パズルにハマる。
最近、パズルにハマっている。
きっかけは近所のスーパーに置いてある、ガチャガチャだった。あの、お金を入れてレバーを回すと、ぽんっと商品の入ったボール(?)が出てくるやつ。私はいつもこのお店で、トイレを借りるたんびに、ちらっと目を通していく習慣がついていた。たいていが子供向けのものが多くて、スルーすることが多いのだけど。
ある日、私はいつものようにガチャガチャをつらっと眺めた。あるものが目に入って、私は思わず足を止めた。
あれ? 何か面白そうなもんがある。パズルシリーズだって。
その『パズルシリーズ』は二百円で、六つくらいの種類があった。見たところみんな木製で、ルービックキューブみたいなのがあったり、球形で構成されたピラミッドみたいなのがあったり。難易度は星が二つだったり、三つだったり。『!!!』という表記のもあった。
へえ。楽しそう……。
そう思った私は、少し迷った後、二百円をそのガチャガチャに投入した。ぐるっとレバーを回してみて、出てきたのは十字型のパズルだった。難易度は『!!!』。
さっそくやってみようとした私は、いきなり困惑した。どう外せばいいのかが、そも分からない。要するに『十』の形を『一』と『一』にばらせば良いのだろうが、十字型はお互いにぴったりはりついて、はがれようとはしてくれない。
ちょっと待て。難易度『!!!』って、つまり『エクストリームモード』ってことか!?
私は悪戦苦闘しながら、一緒に買物に来ていた母を探した。合流した母は、娘の手にしたパズルに食いついた。
「え、何それ?」
「ガチャガチャ……うーん、外れない……っ」
結局店内では外れずに、家に帰ってから軽く振り回していたら、あっさり外れた。中を見ると、竹ひご状のストッパーがかかっていた。こいつが出たり入ったりして、十字型が『一』になるのを阻むらしい。
竹ひごを指で押さえておいて、そうっと戻したら、案外あっさり元に戻った。
(面白い……!)
何よりあの、外れた時の爽快感!(全くのまぐれだったけど;)
私の心の竹ひごは、ここでパズルにハマったらしい。次の日から私は二回連続で、ガチャガチャに二百円を投入した。手に入ったのはルービックキューブ状の立方体と、ピラミッド。でもこれは両方クリア出来なかった。
次に目に留まったのは、他のお店での『明治ミルクチョコレートパズル』。見た目はまんまチョコレートで、『食べられません』と注意書きのあるものだ。パズルのピースもチョコみたいで、何とも可愛い。
うきうきしながらパズルに取り組んだ私は、やがてサル化した。
「うきーーっ!! 出来ねぇええーーーっ!!」
難しいのだ、とんでもなく。『板チョコ状にケースにはめたら出来上がり。解答は二千通り以上』というシンプルなものであるにもかかわらず。ケースにぴったりはめようとすると、どっか歯抜けになってどっかはみ出す。うわあ腹立つ! すっきりしねえ!!
二三時間サル化し続けたあげく、私は挫折した。えらい敗北感を覚えながら、コンビニの袋にチョコのパーツを収納した。ケースにぴったり入らないから、ちゃんと片づけられないのだ。で、未だにこれは完成出来てない。
まあそれはそれで置いといて、次に買ったのは『15パズル』。1から15までの数字をケースの中でスライドさせて、綺麗に数字順に並べれば出来上がり、というシンプルなもの。
昔友達が持っていて、一時期二人の間ではやったことがある。
「ちょっと何、こんなぐちゃぐちゃにして……こんなん出来っこないじゃーん!!」
「えー、出来るよ……ほら」
「うわあほんとだ! 腹立つ!」
「じゃあ今度はそっちがお題出して」
「よーし、むちゃくちゃ乱してやる……これでどうだ!」
「…………はい出来た」
「うがー! むかつくーーっ!!」
なんてことを延々やっていたのである。ちなみに出来ない方が友達。私より明らかに頭の良い彼女が悶え苦しむさまは、見ていてとても可愛かった。
多分この15パズルは、考えすぎるとかえって解けにくくなるのだろう。再び手にした15パズルは、私とはとても相性が良い。遊びすぎて、金色のペイントがはがれてきたほどだ。
で、散々15パズルで遊んだ私は、再びチョコにとりかかった。(こんだけ脳を鍛えれば、チョコパズルも解けるはず……!)ともくろんで。
甘かった。解けない。何をどうしても解けない。
むきになった私は、なぜか同シリーズの『明治アポロチョコレートパズル』を注文してしまった。(また苦い思いをさせられるんだろうな……)と思いつつ。
ちなみに本物のチョコレートは、歯ぐきにくるので食べられない。
(了)