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それでも僕は魔王の後継者だと言い張る  作者: 唯野葦也
1章:始まりは突然に

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第2話:暗躍

 ノエルの猛追を何とか誤魔化せないか、そう思っていたクロードであったが前科と証拠が揃ってしまった以上翌日の自分に後処理を任せることにし、とりあえずその場を流すしかなかった。


 そして夜、餓死寸前の腹の轟音に見かねて宿場の店主がクリームシチューを持ってきたため『ありがてぇッ……!ありがてぇッ……!』と味わって腹心地が落ち着いて、さてノエル何某をどうするか思案してるところ。


 自室の窓を一羽の鴉がつつく。見れば文を持っているようだ。

 クロードはこの現象をよく識っている。”師”からの教鞭を兼ねた任務だ。


 クロードは嘆息を吐くと鴉から文を受け取る。すると鴉は途端に水になりベランダを濡らし消える。いつものことだった。文の内容は。



(ターゲットは最近やってきた冒険者たち、へぇ魔術師で徒党を組んでいるのか……)



「了解。これより任務を遂行する」


 クロードは文を終えるとそう独り言ちる。すると文は突然火であぶったかのように端から炭化していきやがて証拠もなく消えていく。

 一瞥すると、戦闘用の装備一式を身に纏ったクロードは窓から飛び出す。

 2階にある自室からの飛び降りだが鉄板仕込みのブーツを履いているのに音もなく着地すると現場へ急行したのだった。



+++++



「酒だぁ! おい、もっと酒を持ってこい!」

「オデは女! この街でとびっきりの美女を持ってきテ」

「私はイケメンが良いわぁ。この街にとびっきりの執事がいるって聞いたのだけど」


 ある酒場でモヒカン頭のリーダーを筆頭にガラの悪い冒険者集団が酒場を占拠し我が物顔で豪遊していた。


 「お客様……もうその辺で……」


 店主は怯え腰に退店を願うも帰ってきたのは返事でなく酒瓶だった。ガラス特有の破壊音が響くと一時だけ静寂が訪れる。


「あぁん? なんか言ったか? この街が平和なのは誰のおかげだと思っていやがる? そう! 俺たちグランクランが治安維持してやってるおかげだろうがよぉ!」


 グランクラン、素行は悪く金も平気で踏み倒す、冒険者とは名ばかりの蛮族集団。だが、実力は確かにあるせいでこの街の救世主様くらいの実力者で無ければこいつらを追い出すことはできなかった。

 酒場の店主はこのままではこの店が壊れると感じ、身代わりを差し出すに至った。


「そ、そういえば! イケメンの燕尾服を着た若者がある宿に泊っていると噂で聞きましたね」


 その店とは古い付き合いだったが我が身可愛さに差し出すしかなかった。


「ほんとぉ!?ねぇダリアン、そこ行きましょうよぉ」

「あぁん?そこには美人や酒もあるんだろうなぁ?」

「えぇ、宿泊してる女探偵は美人と聞きますし、宿のマスターは秘蔵の酒樽を持ってるとか…」


 ガタンッと机が蹴り倒される。


「そういうことは早く言え! つっかえねぇな。おらお前たち! いくぞ!」

「「ヘイッお頭ッ!」」



 酒場の店主は荒々しく酒場を出ていく荒くれどもを見ながら恨まないでくれよと心中でマスターに謝るのだった。



+++++



 水と花の都アモーラ市、そこは一年中花の香りが絶えず、中央噴水広場より流れる川には綺麗な水でしか生息できない魚たちが優雅に泳ぐ街。

 そんな身も心も清まるこの街で、傍若無人を振る舞い酒池肉林を欲しいままに生きてるような奴らがいる。


 夜でも犯罪を起こさないように照らされた市街地を酒瓶片手に大幅で練り歩くグランクランはどうやら師のお眼鏡に叶わなかったようだ。


 海賊か山賊かが歌うような荒れた音を深夜に響かせる連中に、忍び寄る影があった。その影は一人、また一人と裏路地へ引きずり込む。アモーラがいくら綺麗な街と言っても夜の裏路地はやはり危険で行きたがる人は少ないし、こういう現象が起こることから裏路地は基本的にまめに清掃されている。此度も持ちつ持たれつで利用させてもらっていた。


 最初に気づいたのは魔力察知の長けた一人の魔術師だった。


「お頭ぁ、俺らこんなに少なかったでしたっけ」

「あぁん? おめぇちょっと古参だからってナマ言ってるんじゃ」


 振り向いたそこには先程声をかけてきた魔術師はいなかった。それどころか追随して歌を合唱していた仲間たちのほとんどがいなくなっていた。


「あぁ? どうなってりゅ」


 首を掻っ切られる。リーダーは魔術師でもあるらしいから最優先で暗殺したかったが騒ぎが大きくなって混戦になっても面倒だった、だから。


「間引かせてもらった」


 ダリアンと呼ばれたモヒカン頭のリーダーも部下同様に敵に気付く間もなく処理された。


「ダリアン!?」


 側近二人も情報では魔術師ではあるらしい。本来、無魔である彼では戦いにくい相手、そう、いくら暗殺術に優れようとも。

 側近二人は偏差で魔術を放つ。冒険者が好む炎の魔術その拡販版。

 クロードはそれを素直に浴びる。


 だが無傷。


「お返しだ」


先程と同じ術をそっくりそのまま相手へ返したが流石に防御魔法で防いでくる。流石に甘すぎる攻撃だったと舌打ちするが相手も驚いていた。


「黒髪黒目……ッ! なんで無魔のくせにッ! いいえ! それより魔法が何で効かないの!」

「もしかしテ、コイツ、魔術師殺しの――」


クロードが短いスナップで黒塗りの鉄の釘を投げ飛ばし太った生き残りのうち一人の命を絶つ。


「魔術師殺しのD……」


 最後のターゲットは尻もちを付き震える体で魔術を連発で行使する。だがクロードは魔術に当たるように動き、街への被害を与えなずに魔術を無力化させながら近づきこれを始末する。


「任務完了ッと。序に貰った魔力で死体処理しておくか……」


 クロードがあるきっかけで魔力と引き換えに手に入れた魔術を超えた神秘、魔法を持って処理を成し終えた後ぽつりと呟く。


「俺は魔法の後継者だっての」


いや、戯言か。そう愚痴り、飛んできた鴉から報酬を受け取ると夜の酒場へ消えていくのだった。

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