第7話 全員集合?
「ちょっと千尋!あんた私たちを置いて一人で解決しようとしたでしたでしょ!?チームワークはどうしたのよ!」
「落ちつきなよ真理奈~。千尋の協調性の無さは今更じゃーん」
「会長。黎明の生徒会の手を借りて寮にいない人間をリストアップしました」
「ほう。お前が万理の妹か。似てないな」
「似てないのはあたり前ですよ統也。彼女は義理の妹なんですから」
「へぇー千尋ちゃんかぁ。可愛いね!俺と今度お茶しない?」
「万理の妹・・・カワイイ」
「・・・・・・・・・貴方がたは何故ここにいらっしゃるの?というか黙りなさい」
頭が痛いですわ。
私たちは今、北棟の裏にある林の前にいます。
いざ光一と二人で行こうとした所、後ろから麗鈴女学園中等部の生徒会と黎明学園の生徒会がわらわらとやって来たのです。
光一が驚いていますわ。というより顔が引きつっています。
「えーと・・・こいつら何なんだ?うちの生徒会はいいとして、眼鏡の子はさっきの佐治さんとかいう子だろ?他の二人は?」
「そうですわね。ええと、うるさいのが私と同じ生徒会の副会長を務める向井真理奈ですわ」
「うるさいってなによ!人が心配して来てあげたのに!」
「で、隣でぼけ~っとして話し方がだらしがないのが生徒会会計の百瀬優子」
「優子で~す。すっごい面白い事になってますね~。わくわくしま~す」
「・・・個性的な人達だな・・・」
光一はそう言って苦笑いを浮かべましたわ。
取り敢えず、どうしてここにこの人達がいるのか。
「・・・どうしてここが分かったのですか?」
「GPSです」と佐治さんが答えました。
ああ、携帯の・・・。
「真理奈と優子には高等部の生徒会の対応よろしくと言った筈ですが・・・」
「ちゃんと対応したわよ!後は私たちに任せて参加者を連れて先にお帰り下さいって。そしたらよろしくって言われた」
高等部の生徒会長は適当で有名ですしね・・・。
私の頭にはのほほ~んとした高等部の生徒会長が浮かびました。
「・・・相手がそれで納得したなら別にいいですわ」
「私は真理奈が行くならと思って」
「私もです」
優子と佐治さんは当然!と顔で言った。
・・・もういいですわ。それよりも・・・。
「それで黎明の生徒会の方たちが何故?」
「万理の妹が見たくてグハッ――」
「黙りなさい。その佐治さんが持つリストを見て下さい」
生徒会長の不破統也の鳩尾に肘鉄を喰らわせ(呻き声が聞こえますがスルーで)、副会長の深川英司は佐治さんを指差しました。私は佐治さんから一枚の紙を渡されました。
「ええと、沢山の名前が載っていますがこれは?」
「今現在、我が寮で姿を確認出来ない人物名簿です。参加者は除いております」と深川英司が説明してくれました。
「こんなに?」
「そこのハ行を見て下さい」
ハ行・・・。
え――――?
「お兄様!?」
そこには鳳千万理の名前がありました。
何故お兄様が?
「やっぱりアンタの兄貴か」
光一は、「鳳千なんて珍しい名字がそうそういるわけ無いしな」と呟きました。そして何かを思い出したように「あ」と声を上げました。
「そういや俺、アンタと会う前に鳳千万理と会ったぜ」
「え?お兄様に?!」
「確か同室の橘幸太と一緒だった。それでアンタに会いに行くとか言ってたな」
私に会いに・・・?
凄く・・・凄く嬉しいですわ!
って喜んでいる場合じゃありませんわね。
「それでその後お兄様は!?」
「え?別れたから分からねえよ」
「役立たずだな」と生徒会長の不破統也が罵り、「何の為にいるのですか?」と副会長の深川英司が笑顔で問い、「使えねぇ~」と会計の片倉清一が鼻で嗤い、書記の無藤和人は無表情で光一をジッと見ていました。
光一は「仕方がないだろ・・・行方不明者を捜しに行ったんだから」としょげています。
すると生徒会長の不破統也がここにいるいきさつを話し始めました。
「俺様の万理が寮にいない。そして校内にもいないからこうして捜していた所、中等部の生徒会の彼女らに出会った。それで話を聞くと万理の妹の所に行くというのだから、こうして会いに来たのさ。未来の義理の妹に」
「未来の義理の妹?何を仰っているのか分かりませんが、取りあえずこの肩に置いている手をどけて下さいませ」
「恥ずかしがるな。万理の妹なら俺様も可愛がってやるが?」
「死んでください」
ギロリと不破を睨むと、相手は怯むどころか面白いと呟きました。
本当に俺様って嫌ですわ!世界は自分を中心に回っていると勘違いしているんじゃないでしょうか。
すると「ちょっと待って下さい!訂正させて下さい!」と深川が話に入り込んできました。
訂正してあげて下さい!どこの誰が未来の義理の妹だと!貴方の妹になることは絶対にないと!
「万理は貴方のものではありませんよ?私のものです」
深川が自信満々にそう言いました。
期待した私が馬鹿でしたわ。
便乗して片倉清一が「はぁ?俺のだしぃ~」と割り込み、書記の無藤和人はやはり無言で深川を睨みつけました
その光景を見た真理奈が馬鹿みたいと呟き、優子が楽しそうに笑います。
「というか醜い争いだね~見ていて楽しいけど~」
優子は携帯を取り出すと何故かその光景をカメラで撮り始めました。きっとネットでつぶやくのでしょうね。
「会長。どうします?彼らを放っておいて行きますか?」
「そうですわね。放っておいて行きましょうか・・・」
こんな人たちに構っていたら日が暮れますし。
その時でした。
「何故このような重要な事を我々風紀委員に黙っていたんだ」
校舎の方から三人組の生徒がやってきました。一人は何方か存じ上げませんが、後の二人は私と一緒に交流会を回った久原さんと三河さんです。
「ちっ皇夜か・・・」
不破が面倒さそうな顔をして久原さんと三河さんを連れた人と向かい合います。
「我々を除け者にしようなど百年早い」
「除け者にした訳じゃない。お前がその場にいなかっただけだ」
「わざとだろう?幼稚な真似を」
「何だと!?」
あら、生徒会長が押され気味ですわ。いい気味です。
風紀委員ですか。偉そうな態度と、生徒会長の不破を前にしてあの態度という事は、あの方はきっと風紀委員の中でも高い役職に着いている筈ですわね。
きっと・・・。
「副会長さん。あの御方は風紀委員長ですか?」
「!良く分かりましたね。彼は風紀委員長を務める藤東皇夜。度々我々生徒会に突っかかってくる面倒な男です」
つまり、お兄様を狙うその一人という事ですわね?
「うわっ凄い綺麗な人ね」
真理奈が顔を赤らめてそう呟きました。
確かに。あの御方は綺麗ですわ。和服が似合いそうです。
藤東皇夜は黎明の制服を着崩すことなくきちんと着ており、風紀委員の役職に着くのも頷ける様な御方です。黒髪に怖い位整った顔。目つきは鋭く顔の筋肉が死滅しているのでしょうか、全く変わりません。
まるで能面のようです。
「あの。そろそろ私達は御暇してよろしいでしょうか?」
そう訊ねると藤東は私をギロリと睨みました。私が何かしまして!?
「誰だこのアホみたいな女は」
あほみたいなおんな?
れ、レディに向かってそのような暴言。許しませんわ!!!
「ちょっと!貴方は女子に向かっていきなりなんですの!?失礼ですわよ!レディは丁重に扱いなさいと教わらなかったんですの!?」
「レディ?誰がだ?」
藤東は真顔でそう聞いてきました。
「こ・・・こ・・・この能め「おい!生徒会!!!!」え?」
我を忘れてはしたない言葉を発する所で、私たちを誰かが呼びました。
校舎からこちらにヨロヨロと一人の男子生徒がやって来ています。頭を怪我しているらしく、血が額を伝って頬まで流れています。
「お前は確か万理と同室の橘幸太・・・」
「親衛隊はどうした!!!!!」
不破の胸倉を掴み男子生徒はそう訊ねました。息が荒く、今にも倒れそうです。
「俺の親衛隊?今日は見かけていないが。大体今日はクラブに参加しない生徒は寮で待機だと」
「お前の親衛隊が万理をさらったんだよ!!!」
私はその時。
嫌な予感という物は当たるものだとつくづく思いました。
生徒会長の名字を峯川から不破へ変更しました。
11/22 修正