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麗鈴女学園の女帝  作者: 緋色要
6/8

第6話 心配2

寮館長にバレない様に部屋の窓から外に出た。

寮は黎明学園の敷地の端っこにあり、全部で三棟ある。それぞれ学年ごとに分かれており、一年生の寮は校舎側に最も近い場所にある。その為他の学年に見られないで済みそうだ。


「もう始まってるよな?」

「そうだな。きっと生徒会は風紀委員と見回りにいっている筈だ」

「へぇ~っていうか、よく知っているな」


そう言うと幸太はニヤリと笑った。

また例の情報屋か。

幸太は黎明学園にいる情報屋と名乗る生徒と仲が良く、よく情報を交換し合っているらしい。


校舎に着き、人気の無い北棟から侵入する事にした。普段もここは人気が無いから、不良共のかっこう溜まり場になっている。


俺は前ここで・・・。

過去の事を思い出し思わず立ち止まってしまった。前にこの北棟で会長の親衛隊に強姦されそうになったのだ。その時は直ぐに幸太が駆け付けてくれて助かったけど、今でもあの時の事を思い出す。

震えるほど怖かった。やめろと叫んでもやめてくれなかった。

ここにいると思いだす。あの時の事。

寒くないのに体が震えだした。

怖い。怖い!


「大丈夫だ」


身体が温かくなった。気がつくと幸太に抱きしめられていた。

幸太が俺をギュッと抱きしめる。

ああ――。


「もう怖くない。俺がいる」

「こうた・・・ありがとう・・・」


――温かい。


幸太はいつも俺の傍にいてくれる。いつも俺の味方でいてくれる。

俺にとって幸太は掛け替えのない大切な・・・


「ん?橘?」


第三者の声が聞こえ、俺は思わず幸太から離れた。幸太が名残惜しそうな顔をしたが、それも一瞬で直ぐに声のした方を見る。

そこには俺と同じ学年である校章をつけた男子生徒がいた。制服を着崩し、手や耳には装飾品が目立つ。目つきは悪いが、結構綺麗な顔をしている。


「柏木か」

「お前今日寮にいるはずだろうが。何でここにいんだよ」

「それはこっちのセリフだ。お前こそ何でここにいる」

「俺は・・・その・・・」


柏木という生徒は視線を彷徨わせ、頭をぼりぼりとかいた。


「俺のことはどうでもいいんだよ。お前らこそ何でいるんだ!」

「・・・万理の妹の様子を見に来た」

「万理って?」

「俺です」


名前を呼ばれ手を上げる。柏木はギロリと俺を睨む。


「万理?何万理だ?」

「高水・・・じゃなかった。鳳千万理です」

「ほうせん!?」


柏木が驚いた顔を浮かべた。そして何かブツブツと呟きだした。


「妹は・・・千尋か?」


え?


「何で千尋の事を」

「いや・・・さっき偶然会ったというか」

「さっき?妹はどうしてました?」

「・・・行方不明の生徒を捜していた。俺は今それに付き合わされている」


行方不明!?


「どう言う事だ?」

「交流会の途中で麗鈴の生徒が行方不明になったみたいだ。この事は他の奴らに公にはされていないようで、動いているのは風紀委員と生徒会みたいだぜ」


柏木は全く面倒だぜと呟き、俺たちの横を通り過ぎそのまま立ち去った。

何が起こっているんだと幸太と顔を見合わせた。


「取り敢えず妹は無事みたいだな」

「ああ」

「これからどうする?寮に帰るか?」

「・・・う~ん。そうだな帰るか」


窓枠に足を掛け、校舎の外に出る。今日の天気は晴れ。雲ひとつない。こんな日に寮で一日過ごすのはもったないよなと思ってしまう。


幸太が窓枠に足をかけ、校舎から出ようとした時だった。


「鳳千万理?何でここに!?」


後ろを向くと、どこかで見た事がある生徒がいた。彼の後ろには彼同様に驚いた生徒達がいた。

ああ、彼らは・・・。


「まあいい。違う人間が来たからびっくりしたけど、丁度良かった。僕達とつきあってくれる?」


ニヤリと笑う彼に身体が震えた。

こいつらは・・・あの時の・・・!

会長の親衛隊の三間坂(みまさか)


「万理!」


視界が幸太の背中に遮られる。幸太が小声で話す。


「(校舎に戻れ。柏木を追いかけろ)」


柏木・・・?

さっきの奴か!

俺は幸太にごめんと言って、校舎に戻る。三間坂が追え!と叫んだのが分かった。

廊下を走り、柏木を捜す。

何処に行ったんだよ!


後ろから足音が聞こえてきた。

幸太かと思い立ち止まって角から伺う。


「何処に行きやがった」

「いたか?」


違う。幸太じゃない。親衛隊の奴らだ。

幸太はどうしたんだろうか。


「東棟や西棟も捜して見るか?」

「いや、よそう。そっちは人気が多い」


じゃあ俺は東と西にいけばいいんだな?確か同じクラスの津田が茶道部にいるはずだから、助けて貰おう。

そう思い、角の向こうの親衛隊から逃げようと思った時だった。


「見つけた」


――え?


誰かがそう呟き俺の視界は一瞬で黒く染まった。



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