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血濡レノ瞳  作者: 柊木 慧流
1章 『始動』
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第1話 剣の舞

第2章スタート!

第2章では、世界設定をメインに20~30話程投稿していきたいです。

拙い文章ですが、感想、レビュー、アドバイス等宜しくお願いします。

───1章『始動』───


───カキイィィィン!!!


石剣が宙を舞った

鉄剣程ではないが、それなりに重量はあるはずだ。

それが、軽々と飛ばされた。


「もう少し前に踏み込まないと、さっきみたいに剣が弾かれる」


そう言って色黒禿頭の男、戦闘指導者であるリョーダン=ベルドリンドが見本を見せる

リョーダンが体を倒れ込むように前のめりになった瞬間、


───ダァンッ!!!


目にも止まらぬ早さで踏み込んだ

呆然と立ち尽くすソランの首には、石剣が添えられている

また、負けたのだ。

彼の動きに追い付けなかった。立ち尽くしているしかなかった。


「分かったか、分かったらもう一度やって今日はお終いだ。」


「ハイッ!」


頭を横に振って負に沈みかけた思考を取り戻す

ソランはまた石剣を持ち直し、強く握るとリョーダンへと向かっていく


「ハァァ!!!───」


─────────────────────


「リョーダン、今いいか?」


「姫さん、どうしたんで?」


ソランの剣術の稽古を終えたリョーダンにアトラが聞いた

見た感じ散歩がてらソランの様子を見に来た所の様だが。


「ソランの調子はどうだ?うまくやっているか?」


「そうだな、あの位の子供の上達速度からすると順調ってところですかな」


ソランがリョーダンから剣術を教わりはじめてから1ヶ月

ソランの剣術は、思ったよりも順調に上達していた

この世界の剣士ソードテイマーには位があって下から

剣士(上級、中級、下級)

剣師

剣王

剣帝

剣皇

剣聖

剣神

の称号がある。

剣士ソードテイマーの中には、極稀に『剣印』と呼ばれる紋様を持つ者が居る。

『剣印』とは、3つの爪痕のような形で、身体のどこかに発現するものだ。

因みにアトラは3歳の頃に発現していて、臀部の上の方に紋様が見られる。

『剣印』は先天的にも、後天的にも発現し、発言した者は身体能力が上昇したりといった効果がある。

それ故に、位の上りが早い。

現在、ソランは中級剣士、リョーダンは剣皇、アトラは剣帝である。


「そうですか、それは楽しみですね。」


「ですがねぇ」


リョーダンが顔を曇らせた

ソランの剣術に何かが問題があるのだろうか。

アトラは、ますます不安になってきた


「いや、アイツに問題がある訳じゃない・・・事もないな。

アイツ、あの戦争で大切な人を失って、やっと立ち直れたじゃないか。

その誓いを守るために負のエネルギーで強くなろうとしてんだ」


「で、でも、それで強くなれているなら、いいのではないか?」


「それが、問題なんだよ。不安定な心で力を付け続けていたら、いつか崩れて戦えなくなっちまうんだよ。いつかの俺みたいにな。」


───最底辺で何もできなかった人間が、強くなるための支えとして心に残るのは紛れもない復讐心だ。


ソランを気遣うアトラに、リョーダンはそう、キッパリと語った

それを聞いたアトラもまた、不安定な心がどれだけ脆いか、様々な戦場を駆け抜けてきたが故にわかっていた


「アイツ自身の心を安定させなければ、これ以上前に進むことはできない」


「ソランには、それが出来るだろうか?」


「今のアイツにはなんとも・・・」


廊下内にしんみりとした雰囲気が漂う

それに痺れを切らしたリョーダンは話を切り替える


「それはそうと、ソランには会わないのか?」


「すっかり忘れていた、今ソランはどこに?」


「ああ、ソランなら自分の部屋に居るぞ」


「少し話をして来る」


と、アトラがソランの部屋へと行こうと踵を返すその時、


「姫さん、1ついいか?」


「どうした?」


「姫さん・・・アンタはどうしてソランを助けてんだ?」


『戦姫』アトラティーナはアルステラ王国の第3王女として生まれた

アトラティーナは、生まれつき『剣印』を持っていたため3才から剣術を、アルステラ王国直属の戦闘指導者であるリョーダンが仕込んでいた。

流石は『剣印』を持つ者、若干15歳で階級は剣帝、『戦姫』と呼ばれるに至った


「そんなアンタが何故、そこらにいる奴隷なんかの夢の手助けなんかしているんだ?」


そう問いかけた


「それは・・・」


アトラは顔を少し赤らめながら


「あの時聞いたソランの決意に胸を打たれてしまったから、だな」


そう言って優しく微笑んだ

そして強い意思を込めた瞳でリョーダンを見る


「この感情、よくわからないが、どうやら私はソランに恋をしてしまったんだと思う」


それを聞いたリョーダンは苦笑いする


「夢の手助けをするのはいいが、あんま無茶するなよ」


そうは言っているがリョーダンも内心では、とても喜んでいるのだった

3才から男達と剣術に打ち込んできたアトラは男より男らしい少女に育った

そのため、城内の者達からは、将来独り身だろう、と囁かれてきた

リョーダンはアトラをすぐ近くで見てきたため、あと3年で成人、本当に独り身になってしまうのじゃないか、と心配していた


「まだ付き合ってもないが・・・恋をしたと姫さん自身が理解しているなら取り敢えず一安心か」


ソランの元へと駆けていくアトラの背中を暫しの間眺めながら思うのだった




ソランの部屋は鍛錬場の右の廊下、アトラがリョーダンと話していた廊下を北に進み、つきあたりのT字になっている廊下を更に左側に曲がったところにある3つ目の部屋だ

ここはアルステラ城内のため、兎に角部屋数が多い

ソラン自身、何度か迷ってしまいそうになったことがある

その部屋の中で、ソランは今日の鍛錬を振り返る


「こんなんじゃ駄目だ、誰も守ることはできない。

もっと、もっと強くならなくちゃ。」


駄目だ。またミリアの時のように、大切なものを失ってしまう。

やっと手に入れた居場所だ。

簡単に失ってたまるか。

ソランは、自分の心が何か黒いものに沈んでいくような感覚を得た


───コンコンコン


扉を叩く音にソランは思考を止めた


「ソラン、中に居るか?

入ってもいいか?」


アトラだ。


「大丈夫、入っていいよ」


「そうか。それでは失礼するぞ。」


ガチャリ、という音を立てアトラが入ってくる

城の中だというのに、戦場の様に鎧をしっかりと着込んでいる

この城に来て早1ヶ月、見慣れては来たが気になってつい聞いてしまった


「アトラはどうしていつも鎧を着ているんだ?」


「あぁこれか。突然何か起きてもすぐ対処できるように私は城の中でも武装を解除しないんだ。

いざ敵が攻めてきたとき、主将である私がすぐ戦えなくては『戦姫』という二つ名に傷がついてしまうからな」


流石は人間族ヒュームの救世主と呼ばれるだけある。

何時、何処にいても油断はしないことを徹底しているようだ。

アトラは、腰に下げているオリハルコンの剣を机に立てかけると、ソランに向かい合うように椅子に座った。


「少し話がずれてしまったな。最近、剣術の調子はどうだ?

うまくやれているか?」


アトラにそう聞かれて、ソランはドキッとした。

ソランもここ何日か剣術の伸びの悪さに頭を悩ませているからだ。

何度やっても一向にリョーダンに勝てる気がしない。

少しの間ソランが押し黙っていると、


「やはりそうか。

リョーダンからも聞いた。最近、強くなることに拘り過ぎているんじゃないか?」


「それはっ、」


───強くならないと、誰も守れないじゃないか。


そう言おうとしてソランは口を噤んだ。

リョーダンにも同じことを言われたからだ。


「強くなるのは確かに大事だ。けれどそれだけじゃ強さの先に行くことはできない。

もし行くことが出来ても所詮付け焼刃。諸刃の剣でしかない。」


それはそうだと思う。しかし自分には他に何が残っているというのだ。

目に進むための翼を失って、大切な人を失った。

もう何も失わないために、強くなるしかない。

もう、ソランの心のよりどころは力しかなかった。


「いいか。君も何か守るべき大切なものを見つけるんだ。

そうしたら、君はもっと伸びていくと思う」


「そうかな?」


「あぁ。ソランならできるさ。

リョーダンだってそう言っていたよ。」


アトラは胸を叩いて微笑んだ。

そして、自身の胸においている拳を前に出すとソランの胸をドン、と叩いた。

アトラの拳は力強く、そして優しさの籠った拳だった。


「直ぐには難しいかもしれないけど、少しずつでもやってみるよ」


「私もできる限り応援しよう」


アトラが立ち上がる

どうやらもう行ってしまうようだ。

アトラも王女である身、何かと忙しいのだろう。


「私も少し職務があるのでな。

私はここでお暇させてもらおう」


「今日は、ありがとう」


「あぁ、鍛錬は怠らないようにな」


そして、アトラは部屋を後にした。

自分の部屋に一人残っているソラン。

ベッドに横になると、窓から空を見た。

空はいつの間にか薄青くなっており、星が点々と輝いている。


「守りたい大切なもの・・・か。

ミリアはもういないしな。見つかるだろうか・・・」


小さく呟くいた。

そういえば、何時かミリアに出会った時も今と同じ宵時だったな。


「なぁミリア。あれから一ヶ月以上たった。

今はうまくとは言えないが、何とかやっているよ」


「明日は魔法の授業だ。鍛錬は怠るな。」


時は宵。空には月だけでなく、三日月が昇っていた。






ソランの部屋の外、その扉の前。

そこには、一つの人影があった。

アルステラ王国第3王女、アトラティーナ=ルール=アルステラ彼女だった。

アトラが出た後のソランの呟きを覗き聞きしていたのだ。


「やはりまだ立ち直れ切れていないか」


それもそうだろう。だってまだ9歳なのだ。

心の傷がすぐ癒えるほど心は強くなっていない。


「ソランがまた大切な物を見つけるまでに折れてしまわないかは神のみぞ知る、ということか。

私達は祈るしかないんだな」


───なんて不条理の多い世界なのだ、此処は。


そう言って、アトラは自室へと帰っていった。




今作を書いてから思ったんですが、リョーダンは前回登場したとき斧を持っていたんですけど、実は剣皇級の剣の使い手だったんですね。


今回ソランの戦闘シーンをしっかり書こうとしましたが断念しました。

・・・道はまだ長い!


あと、閑話を書こうと思ってたんですが、あまりうまくいかなかったのでなしにします。ごめんなさい。    

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