第8話 確信
「万理が妹が心配だからって寮を抜け出してここまで来たんだが、途中で柏木と会って妹の事を聞いて心配なさそうだからと寮に戻ろうとしたんだ。そしたら親衛隊の三間坂と偶然会って・・・俺は万理を逃すために一人で立ち向かったんだが、後ろから殴られて気を失った。万理に電話しても出ないし、柏木と一緒じゃないって事は・・・」
「は?俺?」
「柏木と出会った後に三間坂と会ったから、取り敢えずお前と一緒にいれば万理は安全だろうと思って、お前を捜せって言ったんだ」
とお兄様と同室という橘幸太さんがそう説明して下さいました。
お兄様が不破の親衛隊に捕まったらしいのです。
つまり制裁という事ですわね?お兄様を傷つける者は許しませんわ。お兄様にもしもの事があったら影が何とか助けてくれると思いますが。
「またお前の所の親衛隊か。管理が出来ないのなら容認するな」
「俺のせいじゃないだろ」
「お前のせいだろ。お前がしっかりしないから万理が傷付く。それにこっちにも仕事がくる。いい加減面倒だ」
「あいつらが勝手にやっているんだ。俺のせいじゃない」
「なら親衛隊を解散させろ」
不破と藤東が言い争っています。
この二人は顔を合わせるといつもこうだと深川さんがこっそり教えてくれました。
犬猿の仲というものですわね。放置しておきましょう。
「それで?そのミマサカとかいう方がいそうな所はどこですの?」
「わからない。ただ、あいつ変な事言っていた」
「変な事?」
「違う奴がきたとか・・・」
違う奴・・・。
ミマサカは誰かを待っていた。一体誰を?
考えていると光一がおいと私を呼びました。
「今回の事件と関係があるんじゃないか?」
「え?」
「兄をおびき寄せる為に妹の“ちひろ”をさらった犯人。三間坂は鳳千万理を待っていたが違う奴が来たと言った。アンタの名前は千尋。兄は万理」
つまり・・・あの時私が立てた仮説が当たったという事!?
「じゃあ、高須千寿さんは私と間違えて犯人に捕まり、高須拓真はお兄様と間違われて誘いだされたという事ですわね?」
「つまり、今回の事件が犯人の間違いで起こったという意味ですね?」
深川があごに手をやり、なるほどと考えながら言いました。
「とりあえず倉庫に向かいましょう。きっとそこに万理がいる筈です」
「俺も行く」
未だに血を流す橘さんは明らかに体調が良くありません。そんな状態の人間を連れていく訳にはいきません。
「駄目です。貴方はまずは保健室に行って手当てを受けて下さい」
「万理が心配だ」
「貴方が助ける途中倒れたらお兄様が心配しますわよ?」
それでもいいのですかと訊ねると橘さんは黙りました。
素直でよろしいですわ。
「真理奈、優子、佐治さん。橘さんを保健室に連れて行って手当てをして下さい。それと、誰か先生を呼んできてもらって下さい」
「わかったわ」
真理奈たちに体を支えられ、橘さんは校舎へと向かいました。
「では参りましょうか?」
「千尋ちゃんも行くのかい?」
会計の片倉が両手を頭に乗せ、聞いてきました。
「勿論ですわ。お兄様に会いたいですし、今回の事件を起こした犯人にも会いたいですしね」
「会ってどうするの?」
「え?それは勿論―――いいえ、何でもありませんわ。向こうに行ってからのお楽しみです」
ストレス解消になりそうですわ。
「君が行かなくてもいい筈だ。我々の学園で起こった事は我々で処理する」
藤東が反対してきました。
「我々の学園で起こった事ですって?麗鈴の生徒が被害に遭っているのによくもまあそんな事を。とにかく中等部生徒会長として一緒に行きますわ」
行くなと言われてもついて行きますからと言えば藤東は黙りました。
「じゃあ行きましょうか。さあ、光一。案内して下さいませ」
「俺も!?」
「ここまで来たのだから最後まで付き合ってもらいますわよ」