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戦場の葬送曲  作者: 曇空 鈍縒


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電子戦と陰謀

 ザルカ帝国共産党中央委員会。

 黒いガラス壁の不気味なビルに居を構えるその集団は、ザルカ共産党を取り仕切り、ザルカ帝国の実質的な最高権力を保有している。

 政府の中枢としても機能するそこが、大混乱に陥っていた。

「不正アクセスです!やられました!」

「バックアップにも侵入されています!」

「ちっ。何とか権限だけでも取り返せないのか!?」

「パスワードが再設定されています。突破できません!」

「今すぐエンジニア招集しろ!」

 政府機関のアクセスを装って唐突に襲ってきたサイバー攻撃は、一瞬にしてサーバーを完全制圧した。

 スーツ姿のプログラマーたちがパソコン画面を睨み、各自が知りうるあらゆる反撃を試みているが一向に功を奏していない。

 共産党が政権獲得前から秘密裏に保有していたサイバー戦部隊は、現在ザルカ帝国のデータ管理を一元的に行っている。

 それだけサーバーのセキュリティは世界トップクラスで、優秀なIT技術者たちが24時間体制で管理を行い、難攻不落だった。

 少なくとも今日までは。

「ちっ! 犯人は」

 額に傷のある男が、すぐ隣の技術者に聞いた。

「特定を急いでいますが、あまり期待しないでください。海外のサーバーを少なくとも3つ以上は経由しています」

「予想はつくか?」

「アトラ連邦以外にあり得ますか?特務機関もやるようになりましたね」

 技術者は、冷静に答えた。ザルカ帝国共産党が秘密裏に保有する戦闘部隊『赤いオーケストラ』それが彼らの所属だ。

 現在に渡るまでその存在を確認できた諜報機関は存在しておらず、その能力と規模は特務機関すら優に超える。

 だが今は、完全にアトラ連邦に圧されていた。

「あ。攻撃治まりました」

 サイバー攻撃は、ほんの20分程度で終わった。

 権限を取り戻した技術者たちが、データを確認していく。

「特務機関関連情報が全損しています。出入国管理局のデータもかなりやられていますね」

 額に傷のある男は、弾丸を食らった腹部の傷跡を押さえた。

 あの時、どうせ顔写真があるからと殺さなかった工作員がいたはずだ。

 まさか。

「少し前に捕縛した工作員の顔写真はどうだ!?」

「ちょっと待ってください‥‥だめです。完全に破壊されています」

 技術者からの報告に、男は机を殴った。

「クソっ」

 辺りに、嫌な沈黙が流れる。

「待ってください!国防省のデータは無事です。例の情報も漏れていません!」

 男は数秒動きを止め、にやりと笑った。

「なるほどな。あの情報が無事なら問題ない。アトラ連邦もこれで終わりだからな。向こうの工作員の顔写真なんて不要だ」

「全てはザルカ帝国の未来のために。ですね」

 ああ。男は頷いた。


 そして数日後、アトラ連邦の前線は崩壊した。


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