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とある夏の日の出来事  作者: 弥苑
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第2頁

ばあちゃんちから少し歩いた所に商店街がある。昔は、賑わっていたのだが今はあまり人もおらず何処か淋しくなった。中には、シャッターで締め切ったところもある。

ばあちゃんの知り合いが経営しているところで、自分がばあちゃんの孫だということを伝え、店の店主のおじちゃんは「覚えてるよ」と言った後、「またおいで」と笑顔を見せてくれた。


俺の予想通り、1時間ちょいでおつかいは終わった。家に戻ったら、わかってはいたがばあちゃんは居なかった。

「ふぅ、どうしようかな」

台所に移動し、冷やさなければいけない野菜類や魚類は冷蔵庫にしまい、残りは机の上に置いた。

ふと、目に入ったのは机の上にポツンと置いてある花瓶だった。何種類もの花がいけてあった。

「これは、何色なんだろう。」

1本の花にそっと触れる。柔らかい花びらが俺の指を優しく撫でる。

俺の目には、『花は暗く映り、花だということをやっと認識できる』『枯れていない』ということだけしか確認出来なかった。

「きっと、俺の想像しているイロより、とっても綺麗なんだろうなぁ」

そう考えていたら、目頭が熱くなった。

涙が目に溜まり、視界がぼやけ出す。

「...っ....」

ゆっくりと腕で涙を拭う。

泣いても仕方がない事くらい、自分が1番わかってるのだ。


(そうだ)

花を見ながらあることを思いついた。

どうせ暇だし、ばあちゃんから昨日教えてもらった所に行ってみよう。

綺麗だったし、ばあちゃんが帰ってくるまで時間はけっこうある。帰ってくるのはばあちゃんと同じ時間になるだろう。


念のため置き手紙を書き、靴を履き替え玄関をばあちゃんから貰った鍵でしっかり閉め、俺は家を出た。


....

昨日教えてもらったルートを辿る。

今日も山全体に蝉の音が響きわたっていた。風が時折強くなり、それに合わせて木々もサワサワと耳に心地よい音を届けてくれた。

はっきりいって、音がないと安心できない。目が色を認識できないからかもしれない。

音があることでこれらは確かにここにあるんだ、ということを実感できる。


(あ、この階段...)

確かこの階段を登ったあとに、あの木がある。

一歩一歩、慎重に登る。

昨日もそうだったが、階段はいつも以上に足元を注意して登らなければならないため、ずっと目線が下だ。

降りる時はさらに大変で、昨日さっそくばあちゃんに迷惑を掛けてしまったのだ。

(確か、あと1段...)

登りきったことを確認し、パッと上を向くと、昨日見たばかりの木が目の前にあった。

そっと幹に触れてみると、少し表面がざらざらしていることに気づいた。


「お前の花は、シロイロなんだってな。咲いたら、見てみたいなぁ...」

幹を撫でる。

すると、俺に応えるかのようにサワサワと深い緑色の葉が優しくざわめいた。


しばらく、木の近くで山の音に耳をすましていると俺はあるものを目にした。

「鳥居....?」

この木の真正面、といってもかなり遠くにあるのだが鳥居のようなものが見える。

「あんなところにあったんだ。全然気づかなかった。」

少し驚いていると昨日と同じような少し強めの風が自分の背後に吹いた。


..._まるで俺にあそこに行ってほしい、というかように。


そんなわけないか、と自分の考えに苦笑しつつ、俺は鳥居のほうに向かって足を進めていた。



...

「階段が急だな...」

目の前の階段に眉を険しくさせる。

行きの階段でも苦労したのに、こっちはさらに急で、段差も高い。もし滑って落ちてしまったら...と考える。その姿は想像もしたくない。

(諦めるか...?)

でも、これさえ登りきれば、鳥居につける。それに今までの苦労を無しにしたくはない。

しばらく葛藤した結果、結局俺は鳥居に向かって進むことにした。

(足元により注意しながら一段一段進まないと。)


数十段以上ある(と思われる)階段の中盤を登っている途中、俺はある疑問を持った。

(ばあちゃんはこの場所知ってのかな。)

あの木のところを〈お気に入りの場所〉というくらいだし、この付近にはよく来ているのだろう。

(いい場所だったら教えてあげよう。知らなかったら、だけど。)

ここに来て2日の俺でも気づいたのだ。ばあちゃんがここに気づいてないなんてことは、まずないだろう。


数十分後、ようやく階段に終わりが見えた。

「あっとっ、いっちっだんっ!!」

思い切り足に力を入れる。

...そして、見事到着!

(久々の達成感だ...!!)

じーんと感動していると、目の前の鳥居が目に入る。この大きさに圧倒されて、思わず感嘆の声をもらしていると。



ザッ...


足音がした。

鳥居の向こう側から。

ゴクリと喉を鳴らす。

(あれ、これはちょっとまずい?)

そう思い、階段を降りようとしたら、足を滑らしてしまった。

身体が宙を舞う。

(ちょっとどころじゃない!!)

思いっきり目を瞑る。


すると


ガシッ


自分の腕を誰かが掴む。

え?と思って目を開けるといつの間にか俺は地に足を着いていた。

腕の感触が消えたと思ったら、同時に俺は尻餅をついた。

目の前には俺を助けてくれたであろう人物がいた。


だが、なんといえばいいのだろう。

普通の人ではない気がする。

お面を付けているのだ。しかも狐の。

身体からして、男性だということだけはわかるのだが...。

「あ、あの...」

勇気をだして声を出してみるも、なんの反応も返ってこない。

「た、助けてくださってありがとうございました。」

お礼を言ってもその人物は無言を貫き通す。俺は少しムッと思いながらも、この状況をどうすればいいのか必死に考えていた。このまま帰ってもいいものなのか。本心から言うともう帰ってしまいたい。だって、この人なんか怖いし!!

ただ、鳥居の奥、この人が出てきたところを見てみたい、という気持ちもあった。

悩みに悩んでいると、男が俺の左肩をツンツンと突つく。

それに気づいた俺は目線を男のほうに向けると、鳥居の奥を指さしていた。

相変わらず無言だが、俺にあっちへ行けと言っているようだった。

「この鳥居の奥に行けってことですか?」

勘違いしたら嫌だなと思って聞いてみると、俺の発言に男はコクコクと頷いた。

どうやら合っていたようだ。


さっきのお礼もあるし、ここは従っておくことにした。鳥居の奥、気になるし。

この人は少し怖いけど、悪い人ではなさそうだ。よく思えば助けてくれたしね。

「わかりました。」

そう言って、俺は立ち上がる。

どうやら案内してくれるようで、男がおれの前にたち、ついておいで、というふうに手をおれの方に向かってひらひらさせ、背を向けて歩き出す。


俺はその男の後に続けて、鳥居の奥へと歩き出した。






第2話の投稿ですー!

次から話がついに動き出します。

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