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戦場の葬送曲  作者: 曇空 鈍縒


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22/33

後始末

 仮装巡洋艦は、数日ほどでアトラ連邦の民間港に辿り着く。

 到着する時には、シャーナの腕もほとんど完治していた。

 カヤはまだ松葉杖をついていたが、骨折もだいぶマシになっている。

 作業員の行き交う桟橋の上で、松葉杖は少し目立った。

「久々の陸地だな」

 シャーナは心地良さそうに目を細める。

 クレーンが忙しく動き回って、接舷した商船から荷物を下ろしている。

「迎えのバスが来ています。早くいきましょう」

 ライツがスマートフォンを取り出して、そう言った。

 港を出て、路駐しているスモークガラスの小型バスに乗り込む。バスの運転手は、実在するバス会社の制服を着ていた。

 そのほかにも、灰色の作業服を着た4名の人がまばらに座っており、一見すると単なる通勤バスだ。

 彼らが服の下に拳銃を隠していることには、シャーナも気づいていた。

 シャーナたち6名は、そのままバスの座席に座る。

 ドアが閉まって、バスが出発した。

 シャーナは窓に頭を寄せて、外の様子を眺める。

 そこは良くも悪くも普通の町だったが、ふと崩れたビルが映った。

 微かな硝煙の匂い。崩れたビルの周りには黄色いテープが張られていて、立ち入り禁止であることを示している。

 道路の方に崩れた瓦礫は多少撤去されたようだが、まだ消しきれていない。

 ミサイル攻撃や爆撃の爪痕は、目立ちにくくも至る所にあった。

 まだ戦線が膠着する前は通常弾頭の弾道ミサイルが飛び交ったし、戦略爆撃機による都市爆撃も盛んだった。

 この街も、その被害を受けたのだろう。

 侵略者たるザルカ帝国にとっては、街だろうが軍事基地だろうが同じだ。

 そこに人がいる限り、彼らは銃を向けてくる。

 ならば、特務機関がザルカ帝国を内側から食い荒らそうが、構わないか。

 敵よりもこちらの方が、殺す数は少ないのだから。

 バスは山道へと入っていく。森の木々が、その姿を覆い隠した。



 ある日の夜。

 訓練を終えたシャーナは基地の女性部屋で、自由時間を過ごしていた。

 最大16人を収容する部屋は細長く、左右の壁に机と二段ベッドが交互に並んでいる。

 内装には温かみがあり、床には絨毯まで敷かれていて、リラックスできる空間だ。

 今まではシャーナ、サリアの2人で使っていたが、現在は新しくカヤが加わった。

 工作員だが戦闘能力も高く、ザルカ帝国に精通するカヤは、傷の完治を待ってシャーナの分隊に入ることになったようだ。

 現在、机に設置したノートパソコンに向かって作業をしている。

「何してるんだ?」

「ん?ハッキングだよ」

 シャーナの問いに、カヤはサラッと答えた。

「ザルカ帝国に押さえられた顔写真の削除? 大変だね」

 サリアも、読み途中の本から目線を上げることもなく、そう言う。

 だがサイバー戦に関する知識があまりないシャーナは、状況が飲み込めずにオロオロした。

「大丈夫なのか?ここが特定されたりはしないのか?」

「問題ない。torっていうインターネット通信を匿名化するプログラムを使用しているから、逆探知は不可能に近いと思うよ」

 言っていることの半分も分からないが、とりあえず大丈夫だと信じることにした。

「カヤのプログラミング技術はすごい」

 サリアはそう称賛した。

 シャーナは、カヤのパソコン画面を覗く。

 黒い背景に、白い文字が次々と表示されていく。

 そこで何が起きているのかは全く分からなかったが、カヤにとってそれがさして難しくないことは、その表情を見れば分かった。

「ねえ、仕事終わったら飲まない?」

 カヤが、そう提案した。

「いいな」

「準備するよ」

 シャーナが賛同して、サリアが冷蔵庫からビールを取り出す。

 宴会の準備が終わるころには、カヤは全ての作業を終えてパソコンを閉じた。


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