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初恋の味

作者: 新村彩希



 恋って難しいんだ。メリット? あるのかな。

 だって辛いことばかりだし、悲しいことばかりだし。


 

 そうかもしれないね。でもね、人を愛することって言うのは、

 どんなことよりも、最高に輝いていて、幸せなことなんだ。

 太陽みたいに、温かくて、宝物になるものなんだ。

 だから、もし愛する人ができたら、後悔は、しちゃダメだ。



 へえ。そうなんだ。



 うん。僕は、愛する人にもう会えないから。



 え、なんで?ていうか、好きな人いたんだね。



 いるよ。……ねえ、知りたい? 僕のこと。



 知りたい知りたい。


 

 もしこの話聞いたら僕消えるんだけど。



 ……え? 消える?


 

 この話を他人に話したら、かな。僕の存在は消える。おまけに、僕が存在したとい記憶も人々から消える。僕は無になる。それでも、聞いてくれる?



 え、私は嫌だよ。あなたがいなくなってしまうの。



 僕は聞いてほしいんだ。懺悔。させて。



 あなたはそれでいいの? 消えてしまっても。


 

 いい。それくらいの罪を犯した。だから聞いてくれない?



 そこまでいうなら良いけど。……だったら、私、思い出すよ。あなたのこと。

 知ってる? 記憶は忘れていても、魂は変わらないから、魂だけは、忘れた記憶を全部覚えてるんだって。だから前世を覚えてる人もいるらしいよ。だから、だから、忘れちゃっても、それを道しるべに、思い出してみるよ。



 ありがとう。そう言われて、少し心が軽くなったよ。僕ね、実はーーーー。


 

 人を殺したんだ。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 「早奈子、早奈子起きてよー! 寝んな!」

「痛ぇ! 叩くことないでしょう」

「そうでもしないと早奈子起きないし」

「普通に起こしてくれたら起きるよ!」


 なんか長い夢を見ていた。懐かしい夢。でも、何が懐かしいんだろう。


 「早奈子、あんたさ、初恋の味って覚えてる?」

「……どうしたの急に。暑さで頭もおかしくなったか?」

「かもしれない。ああ、今日は本当にくそ暑いなー」

「否定しないんだ……」


 八月、まっ昼間。つい先月、二十歳になり大人の仲間入りをした私、早奈子と親友の真奈は、早い時間ながらも私の家で宅飲みをしていた。

 しかし、生憎私の家にクーラーはない。勿論、経済的な理由で、だ。大学生で独り暮らしをしており、バイトと親の仕送りで食いつないでいる私にはそんな余裕はなかった。

 

 でも真奈がどうしても家で飲みたいというから、こんなサウナみたいな中酒をつまみと共にばがば飲んでいるのだ。店で飲みたかったのに、と言い訳すればきっと鉄拳が降ってくるだろうから何も言うまいとさっき心に決めた。



 「で、話を戻すけど。覚えてるの?」

「は? 覚えてるわけないじゃん、何年前だよっていう話になる」

「そっか。そうだね。早奈子はオタクだし初恋は二次元のキャラクターに……」

「ぶっ殺すぞてめえ」



 酔っぱらいに話を進めろというのは無理なことで、戻したわりにはまた脱線してしまう。


 

 「え、なに。デートしたいとか思ってるの」

「だからどうして私が二次元に恋をしているという前提で話を進める」

「面白いじゃん。最近夢女子とか流行ってるんでしょ、あれってどうなの」

「やめよう。オタク話をやめよう。さっきの甘酸っぱい雰囲気はどこへ行ったんだ」

「おっとー、そうだったね。すまんすまん。話を戻しましょう。」



 そこで真奈はビール缶を開けて、おそらく三分の二位を一飲みした。

 酒臭い口でため息をついて、一瞬項垂れる。そしてシャキッと背筋を伸ばすと、見たこともないような澄んだ目でこちらを見つめながら話始めた。



 「私の初恋は幼稚園の頃だったからね、恋っていうよりも愛だった」

「急に話を戻すな。ついていけないよ。……って、初恋早いね。ませてるなー」

「いや、最近多いらしいよ? 幼稚園で恋しちゃう子。私みたいにさ」

「その恋は叶ったの?」

「まさか。その時は恋だの愛だの分からなかったからさ、ただただ好きでいた。見てるだけで幸せで、心が満たされる。そんな恋だよ。キラキラしてて、甘くて、ただ甘くて。ラメがかかってる、ピンクの、イチゴ味。飴みたいな味」



 少しだけ、真奈の想像力に驚かされる。何だ、飴みたいな味の恋って。でも、ちょっと想像できてしまうから悔しい。



 「私は、あまり覚えてないんだよね」

「へえ。でも、恋はしたんだ」

「そりゃ二十年も生きていれば一回くらいはあるよ。その一回きりだったけどさ」

「じゃあ今のところその初恋が最後にした恋なの?」

「そういうことになるな。……高二だった。だいたい真奈と仲良くし始めた辺りかな。もっと前だったかな……? すごい好きだった。全部好きだった。熱に浮かされてた」

「ほう。真剣ですな」

「でもね、全然覚えてないの。顔も、性格も。身長も、声も、何もかも」

「……えっ?」

「可笑しいよね。覚えてるのは、好きっていう事実と、最後にくれた言葉だけ。あと、太陽みたいな人だったなってことくらいかな

 味なんて、そんな。覚えてないな」



 真奈は驚いたように早奈子を見つめた。真奈は酔いが醒めたのか、さっきよりも視線が真っ直ぐ届く。

 そして口を開いては閉じて、を繰返し決心したのか恐る恐る聞いてきた。



 「もしかして、まだ引きずって……?」

「はあ? ないわー。あり得ないよ」

「う、そうだよね。ごめん、勘違いしてたわ」

「何を?」


「だって、彼のことを話してる早奈子全身から、幸せオーラが出てたから」


 一瞬ポカンとする私。幸せオーラ。幸せ、オーラ。

 だんだん意味を理解してきて、そんな言葉ももう使われなくなったな、と他人事のように思った。そして、そんな言葉を使っている真奈に、自分が、少しずつ、じわりじわりと笑いがまわっていくのを覚えた。



 「……語彙力……っ」

「ちょっと、笑わないでよ! はあ、良いですよ、良いですよ! どうせ変な心配してる私は笑われるのがお似合いですよ」

「違うって! ありがとう、心配してくれて。でも、大丈夫だからさ」


 

 笑顔を取り繕って、そう答えると、真奈は安心したようにため息をついた。


 

 大丈夫じゃない。

 体が、エラーサインを警告している。急にだ。忘れてはダメだよ、思い出して。そう、警報が出ている。恋は忘れてはいけない。人生だから。精一杯の命の輝きだから。

 でも、知らない。恋なんて、知らなかった。忘れた。禁じられた。

 本当に、真奈は素直すぎる。こんな私に、コロッと騙されてしまうなんて。将来が心配だ。と言っても、もう大人だけど。

 ちょっと不器用なところもあるのだ。臓器とか売られたりしないかな。まあ強いから大丈夫か。



 「……で、壮大な前フリは置いといて、なんかあったんでしょ、真奈さん」



 そう、不器用な彼女は基本的ツンデレだ。ツンデレ? クーデレ? はあ、もう死語だね。私も歳だね。真奈はそのツンデレとクーデレのあいだくらいの性格だ。


 「やっぱり、気づいてしまいますか」

「気づくわ! いくらなんでも、そんな質問普段しないでしょう?」


 再び酔いが回ったたどたどしい呂律に、思わずツッコミをいれてしまう。

 ふにゃりと笑った滅多に見せないデレ真奈は、まるで中身が抜けたように芯がない。さっきの酔いが醒めたのはどうした。


 「ラブレター、もらったんだよね」

「……は?」

「サークルのね、後輩の男の子に。可愛いんだよ、真奈さんが好きですって」

「……え、ちょっと待って。嘘でしょ。信じられないんだけど」

「嘘じゃないよ。本当だよ」



 今度は私の酔いが醒める番だった。あの真奈が? あのゴリラが?



 「でね、私は別にその彼が好きなわけではないんだ。でも、可愛いなって思って。私に好きな人はいないし、どうしようって」

「え、どうしよう、って、」

「付き合った方がいいと思う?」

「……いや、自分で考えなよ」

「それができないんだから早奈子に相談してるんじゃーん。だから初恋の味とか思い出してもらって、アドバイスを活かそうと思ったんだけど、早奈子覚えてないって言うんだもん。びっくりだわぁ」

 


 いや、てめえの話なんぞ知らんわ。ていうか私のせいにされても。まあいいや。今の彼女に何を言っても伝わらないだろう。話を聞いてあげようじゃないか。



 「真奈は? 付き合いたいの?」

「うーん、よくわからない」

「じゃあ、昔の男とかは? 今、言い寄られたら付き合いたい?」

「それはない」

「じゃあ、その男の子について質問するね。その男の子の印象は?」

「イケメンで、顔が整っている。高身長。頭がとてもいい」

「……性格は?」

「優しい。本当誰にでも優しくする。羨ましい。少しだけ、他の子を妬む」



 もう付き合えよお前ら。

 私は真奈をあやすように頭を撫でた。そして次第にグシャグシャと髪を崩すようにボサボサにしてあげる。



 「ちょっと何するの早奈子」

「一辺外行ってこい。酒の力に頼るようなお前になんぞ用は無い。頭冷やして、一度、もう一度深く考えてみろ。そこに答えはあるはずだ」

「はあ? 何言ってるの、」

「つべこべ言わずに行け。そして酒がなくなったから買ってこい」

 


 私は真奈の体を無理矢理起こし玄関まで連れていくと外へと閉め出した。

 マジで一回考えろ。酔ってるのなら、一回目を覚ました方がいい。

 それが一番のアイディアだ。しょうがない。真奈が鈍いのが悪い。



 「初恋……ね」



 誰もいなくなった空間———元々真奈しかいなかったがーーーに向けてそう呟いた。私は、初恋なんて高校生だったから、遅めなのかな。オタクなのが悪いのかな。

 くだらないことを考えていたが、そんなことを言われては初恋を思い出したくなってしまう。

 

 いつからだ、私がこの記憶に蓋をしてしまったのは。


 ぐるぐると、回らない頭で考える。えーと、えーと、うーん……。



 私は、はっとしたように硬直してしまった。

 無機質に、時計の音だけが鳴り響く。

 窓は開いているのだが、セミの声は見事に耳に届かなかった。


 一つだけ、思い出した。


 きっと忘れることのない、しかし忘れてしまった、しがない初恋の味を。


 「何でだろ……早く帰ってきてよ真奈、何か独り嫌だよ」


 その味は、呼べるものなら、甘く、ほろ苦く、優しく溶けるわたあめのようだった。


 「どうして全部忘れちゃったんだろうなあ」

 

 

 



 暫くして。


 「ただいま。酒は六缶買ってきたけどー」


 あれから三十分ほど経って、真奈が帰ってきた。私はおかえりと声をかける。

 今は四時だ。外は涼しくとも、やはり暑いものは暑い。彼女の首筋が少し汗ばんでいる。

 真奈が私の隣に座る。そういえばこいつ、決めたんだろうか。あれだけほざいて、私に叱咤されたんだから決めただろう。いや、どんな手を使っても決めたと言わせよう。



 「……何じろじろ見てるの。早奈子さんのエッチー」

「そんなんじゃないよ腹立つなあ。で、答えは出たの? 後輩くんのお返事」

「……えっ?」



 真奈はわずかに首をかしげてこちらを見た。あ、これ絶対分かってないやつだ。彼女に気づかれないようそっとため息をつき、静かに話す。



 「ねえ、自分の気持ちに気づいてないの?」

「気づいてないって……。その気持ちが分からないからどうしようって相談しにきたんだけど」

「私がさ、その男の子のこと好きって言ったらどうする」

「え?」

「その子と私が付き合い始めたらどうする」

「……え、それは」

「それは?」



 その瞬間、真奈の顔が一気に赤くなった。そして、何を思ったのか、缶を一個開け、一気に飲み干すと、小さい声で私にこう告げた。



 「嫌かも、しれない」



 一瞬、静寂。

 あ、こいつ、自覚したな!

 ついにその言葉を引き出すことに成功した私は、思いっきりガッツポーズをして、その勢いで真奈を見た。


 

 「いやあ気づかないかと思ったよ本当もうー! 鈍感なんだね真奈って」

「うるさいよ。私だって、その、好きとか、分からなかったし……」

「何言ってんのさ。思いっきり妬いてたじゃん。それが証拠だよ」

「反論出来ないわ……」

「いえーいデレ真奈」

「うっせーわ」



 真奈はまた缶を一本飲み干した。そして、私をじろりと睨み付け、酒臭い口でどんどん言葉を吐いていく。



 「だいたい早奈子はいないの好きな子」

「いないいない。出来ないんだよね」

「ほーんーとーにー? やっぱり引きずってるんじゃないの?」

「ないよ」

「じゃあさ、一個質問するけど。なんで覚えてないの?」



 知らない。自分でも分からない。

 私は、出された疑問は答えられなかった。自分でも分からないのだ。

 彼は、跡形もなく消えてしまった。毎日会っていたのに、さよならも言わず、消えてしまった。

 その時に、私の記憶も、彼と共に消えてしまった。

 だから、理由なんて分からない。



 「早奈子? 聞いてる?」

「ああ、ごめん。なんで、か、私も知らない。気づけば忘れてた」

「えー、恋ってそんなもん?」

「そんなもんそんなもん」



 私は軽く流す。真奈は何だか腑に落ちない様子だった。私はおつまみに手を伸ばす。

 真奈はしばらく何か考えていたようで、難しい顔から、一瞬だけ驚いた顔になると、ハッとしたように私を真剣に見つめた。

 表情筋よく動くなあ。しかし真奈の顔は真剣さから変わることはなかった。


 

「……何」

「私、あの、手紙、貰ったかもしれない」

「何の?」

「早奈子の初恋の人からの手紙」

「……えっ?」

「高校生の頃、……ああ私もあんまり覚えてないんだけど、下駄箱に入ってて、誰からって中身見たら、早奈子さんにはこの手紙を見せないでください。真奈さんだけに伝えます。って。その時は誰だよこいつって思ったけど、あれ、早奈子の初恋の人からかもしれない!」

「……えっ」



 真奈の唐突なカミングアウトに、思考がついていけなかった。

 思わず、顔がひきつる。



 「どうしよう、そうだったら! 早奈子に伝えればよかったかな!」



 真奈は一人で盛り上がっていた。酒も入っているせいか、くるくると転げ回っている。



 「ごめん早奈子」



 いやいや、なんで真奈が謝るの。それは少し違うでしょう。


 

 「なんで真奈が謝るの? そんな必要ないのに」

「だって、もし私が伝えていたらその人と両思いになれたかもしれない」

「いいよ。もう過ぎたことだし。なんで忘れちゃったのか知らないけど、手紙を私じゃなくて真奈に渡した以上、何か理由があるんでしょ。そんな気にしない」 

「でも」

「良いってば。それに、初恋は実らないっていうから」



 私はそう言って軽く微笑んだ。

 

 本当は、ものすごく気にしている。手紙の内容だって、知りたい。

 素直にそう言えば良いのだが、どうしてもそういう風にはなれなかった。

 体のエラーサインは、止んでいた。思い出して、ではなく、もうこれ以上は思い出さないでね、と注意報が出されていた。

 さっきのエラーサインはきっと自分のわがままの気持ちが出てしまったんだろう。思い出したい、という気持ちが。

 でも今回の注意報は自分の気持ちではなく、誰か他人から私の心へ発信されているような気がした。


 それだけで、他の人から発信されているというだけで、彼と過ごした時間は嘘じゃないって言える。他人から、そう言われているのだから。



 「だから、大丈夫だよ」



 真奈は少し泣きそうな顔でこちらを見つめると、思いきったように缶を私に一本差し出した。



 「早奈子も飲め」

「ええ? 無理無理一気飲みは。真奈じゃないんだから」

「良いから。今日の愚痴は、忘れちゃいな?」

「……酔ったら介抱してくれんの?」

「するする」



 正直、私は記憶をぶっ飛ばしたくなっていた。それに気づいてくれる真奈、さすが私の親友。私はビールに口をつけると、そのまま一気に飲んだ。

 さっぱりした味だった。



 この不可解な記憶は、煮えきらないまま、きっと墓場まで持っていかれるのだろう。

 でも、あなたの言葉、ひとつだけおぼえているんだ。



 人を愛することはどんなことよりも最高で幸せなことなんだ。ってこと。



 あなたは誰なの。あなたは何で記憶を封じたの。聞きたいことはたくさんあるけど。

 夢に出てきてくれて、ありがとう。少しだけ、思い出した。

 あなたは、あなたは、優しくて、頼りになる人だった。

 でも、きっとこんな難しい言葉じゃあなたには伝わらないね。

 一言言わせてもらうよ。


 愛していました。ありがとう。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 僕は前世王様で、結構好き放題してて、奴隷をいっぱい殺しちゃったんだ。



 ……まじか。



 人間ってね、死ぬと生まれ変わるか天界で生きるか決められるの。ほとんどは天界で生きるんだけど、僕のような罪を犯したヒトは前世の記憶を持ったまま生まれ変わるんだ。



 へえ。



 今は僕がその状況。たくさんやらかしたからね。ちなみに前世の最期はギロチンでおじゃんさ。



 残酷だね。恨まないの?



 しょうがないさ。それくらい深い罪だったんだ。僕だってもう反省している。恨んでないし恨まれるのは僕の方だから。



 ……辛かったね。



 辛いかもしれないね。僕もそこら辺は分からないや。でも、今こうして罪を償っている最中に、こんなに醜い現世に、君のような人がいてくれて、僕は嬉しかった。




……消えちゃうの?



 ああ。そろそろお迎えみたいだね。



 ……好きな人に会えないのは、そういう理由?



 そういうことだよ。



 これから、会える?



 かもしれないし、会えないかも。これからのことは何もわからないんだ。無になるって、どんな感じなんだろうね。



 そっか。……そうだね。



 そんな悲しい顔しないでよ。僕は楽しかったし、正直、消えるまで誰とも話さないつもりでいたから。本当に、感謝している。



 わたしもありがとう。この2ヶ月、楽しかった。



 じゃあ、僕そろそろいくね。バイバイ。



 バイバイ。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






 とある青年は、そのあと、消えるふりをして下駄箱へと一気に駆け込んだ。

 グシャグシャな手紙を無理矢理入れ、息を乱しながら残り時間を数えた。

 あと10秒。ギリギリセーフ。

 彼は、跡形もなく消えてしまった。




 「早奈子さん、ありがとう。君の気持ちは分かっていた。ーーーさようなら。

 僕は消える。君の気持ちは、なくした方がいい。でも、覚えていてほしいと思う僕も、大概罪だね」



 これは、昔、罪を犯した青年が、再び罪を犯す物語。

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