第1話 交流会
春の心地よい日差しが降り注ぐとても穏やかな良き日。
私、鳳千千尋は今、麗鈴女学園の校門前にいます。
私の後ろには白い制服に身を包んだ我が女学園の可愛い生徒たち。各々に今日使う荷物を持ち、嬉しそうにはしゃいでいます。その光景に思わず笑みを浮かべるのは仕方がありませんよね?
私が通う麗鈴女学園はエスカレーター式のお嬢様学校で、百年の歴史がある由緒正しい学校ですわ。セキュリティも学校のカリキュラムもキチンとしていることから人気があり、外部から転入してくる人も結構多いわ。
そんな私は中等部に在籍している普通のお嬢様。
普通よ?普通。
お父様は知らないものはいないと言われる某会社のCEOだとしても、お母様が世界的に有名なデザイナーだとしても。私自身は普通のお嬢様。
私の家族構成はお父様とお母様とお兄様と私の四人家族。それと屋敷には執事、メイドもいれると百人は超えそうね。
自慢ではなくてよ?
お父様とお母様の事はさておき、お兄様の紹介をしましょうか。
お兄様の名前は万理。とても素敵な名前でしょう?
お兄様は麗鈴女学園の隣にある黎明学園の高等部にこの春から通っているの。
もちろん麗鈴女学園がお嬢様の為の学校なら黎明学園も有名企業や政治家などのご令息が通う名門校。もちろん麗鈴女学園と同じくエスカレーター式の伝統ある学校よ。
お兄様は成績優秀で運動神経も抜群。それに人柄も良く、誰からも好かれているわ。もちろん私もお兄様が大好きよ。
そんなお兄様が高等部に転入してから困っているみたいなの。お兄様から直接聞いたわけではないのだけど、どうやらお兄様の操が危ないらしいの。
私のお兄様を危ない目に合わせるなんて、許せないわ。私、お兄様の悲しい顔を見たくありませんの。私はお兄様にはいつも笑っていて欲しいのです。
だから我が鳳千家に絶対服従する『影』にお兄様を護るようにいいつけましたわ。
『影』からの報告によるとお兄様の操を狙っているのは八人だということ。
他にもいるようだけど、この八人が有力候補らしいわ。
お兄様の操を守る為に、私が出来る事は何かしら。お兄様に恋人が出来れば一番いいのでしょうけど。
もしお兄様に強引に事を運ぼうとしても『影』がいるから大丈夫でしょうけど、きっと諦めないでしょうね。
私が出来ることはこの八人に釘をさす事ね。お兄様を泣かせたらどうなるか分かっているんでしょうねって上から圧力をかけるしかないわ。
それでも強行に及んだ場合は私自らその者を・・・ふふふ。言えないわ。こんな事。
さて、今日は黎明学園との定期交流会ですの。各クラブで交流し、互いの絆を深めるとかいう催しで、創立当初から行っているようですわ。
私自身はどこのクラブにも所属していませんのですが、僭越ながら私は中等部の生徒会長を務めさせて頂いております身。
勿論高等部の生徒会もいらっしゃるのですが、中等部も参加するという決まりらしく、まったくもって面ど・・・大変ですわ。
交流会に参加するクラブの者を引き連れ、黎明学園に着いた私たち麗鈴の生徒は只今空き教室にいます。どうやらここが交流会本部会場のようです。
そして女子生徒は皆顔を赤らめ、浮ついた表情をして一方だけを見ております。彼女たちの視線の先には黎明学園高等部の見目麗しい生徒会の姿が。
生徒会長の不破統也。プラチナブロンドに黒曜石の瞳を持つ美少年ですが、超俺様らしいですわ。
その後ろには副会長の深川英司。腹黒だという報告がありますの。なるほど、笑顔が嘘っぽいですわね。
会計担当は見た目チャラそうな片倉清一。男子生徒を侍らせまくっているという報告が。名前を改名した方が宜しいのではなくて?
書記担当の無藤和人は無口の根暗キャラ。彼の笑っている顔を見るといいことがあるらしく、小動物が大好きだという報告が上がっていますわ。
報告というからお気づきだと思いますが、そう、生徒会はお兄様を狙っている八人の内の四人。
お兄様もとても厄介な奴ら・・・方たちに目を付けられたものですわね。
麗鈴の高等部生徒会が黎明の生徒会と自己紹介が終わり、次に私たち中等部の生徒会も挨拶する事になりました。
挨拶と言っても私が生徒会の役員を紹介するだけですが。
「初めまして。私、麗鈴女学園中等部の生徒会会長を務めさせて頂いております、鳳千千尋と申します。今回も交流会参加同意していただいてありがとうございます」
お辞儀をして顔を上げ、中等部の生徒会を一人一人紹介していきます。名前を言ってもどうせ覚えていないだろうけど仕方ありませんわ。
それから交流会の目的や注意事項をクラブの生徒に説明し、各クラブに用意された会場に向かいます。
弓道部は弓道場へ、バレー部なら第二体育館へと。
交流会はお昼までで、昼食は黎明で頂く事になっております。各クラブが交流している間、生徒会は見回る役目があります。生徒会二名ずつに分かれ、それぞれに黎明の風紀委員が二人つくのです。
私は書記の佐治さんと一緒に見回る事になりました。そして風紀委員は中等部の久原という方と三河という方。
二人ともがっしりとした体格に人の良さそうな笑みを浮かべ挨拶してきました。なかなか好意印象ですわ。何故かしら、頭を撫でてあげたくなりましたわ。
「ではどこから行きましょうか?」
三河さんが各クラブの会場を印た地図を取り出し、訊ねてきた。笑顔が可愛らしいですわ。
「どこでもいいので近場からお願いします」
お兄様に会えないのだから適当でいいですわよね?
弓道場や茶室や科学室、音楽室等を周り、生徒の様子などを写真に収めていく中、ある事に気付きました。
男子生徒達が女子生徒がいるにも関わらず、男同士でべたべたしているのです。
その事に気付いた佐治さんが、女子がいたら普通嬉しいのではありませんか?と呟き、人目を憚らずくっつき合う彼らを見て困惑しておりましたわ。
そういえばと、移動している時も男子生徒が抱き合っているのをチラホラ見かけましたわ。
私は別にいいのですが、我が女学園にはそういう世界があるのを知らないピュアな心を持つお嬢様も多いのを知っておいて欲しかったですわ。これを機に何人のお嬢様が腐って行くのかしらね。
ふう、と溜め息を吐くと私たちの視線に気付いた風紀委員の二人が、その場にいた男子生徒を集めて何か話しかけましたわ。きっと人前では控えるように注意したのでしょうね。大変です事。
交流会はそれから再びクラブの行われている場所を巡り、佐治さんが写真を撮る中、頭の中で活動報告書を作り上げていく私。三河さんと久原さんは相変わらず男子生徒に注意を促し、そろそろ交流会も終わるという頃、事件が起こりましたの。
勢いで書いてしまった。他のもまだ更新していないのに。
主人公の言葉がおかしい理由はその内わかります。