幕間 寒くなかったの!?
さて。
ここまで。
読んでこられた皆様。
男性たちが。
現代人の感覚で言えば。
構造上。
ほとんど。
「ノーパン」
に近い状態で。
ドレスを着せられている。
という事実に。
驚愕された方も。
いらっしゃるのでは。
ないでしょうか。
そして。
ここで。
もう一つ。
とても。
素朴な疑問が。
浮かんでまいります。
皆様。
この物語の舞台は。
どこだったでしょう。
そうです。
ロシアです。
寒いです。
ものすごく。
寒そうです。
そんなところで。
下が閉じられていない。
巨大なスカートを穿いていて。
寒くなかったのでしょうか。
結論から申し上げます。
もちろん。
寒いときは。
寒かったでしょう。
ただし。
ここでも。
現代人が考える。
「下着を穿かずに、そのまま外へ出る」
という状態とは。
かなり違います。
なにしろ。
その身体の周囲には。
シュミーズがあり。
ペティコートがあり。
さらに。
ペティコートがあり。
場合によっては。
防寒性の高い。
厚手のものまであり。
その外には。
パニエ。
そして。
巨大なドレス。
大量の布です。
もう。
布。
布。
布。
でございます。
確かに。
股下そのものを。
ブリーチズのように。
閉じてくれるものは。
ありません。
ですので。
強い風が吹いたり。
歩いたりして。
スカートの下で。
空気が動けば。
冷たい空気は。
当然。
入ってまいります。
今回。
ソコロフが。
屋外へ降りた瞬間。
スカートの中へ。
風が。
ふわり。
と入り込み。
「何だ、この感覚は」
となっておりますが。
これは。
なかなか。
理にかなった反応です。
ところが。
立ち止まっている時は。
少し事情が違います。
何枚もの。
ペティコート。
そして。
大きく広がったスカート。
それらの中には。
大量の空気が。
抱え込まれます。
完全に。
密閉されるわけではありません。
ですが。
風を。
直接。
身体へ当てないための。
大きな壁にはなります。
つまり。
実に。
妙なことですが。
下は。
構造上。
開いている。
それなのに。
止まっている限り。
大量の布と。
その間にある空気のおかげで。
意外と。
暖かい。
しかし。
歩いたり。
風が吹いたりすると。
下から。
冷たい空気が入ってくる。
そんな。
一見すると。
矛盾した状態が。
成立するのでございます。
ですので。
ものすごく。
単純化して。
申し上げれば。
じっとしていれば。
思ったより暖かい。
動くと。
突然。
すーっ。
と来る。
そんな感じでしょうか。
しかも。
本格的な冬であれば。
当然。
外套や。
毛皮など。
さらに。
外側から。
防寒することになります。
ですから。
十八世紀の女性たちが。
毎日。
「寒い寒い」
と言いながら。
凍え続けていた。
というわけではありません。
ただし。
ここで。
一つ。
忘れてはいけないことが。
ございます。
これは。
本来。
女性が着ることを前提として。
発達した衣服です。
この物語では。
そこへ。
男性を。
入れております。
そう。
男性です。
男性の身体。
特に。
睾丸というものは。
温度について。
少々。
特殊な事情を抱えております。
正常な精子形成には。
体内の深部体温より。
少し低い温度が適しているため。
睾丸は。
身体の外側にある。
陰嚢の中へ。
収まっております。
そして。
暑ければ。
身体から離れる方向へ。
寒ければ。
身体へ近づく方向へ。
位置や表面の状態を変えながら。
温度を調整しています。
つまり。
男性のこの部分は。
もともと。
温度変化と。
かなり関係の深い場所なのです。
だからといって。
「そこから猛烈に体温が逃げる」
とまで言ってしまうのは。
さすがに。
言い過ぎです。
ですが。
普段なら。
長いシャツがあり。
ブリーチズがあり。
股下も。
きちんと閉じられている男性が。
突然。
それらを失い。
シュミーズと。
スカート中心の構造へ。
放り込まれたら。
どう感じるでしょう。
少なくとも。
本人にとって。
かなり。
妙な感覚だった可能性は。
ありそうです。
しかも。
ここで。
困ったことがございます。
こんな生活を。
日常的に送っていた男性の。
詳細な感想。
そんなものは。
ほとんど。
残っておりません。
エリザヴェータ女帝の。
メタモルフォーゼ舞踏会で。
実際に。
女性服を着せられた男性たちが。
スカートの中へ。
冬の冷気が入ってきた瞬間。
一体。
何を思ったのか。
「寒い」
だったのか。
「思ったほどでもない」
だったのか。
「何だこの妙な感覚は」
だったのか。
残念ながら。
そこまで。
細かい証言は。
確認できません。
では。
どうすれば。
分かるのでしょう。
……実験。
でしょうか。
どなたか。
十八世紀式の。
シュミーズ。
ステイズ。
ペティコート。
パニエ。
宮廷ドレスまで。
完全装備して。
寒い日に。
実際に歩いてみたいという。
勇気ある男性は。
いらっしゃいませんでしょうか。
なお。
風邪を引いたり。
お腹を壊したりしても。
作者は。
一切。
責任を負いません。
くれぐれも。
自己責任で。
お願いいたします。




