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携帯小説

作者: チグ

「あー面白かった」

俺はスマホを机に置き、ベッドに飛び込んだ。俺の趣味は読書だ。特に最近は携帯小説というものにどっぷりハマっている。そこのサイトに顔を覗かせると様々な世界をタダで見せてもらえる。流石に金を出さずにこんなものを読ませてもらっているのも申し訳ない気もするがタダでいいって言うんならありがたく見せてもらうことにしている。



その携帯小説のサイトには1つ噂話がある。聞いた話によるとこうだ

「1人である小説を読むと自分の身にも同じことが起こる」

そもそも2人で携帯小説読むことねえだろ。条件の時点でどうせ馬鹿な奴がでっち上げた話なのだろう。何故この話がこのサイトの看板レベルにまで有名になったのだろうか。相当ユーザーが馬鹿なのか実は本当の話なのかの2択だろう。もちろん後者である確率は某関西球団同士が日本シリーズで当たるぐらい低いだろうが。

そのある小説というのは所謂ループものでその世界にいつの間にか自分が引き込まれるようになってしまうらしい。怖いな。

まぁそんな訳で俺はもう夜も深いので今日は睡眠に入った。



朝か昼か夜か分からない、どこかも分からない部屋で俺は目を覚ました。あれ、昨日俺何してたっけ。そんな事を思っていると部屋に設置されてあったテレビの電源が入り、何の意味もない砂嵐が姿を現した。俺は黙ってテレビを見ているとその砂嵐は消え去って謎の男がテレビに映っていた

「よぉ、楽しんでるか」

「は?何言ってんだ。ここはどこだ。お前は誰だ」

「はぁお前も分かってねえのか。まぁいいや」

「なんなんだよ一体」

「とりあえず先に自己紹介をしておく。僕はこの世の人間ではない。ここはお前らが普段読んでる日本神話で言う隠世だ」

「お前その言葉遣いで一人称僕かよ。んで日本神話なんて読まねえよ」

「一々うるせえな。簡単に言うとあの世だよあの世」

こんなことを言ったが隠世ぐらいは分かっている。しかし隠世とは死んだ人の行く世界であって永久に変わらないと言われている聖域だ。そんな隠世がこんなリビングみたいな場所でいいのか。日本神話作ったやつ細かい設定サボっただろ。俺はこう男に聞いた

「お前は何がしたい」

「そうだな。お前には今からあるムービーを観てもらう。」

「隠世の人間が横文字を使うな」

「うるせぇ。流すぞ流すぞ」

「勝手にしろ」

そして映像がテレビに流れ始めた。俺の過去の思い出だった。楽しい思い出は何一つない。トラウマに近いような思い出ばかりだ。

「お前は現世(うつしよ)でこんな事ばっかしてたのか。この流している映像がお前がここに来た理由だ」

そのトラウマというものはどれも自分が悪いものばかりであった。昔から人の迷惑ばっかかけてきて反省をしたフリをしてまた同じことを繰り返していた。しかしそれは昔の話だ。今はもう反省して社会人として社会に貢献している。だからこそ学生の頃の自分は俺にとっては捨てたい過去で仕事の同僚や上司にもその話はしてこなかった。

その映像は痛いところばかりついてくる。もうやめてくれ。俺はそう思うことしかできなかった。目を何度も逸らそうとした。しかしその度に

「お前はまた現実から逃げるのか。過去と向き合わねえとこれからどうなるか知らねえぞ」

これからというのはもちろん俺がこの世に戻れるかこのままあの世行きかということだろう。俺はまだあの世には行きたくない。戻るためには自分の過去と向き合わなければならないそうだ。



やっと映像が終わった。俺の顔はもう鏡で見てられないような外見をしていただろう。後悔と自分への情けなさとで気持ちがいっぱいだった。

「どうだ、反省したか」

「反省なんか社会に出る前に死ぬほどしたよ」

「してねえからこうやって呼ばれてるんだよ。僕の前に来る奴にそんな事を出来るやつはいない」

「んなこと言われたって…」

「お前には1つ課題を与える。文を書け」

「は?何を言ってる」

「文を書くんだよ。この体験を書くんだ。そしてお前がいつも読んでいた携帯小説のサイトに投稿するんだよ」

「なんで俺が」

「お前がここにいるからだよ」






その後、男がどうなったかは誰も知らない。もうここに戻ってきているのかもしれないし戻ってこれなくなっているのかも知れない。


ところで、今、あなた、もしくはあなた達は何人でこの文を読んでいるだろうか

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