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麗鈴女学園の女帝  作者: 緋色要
3/8

第3話 発見

「あれ・・・?会長?その人は?」


目を覚ました書記の佐治さんが、私と柏木を見て驚いています。取り敢えず現状の説明と、これからの事を話した。

さて今更ですが、書記の佐治晴乃(さじはるの)さんについて紹介しましょうか。

彼女は中等部二年生にも関わらず、生徒会の書記をお願いしておりますの。何せとても素晴らしい方ですもの。

全国模試で常に上位に名があり、成績優秀、性格も温和というお兄様を女性にしたようなお方ですわ。ただ、運動神経はあまり良くないようですわね。

肩まである黒いストレートの髪は痛みも無く、小さな幼い顔に大きな眼鏡はアンバランスな気もしますが、彼女のアクセントになっています。

この前ふざけて抱きついたら柔らかく石鹸のいい香りがしましたのよ。私の腕から逃れようとじたばたもがくその姿と言ったら・・・!


あら、つい興奮しちゃいましたわ。

あら?その顔は何ですの光一?私の顔に何かついていまして?

あ、そうそう。佐治さんにして貰いたい事があったのでしたわ。


「佐治さん。お願いがあるんですの」

「何でしょう?」

「高須千寿って子の事を知りたいの」

「えっと、行方不明の生徒の子ですよね?」

「ええ。最近の様子とか。離婚の事とか。彼女と仲のいい子に訊いていただけません?」

「分かりました。直ぐ調べます。他の役員にも知らせますか?」

「そうね。お願いしますわ」


佐治さんはそう言うと備品倉庫から出て行った。麗鈴の生徒会室に行って高須さんの事を調べて貰うのです。生徒会のパソコンには麗鈴の生徒の個人情報がいっぱい詰まっておりますのよ。でもこの事は誰にも知られてはいけませんわ。そうなったらかなりの大事になりますし。

そういえば佐治さん。帰り道わかるのかしら・・・。佐治さんなら平気よね・・・?


「光一も高須拓真の事をよく知っている人に訊いてくださる?」

「だから名前で呼ぶな。・・・仕方ない。聞いてやるよ」


光一はしぶしぶと電話を誰かにかけはじめました。

さて、私はこれからどうしましょう。とりあえずこの東棟の一階にある準備室とやらに行ってみましょうか。

何か怪しいのよね。長年の感って奴かしら。まだ十五年しか生きておりませんけど。


電話をかけ終わった光一に準備室に向かうと告げたら呼び止められましたわ。

何かしら。


「携帯を貸せ」

「・・・何でですの?」

「いいから貸せよ」


光一に強引に携帯をとられましたわ。本当に何がしたいのかしら。

何か操作して直ぐに携帯を返されました。


「一体何なんですの?」

「連絡できないと不便だろうが。だから・・・メアド交換したんだよ」

「え?」


アドレス帳を開くと柏木光一の名前が。

何かしら。心がポッと温かくなりましたわ。


「ありがとう。でも光一とは違う理由で交換したかったですわ」

「!・・・さっさと行け」


光一は恥ずかしのでしょうか、そっぽを向いて、手で私を追い払いました。

ふふふ。耳が真っ赤ですわ。

鼻歌交じりに倉庫を後にして携帯を取り出す。黎明の地図をさっき携帯のカメラで撮ったのです。

まずは一階に降りた方がいいわね。それから東棟に向かいましょうか。

携帯をポケットにしまい、階段を下りて東棟に向かう。




さて皆さま。私、鳳千千尋は今東棟にいます。ええ、一階の準備室の前にいますわ。一階は人っ子一人見当たりませんわ。それもそうですわね。もう交流会は終わっていますもの

準備室のドアにそっと耳を近づけ、物音がしないか確認します。

すると微かに何かの物音がしたのです。カタン――と耳をすませなきゃ聞こえないであろう音が。

準備室のドアの取っ手に手を掛け、ドアが開かないか確認しましたが、開きません。準備室は普段使わないと仰っておりましたものね。

仕方がありませんわ。職員室まで鍵をとりに行くのが面倒ですもの(行ったとしても貸してもらえるかどうか分かりませんし)。ここは強行突破と行きましょうか。

私がドアから離れ助走をつけ、勢いよく準備室のドアに蹴りを喰らわせようとした時でした。


「千尋様。これを」


私の背後にいつの間にか全身真っ黒な一人の男がいました。

彼は『影』。鳳千家に仕える『影』の者。

普段はお兄様を守って貰っていますが、今日は私のお手伝いをしてもらっていますの。


「ありがとう。ドアを壊してお母様とお兄様に迷惑かけるところでしたわ」


『影』が持っていた準備室の鍵でドアを勢いよく開け放つ。

そして目に入った光景に私は驚きました。

一人の女子生徒が縛られ、床に横になっていたからです。気を失っているらしく、ぐったりとしております。

慌てて彼女に近づき、彼女の縄を解いて起こしにかかります。


「しっかり!大丈夫ですの!?」

「ん・・・あれ・・・?私・・・痛っ」


女子生徒は目を開け、頭を手で押えました。どうやら無理やり気絶させられて様ですわね。

取り敢えず、彼女は今不安でいっぱいな筈だから、自己紹介でもしましょうか。


「大丈夫ですの?私は中等部の生徒会長の鳳千ですわ」

「あ、会長?私は」

「高須千寿さんですわね」

「は、はい」

「行方不明になったとお聞きして捜しておりましたところ、無事発見できましたわ。よかった」

「え!?あ!そうだ!私いきなり後ろから誰かに殴られて・・・!千寿さんですか?って訊かれて、はいと答えたらいきなり後ろから・・・それで気付いたら会長に助けられていて」

「誰に訊かれたんですの?」

「黎明の高等部の三年生でした」


黎明の高等部の三年?外部の者の犯行ではない?


「あれ?携帯が・・・」

「どうしたんですの?」

「ポケットに入れといたんですけど、何故かこんな所に」


高須さんは棚にあった携帯を開き、困惑している。


「高須さん。送信履歴、もしくは発信履歴を確認して下さる?」


私の読みが当たれば、もしかしたら。


「あ、はい。えっと・・・あれ?」

「何かありまして?」

「え?な、何このメール・・・私こんなメール送ってません。誰かが・・・誰かがお兄ちゃんにメールしているんです」


高須さんはそう言うと私にメールを見せて下さいました。

そこにはこう書かれております。


『妹を預かった。

返して欲しかった12時に北棟の裏にある林の中の倉庫に来い。』



「どうやら貴女をここに閉じ込めた連中は、貴女のお兄様に用があるようですわね。知らない人間からのメールや電話より、貴女の携帯からお兄様にメールした方がよりリアルに感じられるでしょう?」

「確かに・・・」

「それにほら。メールの受信ボックスと着信履歴が『お兄ちゃん』で埋まっていますわよ。きっと慌てて貴女の安否を確認したのでしょうね。でも、携帯には出ないし、貴女の姿は見えない。だからお兄様は貴女を捜しに行ったのかもしれませんわ」

「え?」


言うのをすっかり忘れておりましたわ。


「お兄様も行方不明なんですの」



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