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百話奇談Ⅱ ―眠らぬ町の怪―【コミカライズしました】  作者: 冬野ゆな


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第七十九夜 飲み会

 世見町の話かどうかは怪しいんだけど、と峨唯野は前置きしてから続けた。


 峨唯野が世見町のとある居酒屋に行った時のことだ。


 その日は居酒屋の一室を貸し切って、古い友人たちと酒を飲もうということになっていた。というのも、数年前の成人式で一度集まって懐かしくなり、仲の良かった奴らと番号を交換したあと、細々と再び集まる機会を狙っていたのだ。

 地元の成人式はテレビに出るような大々的なものではなく、各々の小学校でやるこぢんまりとしたものだったので、余計に懐かしさがこみあげたのだ。


 さすがに峨唯野も大学や就活があって地元に戻る予定がなかなか無かったし、連絡を取り合うこともそうそう無かった。

 それでも、たまたま連絡をくれたAという奴が、今、全員が東京にいるようなのでどこかの居酒屋で集まらないかと言ってくれたのである。


「おー、久しぶりい!」


 峨唯野が通された座敷に行くと、当時からの仲良し五人が既に集まっていた。


「ところで、Aは?」

「まだ来てないみたいだな。先にはじめてようぜ」


 こうして仲間内全員で集まるのは成人式以来だということで、いろいろと積もる話をした。今何をしているか、各々が話しあった。


「Bとは連絡取り合ってたんだけどさ、まさか全員が東京に出てきてるとはなあ」

「それはびっくりしたよ。お前まだあの会社にいんの?」

「いや、そこはもうやめて転職した」


 ところがそうしてお互いの近況報告をしていたのだが、Aがなかなか来ない。


「ここの居酒屋借りたのってAだと思うんだけど」

「だよなあ。さっき店員さんに聞いたけど、確かにAだって言ってたぜ」

「誰かAに電話してみるか? もしかすると何かあったのかも」


 まさか迷っていることはあるまい。

 思わぬ残業、とかならば仕方が無いが、事件や事故に巻き込まれていたりしたらコトだ。Aの携帯番号を知っているというCという奴が電話をかけてみると、何度鳴らしても出ない。


「ダメだ、出ねえな」


 何度か鳴らしてみたが、Cも首をかしげるばかりだった。


「電話番号知ってるんだから、連絡取ってたんじゃないのか?」

「まさか、中学の頃じゃあるまいし。ラインで話すのも限度があるだろ」


 Cが肩を竦めると、それもそうだとしか思えなかった。

 峨唯野もメールをしてみたが、ついぞ返事が返ってくることもなかった。もし何かAが企んでいたとしても、ごく普通の居酒屋に呼んでおいて何もしない、ということがいたずらになるとも思えない。

 結局その日は、最後までAは姿を現わさなかった。


 店員もちらりとこちらを見るだけで、一人足りないということは気が付いていないようだった。


「もしかして、はじめからこの人数で予約取ってたのか?」

「なんのために?」


 峨唯野たちは口々に言い合ったが、結局答えは出なかった。


 それから数日が経っても、Aからの連絡はなかった。

 しかし一ヶ月ほど経ってから、Bから連絡があった。


 なんでもAは既に亡くなっているということだった。

 さすがに気になったBがAの携帯ではなく実家のほうに連絡を入れると、Aの兄が出て教えてくれたのだという。BはAの兄とも子供の頃は交流があったので、すぐにわかったらしい。

 もしかしてあの居酒屋で集まった日のことではないかと思ったが、驚いたことに、Aはかなり前から体調不良で実家に戻っており、東京からは離れていたということだった。しかも亡くなったのはAからの「集まろう」という連絡が来る少し前のことだというのだ。

 となると、東京にいたのはA以外、ということになる。

 Aがどうやってそれを知ったのかもまったくわからなかった。


 結局、峨唯野たちはもう一度集まって、今度はAの実家に線香をあげに行くことになった。

 それでもそれ以来、細々とでも交流が続いているので、今ではAが再び引き合わせてくれたのではないかと、峨唯野はぼんやりと思っていると語った。

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