スローガンその5「ブラインド革命」
「流石は私立学校の校長。気品のある人物だったな」
「そうかしら? ただのオバサンに見えたけど」
「少しは口を慎んだ方がいい」
校舎へ無事辿り着いた私達は校長と適当に挨拶を済ませたあと、廊下をふらふらしていた。朝の職員会議で改めて挨拶をするけれど、それにはまだ時間があったからだ。
「……そろそろ時間だ。職員室へ行こう」
「職員室は……校長室の隣だったわよね」
「というより、生徒玄関から入ってすぐ……だな」
◆
「御用改めである!」
「失礼します。そして失礼しました」
「今日から2ヶ月間、このお二人が学園の監査をしてくれます。先生のみなさん、ご協力をお願いします。……では番門さんから」
「本社から来ました、番門碧です。資料の提示をお願いしたり授業や部活動の様子を見させていただくことがあると思いますので、その際はよしなに」
「同じく、蝶茶韻理早智よ。まあ立場が違うとはいえ同じ天寿の社員なわけだし、あんまり気張らないでいきましょ。夜露死苦!」
「……では、みなさん仕事に戻ってください。お二人とも、これからよろしくお願いいたします」
「……それはいいんだが…………校長先生。あのブラインド、随分古くなっているようですが」
「この新校舎を建てて以来、一度も交換していませんから……」
「ふーん。……黄ばんでるし、ところどころ割れてるわね」
気になった私はショルダーバッグからタブレットPCを取り出して、過去に本社へ提出された修繕の要望書のデータを閲覧した。
「…………一度も要望されてないわね」
「わざわざ本社にお願いするほど高級な物でもないので……」
「なら、学園に配当している予算で新しいものを購入して取り替えたりしないのですか? 用務員がいるはずでしょう」
「用務員は倉田先生と言うのですが、彼女には毎日のように壊れる学校の設備をを優先して直すように伝えてありますので……」
「そんなに毎日壊れるものですか?」
「いやぁ……うちにはわんぱくな教員や生徒がいるものでして…………」
「いやそれどんだけよ。……とにかく、このまま放っておいたら完全にダメになるのは時間の問題ね。業者を派遣しとくわよ」
「すみませんありがとうございます」
「こういった問題を見つけるのが僕らの仕事なので」
まずは一つ、改善点を見つけたわね。こうやって本社に上がってこないような事は、実際に現場へ赴かないと分からないものだから。エリート・アイに見つけられないものは無いわ。
エリート・アイ【名】:エリートの標準装備である、ものを的確に見通す目。