スローガンその4「Over Guardian」
「話に聞いてはいたが……やはり大きいね、星花女子は」
校門を抜けて早々、番門碧が口を開いた。
「……ま、私の母校には及ばないわね」
「『日山泉ヶ原学園』……だったか。確かに山一つ全てが敷地というのは広いが、この学校には林間臨海学校に使っている施設が別にある。総面積でいえば、こちらの方が広いと思うぞ」
「どんだけ広いのよここ……。あと商業と娯楽の施設があればもはや学園都市ね……」
「『悠々自適で最高のパラダイス』……とでも表現すべきか」
「時計の変身アイテムでももらえそうな二つ名ね」
「この学校の歴史を奪ったところで、君の手には余るぞ」
「違うわよ。……さっきの、略して『YSP』になるでしょ?」
「ああ、なるほど」
「……ちょっと、いいですか」
紺色の制服に身を包んだ中年男性に声をかけられた。ま、この学校の警備員でしょうね。
「あなた達、見たことない顔ですね? どちら様ですか?」
「ふっ、見たことない顔……つまり見たことないほど美しいってことね。私ったら罪な女。やっぱりエリート・ビューティーはどんな人間でも虜にしてしまうのね」
「は?」
「自己紹介が遅れてすまない。僕らはこの学園を経営している天寿の本社から監査に来た者だ。証明として……この社員証を見せよう。誰だって自分の目に映ったものなら信じるだろう? ……ほら、蝶茶韻理も」
「ふふふ。私は生まれながらの美貌を持つ、エリート・ビューティーの申し子……」
「おい」
「……わ、わかったわよ…………。出せばいいんでしょ出せば。……ほら、私の社員証よ」
「うーん、確かにそのようですね。ご苦労様です」
「上の人間から話は聞いていなかったのかい?」
「いやぁ最近ちょっと物忘れが激しくて……」
「……ふむ、ならば仕方ない。とにかく、お邪魔させてもらうよ」
「ていうか、こういうのって普通校長とかが迎えに来るもんよね」
「まあ会ったら文句の一つでも言っておこう。それくらいなら、社長も多目に見てくれるさ」
「エリート説教をぶちかましてやるわ」
「頼むから普通に言ってくれ」
エリート・ビューティー【名】:エリートな美しさ。
エリート説教【名】:エリートな感じの説教。