっしゃいませー! 2名様ですか?」

「エリート2名様御来店……よ」

「エリー……え、あ、はぁ……? ……と、とりあえず、こちらの席へどうぞ」


 何故かウインク付きのキメ顔でピースする我が同僚に困惑したようだが、少女はすぐさまいつもこなしているのであろう動きへと軌道修正した。


「こちらメニューです。お決まりになりましたらお呼びください」

「そうねぇ……。目玉焼き定食をお願い」

「僕はロールキャベツ定食」

「あんたはロールキャベツ定食じゃないでしょ?」

「小学校の授業中によくある『先生トイレ』と同じ理屈だな。……あー気にしないでくれ。ただの会話だ」

「はぁ……。……目玉焼き定食お一つ、ロールキャベツ定食お一つ……ですね。少々お待ちください」



 ◆



 食事の席では先日突然姿をくらませニュースを騒がせたアイドルグループ「SNS-DUNK」のリーダー「鈴村晴すずむらはる」の話題となった。

「……まあメンバー間でイザコザもあったようだし、憂鬱になっていたのかもしれないな」

「それで消失して騒ぎ起こすのもねぇ……」

「それでもクセモノ揃いだったメンバーの3人を今までまとめあげていたそうじゃないか」

「自称チヤン星のお姫様の長友悠樹ながともゆうき、未来が見える目を持っていると自慢していた旭未来あさひみく、不思議な力を得てしまい神の遣いから狙われていると言い回っていた弧澄津季こずみつき。ストレスも溜まってたんでしょうね。楽屋に遺された書き置きには『感じるまま感じることだけをします』……。全てを捨てて自由を探しに行ったのかしら」

「果たしてそれが見つかる日は訪れるのか、疑問だな」

「どうでしょうね。答えはいつも彼女ら自身の胸にあるものよ」

「そうかもしれないな。……っと、長居してしまったようだ。……すみませーん」

「はーい」


 厨房の奥からやってきた店員の少女に我先にとクレジットカードを出してきたのは、我が同僚蝶茶韻理ちょうさいんりだった。


「カードでお願い」

「あ、すみません。うちでは取り扱っていなくて……」

「あらそうなの? 私カードしか持ってないわよ?」

「それでよく今まで暮らしていけたな……」

「普段現金が必要なところになんて行かないもの」

「仕方ないな……。ここは僕が支払……。…………」

「ちょっと、出すなら早く出しなさいよ」

「いや、それが……」

「……なによ」

「……マンションに財布を忘れてきてしまったようだ」

「ウソっ!?」

「すまない、僕としたことが……」

「なんでこんな時に忘れるのよ……」

「カードしか持ち歩いていない君にも非はあるだろう」

「しょうがないわね……」


 そう言うと彼女はポケットからスマートフォンを取り出し、どこかへ電話をかけた。


「誰かに助けを求めたのかい?」

「えぇ。本日のビックリドッキリフレンズよ」

「は?」

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