表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/26

始まり

説明会です。

「いらっしゃいませ。【Folks of Epic】へようこそ。チュートリアルとキャラクタークリエイト、どちらから始めますか?」

「キャラクタークリエイトからお願いします」


 そう言うと、眼前にクリエイトメニューが表示された。

 最初のタブに表示されているのは種族の選択だ。

 ヒューマン、亜人、獣人の三種類が選択肢に出て、その下に妖精と表示される。

 ……妖精だったか。

 四番目の選択肢は天使や悪魔、吸血鬼などといった所謂レア種族が一つだけ表示される枠で、今回表示された妖精はピーキーな種族が多いレア種族の中でもより一層ピーキーな種族で、第三希望の種族でもあった。

 ちなみに第一希望はお狐様で、第二希望が天使か悪魔である。

 500FoEポイント(500円)を使うことですべてのレア種族を選択可能となり、全てのプレイヤーは初期ポイントとして500FoEポイントを運営から付与されているので解放しようと思えば解放できるのだが、出来ればこのポイントは別のものに使いたいので妥協して妖精を選択することにする。


 妖精を選択すると、次は初期装備の選択へ移る。

 が、妖精は初期装備を装備できないので売値が一番高い大剣と大盾、重金属鎧を選択する。

 初期装備が選び終わると、最終項目のスキル選択に移る。

 ちなみに選べるスキルは一つだけである。

 お狐様なら【呪術】天使なら【光魔法】悪魔なら【闇魔法】を選ぼうと思っていたのだが、妖精になってしまったものは仕方ないので【魔力放出】を選択する。

 というか、妖精を使う場合初期でこれを選ばなければ何をするにも常人の数倍は時間がかかるようになってしまう。


 そして、キャラクタークリエイトが終了した。

 アバターエディットへ移る。

 アバターはお狐様になることを前提に設定していたので軽く変更を施す。

 セミロングにしていた髪を足元まで伸ばし、色を透明度の高いエメラルドグリーンにする。

 ちょっとツリ目がちに変更していた目を元に戻し、瞳の色も透き通るようなバイオレットブルーにして完成。


「チュートリアルは行いますか? なお、チュートリアル報酬などはございません」

「ベータテストから追加されたところはある?」

「チュートリアルに追加要素はございません。その他情報は公式サイトをご覧ください」

「ならいいや。スキップスキップ」

「了解しました。それでは、【Folks of Epic】をお楽しみください」



 初期設定空間から転送された先は、巨大な建物が並び立つファンタジー空間だった。

 背後にある噴水は直径30メートルはありそうで、左右に並び立つ建物は窓の数からして一階建てにも関わらず20メートル以上はありそうだ。

 まあ、体感なんだけどね。


 【Folks of Epic】での妖精は身長15センチほどの種族である。

 しかし、リアルの体との齟齬をなくすために身長や体型を弄るのは極力避けたい。

 そんな結果生まれたのが、リアルの体の大きさはそのままに、周りの風景をn倍すればいいじゃないという発想だ。

 リアルの身長が150センチならば周りの風景を10倍にしてしまえば縮尺15センチ相当ということである。

 周りの人間も巨人にしか見えないため、【魔力放出】を使って飛行し、建物の屋根に移動する。

 これで踏まれることはないはずだ。

 左手首の腕輪をつついてメニューウィンドウを呼び出し、ステータスを観覧する。


――――――――――――――――――――――


PN『ルフレ』

種族『妖精』

スキル

【魔力放出】


――――――――――――――――――――――


 相変わらずしょぼいステータスウィンドウだ。

 このゲームではHP(生命力)MP(精神力)ST(持久力)の実数値が表示されず、各バーによるパーセンテージ表示であり、筋力魔力といったステータス、装備による能力値補正などが全てプレイヤーに表示されていない。

 ついでにレベルもない。

 スキルレベルはあるがスキルレベルはプレイヤーに表示されない。

 ステータスはスキルを装着して鍛えることで上昇するが、そのスキルでどんなステータスが向上するかは知らされない。

 さらにベータテスト時代の検証班からの情報では、筋力系ステータスでも複数の分類があるし、耐久系ステータスでも複数ある。

 技量系でも、速度系でも、魔法系でも然りだ。


 妖精の攻撃手段となる魔法系ステータスは『神力』『魔力』『呪力』『妖力』『霊力』などがある。

 といってもプレイヤーがつけた名称で公式のものではないのだが。

 しかし、魔法系ステータスがお互いに不干渉な訳ではなく、魔法系のステータスが高ければ基本的に魔法の威力は高くなる。

 ステータスが分けられてるとはいえ、その実態は【呪術】はほかの魔法系ステータスと比べて『呪力』補正が高いといったようなものだからだ。

 同一ステータスで計算するスキルを揃えれば威力が高くはなるが、『魔力』で計算される【火魔法】と『呪力』で計算される【呪術】を持っていれば魔法系ステータスの総量が上昇するため結果的に効果は高くなるのだ。


 そして妖精は『霊力』に特化した種族である。

 ()精なのに()力じゃないとかもう種族名『精()』にしたらいいんじゃないかと思う。

 妖精の特化ステータス説明ついでに妖精の説明をすると、まず体がとても小さい。なので回避力が高い。

 反面物理攻撃に当たったら即死と考えて良い。

 体が小さいので装備に使う素材が少なくて済む。

 反面ステータス補正は低いし、一般的な装備は使うことが出来ない。

 体が小さいので細かい作業ができる。

 反面歩幅は小さいし大きなものは動かしにくい。

 【魔力放出】を最初に選んだのは移動の不便を解消するためでもある。

 体が小さいので【魔力放出】で飛行が可能である。

 反面風などで吹き飛ばされる。

 体が小さいので物理攻撃力は全種族中最低ランクである。

 反面魔法系ステータスが軒並み高く、魔法耐性はトップクラスである。

 

 レア種族はメリットとデメリットの二面性があり、その中でも妖精は特にそのメリットとデメリットが大きなものである。


 因みに【魔力放出】は魔力と名前についているが、『魔力』補正が高いスキルではなく魔法系ステータスを満遍なく上げるという検証結果が出ている。

 なかなか難しいものだ。


 ステータスウィンドウを閉じて、スキルを習得しに行くことにする。

 スキルを増やす方法は基本的に街のスキル屋さんからスキルアイテムを購入することである。

 スキルアイテムは『【スキル名】の〇〇』という名前で、書だったり巻物だったりオーブだったりと色々ある。

 これで大体のステータス上昇傾向が分かるのだ。

 ちなみに魔法系はオーブ系列である。

 そしてオーブにも色がついていて、その色で大まかな詳細ステータス上昇傾向が分かる。

 霊力は水色系だ。


 道中の武器屋、防具屋で初期装備として選んだ装備を売却してお金を作り、【魔力放出】で吹き飛びながらスキル屋さんに向かった。

 道を無視して移動できたことにより、少し無駄な時間を使ったとはいえ一番乗りであった。

 【精霊魔法】のオーブと【錬金術】のオーブ、それから【無属性魔法】のオーブを購入する。

 それぞれ『霊力』系、均等系、『魔力』系のスキルだ。

 このゲームでは生産系のスキルはとても高い補正値を持つとされ、スキル枠を潰してでも戦闘系プレイヤーもひとつは取得するべきと言われている。

 『霊力』特化である【精霊魔法】の補正が、『霊力』に2、ほかのステータスに1とすると、均等系で生産系の【錬金術】はすべてのステータスに1.4くらいの補正がかかると考えていいだろう。

 総合補正量は生産系スキルの方がダントツであり、それにより魔法の威力も大きく上昇するという仕組みだ。

 因みに【無属性魔法】を購入したのは【魔力放出】と相性がいいというのと、【精霊魔法】でカバーできない無属性を扱えるスキルの中で使い勝手がいいスキルだからという理由である。

 

 すべてのスキルを有効化して、スキル屋さんを出てマジックアイテムや、魔法使いの杖などが売っているお店へと移動する。

 売っているアイテムが軒並み高いということから人はいないようだった。


「いらっしゃいませ」


 いかにも魔女ですといったトンガリ帽子とローブを着た店主がお店に入ると話しかけてくる。

 スキル屋さんは無口だったからそこまでだったけど普通に話す巨大な人は少し怖いな。

 初期装備をすべて売却したことにより潤沢な資金を使って安いクリップ式の指輪を購入する。

 これは指にはめるものではなく腰につけるものだ。

 一応装備による補正はつくはずなので問題ない。

 そして、この買い物でほとんどお金を使いきった。

 アイテムを買ったことによりクエストフラグがたち、クエストを受けられるようになった。


「妖精さん。良かったらこの水晶に精神力を込めていってもらえないかしら? 私だけのものより妖精さんみたいな良い魔法使いの精神力を込めた方が良い品になるの。もちろん報酬は用意するわ」


 クエストウィンドウが左手首の腕輪から出現し、受けるかどうかを聞いてくる。

 受諾を選択し、30センチほどの(自分の倍くらいの)水晶に両手を当てて精神力を込める。

 右手首の腕輪に表示されている青色のバーがみるみるうちに減っていき、残り一割となったところで店主さんから終わりと告げられる。

 クエストクリアだ。


「あら……とても綺麗で濃厚な精神力ね。うっとりしちゃいそう。報酬は【精神力回復】のオーブとマジックポーションでいいかしら?」

「オーブだけでもいいくらいですよ。ありがとうございます」


 実際目的はオーブだったのだからポーションはなくてもいいくらいだ。


「妖精さん、良かったらもうちょっと水晶に込めていかない? 勿論報酬はしっかり用意させてもらうわ」


 再び左手首の腕輪にクエストウィンドウが表示される。

 あれ? ベータテストの時にこんなのあったっけ?

 正式版からの追加か特別派生かな?

 綺麗だとか濃厚だとか言ってたしそれかもしれない。

 受諾を押すと、店主さんがマジックポーションを持ってきて栓を抜いた。


「それじゃあ妖精さん。私のお手製ポーションをどうぞ」


 どうぞって……インベントリに仕舞って使用するのが基本じゃあなかったっけ?

 しかしどうぞって渡されたものを仕舞ってボタンひとつで消費するのもためらわれる。

 無属性魔法でストローをつくり、自分と同じくらいの大きさのビンの上に乗ってポーションを飲む。

 不思議なことにポーションの中身はどこに行ったんだというレベルですべて飲み込むことが出来、さらに不思議のことに右手首のMPバーを見れば全回復している。

 初級マジックポーションだと10本くらい使わないと空から満タンにならないんじゃなかったっけ?


「これ、高級ポーションだったりします?」

「そんなことないわ。薬屋さんに並ぶような大量生産ポーションと比べると質はいいと思うけど素材は下級ポーションのものよ?」

「でも、精神力が全回復してますよ?」


 いくら質が良いと言っても10倍の効力がある訳では無いだろう。


「それは妖精さんの体が小さいからじゃない。知らなかったのかしら?」


 たしかに10分の1スケールとなっている今、ポーションが10倍の効力を持つというのもわからなくはない。

 でもベータ時代にはそんな話聞いたことなかったし、体が大きい人にポーションの効きが悪いということも聞いたことがなかった。

 となると、これも正式版からの変更点なのかもしれない。

 ベータ時代には妖精の人口はそこそこいたけど検証をしたり積極的に行動をしたりしている人がいなかったから情報が少なめなんだよな……。


 まあ、有利に運ぶなら問題は無い。

 水晶に精神力を注ぎ、ポーションで全快しと3回繰り返すとクエストクリアとなった。


「はい、ありがとう妖精さん。報酬は……そうね。妖精さんの力を強める指輪にしましょうか。サイズも自動で調整されるエンチャントがついているから妖精さんでもきっと装備できるわ」


 サイズ変化のエンチャントもベータ時代には聞いたことがないな。

 そもそもエンチャントは装備に一つだけ、多くても二つというのが限界だったし、サイズ変化のエンチャントをつける枠がなかったのかもしれない。

 少しして店主が持ってきたのはとても綺麗な指輪だった。

 輪となっている部分が細く、実寸大で直径5ミリほどの小さな宝石がひとつ付いていた。


「指輪自体は聖銀が使われている魔法使い御用達の指輪ね。くっついている宝石はエリミネイトって宝石よ」


 聖銀の指輪ってかなり先の装備だった気がするぞ?

 ベータ初期は良くても金の指輪だったはずだ。

 エリミネイトって宝石は聞いたことがないな。


「エリミネイトっていうのはね、ルビーとかサファイアの仲間よ。ルビーとサファイアが同じ鉱石ってことは知ってるかしら?」


 昔聞いたことがある気がする。中に含まれている元素が違うと色が変わるとかなんとか。


「エリミネイトは自然の魔力をとても強く含んだ宝石ね。ルビーやサファイアと単純な比較は難しいけど妖精さんが使うなら数倍はいい宝石のはずよ」


 自然の魔力というのがプレイヤー達がいう『霊力』のことかな?

 というか元素が云々って話じゃないのか。


「自然の魔力がこもっているからとても綺麗な緑色だし、精霊たちとの親和性もとても高いわ。だから妖精さんにはピッタリのはずよ。付けてみて?」


 指輪を受け取ると、指輪が指サイズまで小さくなり、ピッタリと中指に嵌った。

 このピッタリ具合なら不意に落とす心配はないだろう。


「石言葉は純粋、排除、守護、拒絶、清浄、自然の恵み。ちょっと怖いけど簡単な話、持ち主を守ってくれるって事ね。指輪も妖精さんを持ち主と認めたみたいだし、きっと守ってくれるわ」


 【鑑定】系のスキルは持っていないから詳しいことはわからないけど何となく『霊力』が高まった気がする。


「ありがとうございます。でも、こんなすごいもの貰ってもいいんですか?」

「問題ないわ。私は精霊魔法が苦手だから、きっと妖精さんが持っている方がいいはずよ。そうね……。妖精さんが納得出来ないっていうならこれからもウチを贔屓にしてくれれば十分よ」

「わかりました。といってもこの大きさだとなかなか使えるものも限られるので消耗品の購入になるとは思いますがお世話になります」

「高いものになっちゃうけど、サイズ調整のエンチャントがかかってるものも用意してあるからお金ができたらいらっしゃい。後悔のない買い物をさせてあげるわ」


 MP回復速度をあげるスキルを取りに来ただけなのに随分といいものが貰えたな。

 そろそろフィールドに出るとしようか。


――――――――――――――――――――――


PN『ルフレ』

種族『妖精』

スキル

【魔力放出】【無属性魔法】【精霊魔法】【錬金術】【精神力回復】


――――――――――――――――――――――

装備

頭 無

胴 無

手 無

腰 指輪

腰 無

足 無

アクセサリー 聖銀の指輪 (エリミネイト)

――――――――――――――――――――――


左手首の腕輪

メニューウィンドウを呼び出すための装備。

適当に触るとメニューが出る。


右手首の腕輪

HPMPSPバーが表示される腕輪。

戦闘中にじっくり見てる暇はないので管理は感覚で行おう。



聖銀

ミスリルのこと。なんかめっちゃ魔法との親和性が高い。


エリミネイト

多分オリジナルの宝石。

超緑色。


妖精

周りのものが大きくなってるように見える。

一般人が妖精を見る時は普通に15センチくらいのちっさい生き物。


Folks of Epic

一般人の叙事詩のような物語とかそんな感じ。

君だけの物語を!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ