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麗鈴女学園の女帝  作者: 緋色要
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第4話 疑問

呆然とする高須さんは携帯を操作して、どこかに電話を掛けました。

きっとお兄様にかけていらっしゃるのでしょうね。

でもきっと・・・


「何で!?何で出ないの!?12時までまだ時間があるのに・・・!」


やっぱり出ませんか。彼は指定された時間より早く倉庫に向かったようですわね。

今の時刻は11時30分。

誘拐犯が高須さんの携帯を使ってメールの送信した時間が10時30分。

きっとお兄様はもう倉庫に着いて、倉庫の中にいる人物と接触している筈。


嗚咽を漏らす高須さんを準備室に置いて廊下で『影』を呼ぶ。すると一瞬で彼は姿を現した。


「北棟裏にある林の中の倉庫を調べてきて欲しい。調べてくるだけ。手出しは無用」

「御意」


『影』は一瞬で消え去った。

一体何の目的で高須兄妹をこんな目に会わせるのでしょうか。

見当皆目がつきませんわ。

溜め息を吐くと、携帯が突然震えましたわ。佐治さんです。


「もしもし?」

『会長。高須さんについて調べたのですが、特に何もありません。彼女の友人や関係する人間を調べても特に気になることはありませんでした』

「そう。わかったわ」

『副会長や会計も高須さんの会社の事で動いていますが、高須社長は人柄も良く、誰かから恨まれるような人柄では無いようでして。高須拓真の母親や再婚相手も特に目立った争い事など無く、特にこれと言って気になる情報はないようです』

「そう・・・ありがとう。引き続きお願いするわね」


一体どういう事?

怨恨理由で身代金目的の犯行ではないとしら、彼らの目的はやはり高須拓真。

何故高須拓真なのでしょうか。

黎明学園内で堂々と妹の千寿さんを誘拐。彼女を兄の高須拓真をおびき寄せる餌にした。

そう、餌に・・・。


あ・・・!

私とした事が・・・ここがどこかすっかり忘れておりましたわ!


ここが男子校で、そういう所だという事を!

きっと今回の事件は高須拓真に好意を抱いている者の仕業に違いありません!

妹さんを餌にお兄様をおびき寄せる事に成功した犯人はお兄様を無理やり・・・!

こうしちゃあいられませんわ!


「高須さん」

「はい?」

「お兄様は常日頃何か仰っていませんでしたか?」

「何かとは・・・?」

「誰かから迫られているとか、誰かがしつこいとか」

「え?特にありませんでしたが・・・」


やっぱりそうですか。どこの兄もそういうものですのね。


「やはり妹には見栄を張りたいのでしょうね。お兄様にそっくり」

「会長にもお兄さんがいるんですか?」

「ええ!高等部にいますわ。とても自慢なお兄様よ!」

「私と一緒ですね!」

「ええ一緒ね」



何故かしら。親近感が湧きますわ。

私の名前は千尋。彼女の名前も千寿。

高等部にお兄様がいる。

本当にいっしょ・・・


あ・・・ら・・・?

兄が黎明の高等部にいて、名前が一緒の妹。

今回の交流会に参加した私たち「ちひろ」。

兄は交流会に参加していない。参加しない生徒は今日、寮にいなくてはいけない。

高須千寿の携帯のアドレス帳には兄の名前はなく、かわりに『お兄ちゃん』と名前がある。

兄のおびき寄せる為に妹の「ちひろ」を攫い餌にし、まんまと兄をおびき寄せる事に成功した犯人。


いいいい嫌な予感が。嫌な予感がしますわ。

も、もしかしたら、高須さんは・・・私と間違われたのでは?

犯人も高須さんに『ちひろさんですか?』と名前を聞いた。

犯人の目的は私のお兄様では・・・!?

この学園には生徒会や人気のある人には親衛隊がいるとお聞きしました。お兄様は生徒会や風紀委員やその他と仲が良い。と言う事はもしかしたら、その事を妬んだ親衛隊がお兄様に制裁を与えようと妹の「ちひろ」を餌にお兄様をおびき寄せようとしたら?!

私の考えすぎ!?

偶然の一致!?


何かしら嫌な方向に考えが・・・!


その時携帯が鳴りました。

嫌な考えを振り払い画面を見ると向井真理奈(むかいまりな)の名前が。真理奈は私と同じ生徒会の副会長を務めていますわ。


「ど、どうかしまして?」

『どうかしまして?じゃあないわよ!早く本部に帰ってきなよ。高等部の生徒会が捜しているよ』

「あら?どうしてですの?私は別にいなくていいでしょう?副会長のあなたがいるんですし」

『一応あんたは中等部生徒会会長でしょうが』

「面倒ですわ。真理奈が対応しておいてくださいな」

『あんたねぇ~・・・・・・・はぁ~・・・わかったわよ。それより、現状は?』

「行方不明の高須さんを発見しましたわ」

『はあ!?どうしてそんな重要な事を直ぐに連絡しないのよ!?皆まだ捜しているのよ!?』

「高須さんを落ち着かせる為に頭がいっぱいですっかり忘れてました」

『しらじらしい。どうせ自分で解決しようとしたんでしょ』

「・・・・・・・そんな事ありませんわ」

『今の間はなにさ。取り敢えず、黎明の生徒会と風紀委員には伝えるよ。直ぐにそっちに人を寄こすから』

「ありがとう。今いる場所は東棟の一階の準備室ですわ」

『準備室?鍵開いてたの?』

「・・・・・・その辺は企業秘密というという奴ですわ」


宜しくお願いしますわと通話を切り、高須さんにこの事を伝える。


「あの、会長。兄は・・・兄は見つかったんですか?」

「それがまだ」

「兄を・・・兄を捜して下さい!」


高須さんは私に縋って来た。


「大丈夫ですわ。必ず見つけ出します。いいですか?ここにこれから風紀委員の方たちが来ると思いますので、全て話して下さいね。私はこれから拓真さんを捜しに行きますので」


もう、大丈夫ですわというと彼女は安心したようでヘタリと座り込んだ。彼女の背中を優しくさすってやり、落ち着かせる。


「では、行きますわ」

「はい。お願いします会長」


高須さんを準備室に置いて、私は北棟へ足を向けました。その途中、光一に電話をかけます。何回かのコールの後、光一のぶっきらぼうな声が聞こえました。


「あ、光一?高須千寿さんが見つかりましたわ」

『そうか。じゃあ俺たちはもう用な』

「これから高須拓真がいるであろう場所に向かいますわ」

『はあ!?』

「犯人が千尋さんの携帯から拓真さんにメールを送っているんです。場所と時間を指定して」

『・・・つまり、妹は兄を誘う為の餌だったというわけか?』

「そうですわ」

『それでアンタはその犯人がいる場所に一人で行くつもりか?』

「そのつもりでしたけど?」

『・・・あのな。アンタは一応女なわけ。一人で行こうとするな。というか一人でウロウロするな』

「あら。だったら光一が一緒に来てくれたらいいではありませんの」


そう言うと電話の向こうから溜め息が聞こえてきました。

あら?どうして呆れていますの?

すると、

「何考えてんのか、全く分からねえな」と声が間近で聞こえ、振り向くと後ろに光一が立っていました。


「あら?」

「アンタが準備室に行くって言うからそこに行けば合流出来ると思ってな」

「そうですの」

「で?行くんだろ?」

「ええ、北棟の裏の林の中にある倉庫に」


そう答えると光一は深く溜め息をつきました。

光一。幸せが逃げますわよ?


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