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戦場の葬送曲  作者: 曇空 鈍縒


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雪山の狙撃手

 夜闇に沈んでいた山岳地帯が、朝日に照らされてその全容を現す。

 1人の小柄な兵士が、針葉樹の立ち並ぶ雪山をスキーで滑走していた。

 冬季迷彩が施された純白の戦闘服と、同じく純白の防弾ベストを身に着け、軍用のゴーグルとヘルメット、それに目出し帽で顔全体を覆い隠している。

 背中には大きなバックパックを背負っていて、それに兵士の身長ほどもある長い狙撃銃をくくりつけていた。

 太ももの所には、自動拳銃のホルスターも付いている。

 全身を白で統一した兵士の姿は、樹々すら雪に沈む銀景色へ完全に溶け込んでいた。

 兵士はしばらく斜面を滑走して、ちょうど崖の手前で立ち止まる。

 かなり長時間滑走していた割には、ほとんど息も切らしていない。

 兵士はスキーストックとスキー板を雪に突き刺して、崖下を覗き込む。

 眼下には、雪に覆われた軍事基地が鎮座していた。

 奥の方に簡素なデザインの白い施設が3棟並んでいて、手前にはアスファルトで舗装された駐機場が広がっている。

 バラックの格納庫が備えられた駐機場には、8台の白い雪上車に加え、15機の汎用ヘリと7機の対戦車ヘリが整然と並んでいた。

 緑の防寒服を着た整備士たちが、肌寒そうにしつつ燃料補給や点検作業に勤しんでいる。

 地形を無視した機動をするヘリ部隊だけでも十分に厄介なのに、基地の駐機場には大型トラックに搭載された8連装地対空ミサイルまで展開していた。

 戦闘機や爆撃機すら容易に撃墜するその射程は半径60㎞にもおよび、山岳地帯を飛行する空軍部隊にとって大きな脅威となっている。

 ミサイルの傍で勢いよく回転する板状のレーダーは広がる空を24時間体制で睨み続けており、攻撃機の近づく余地すら与えていない。

「なぜこんな山奥に‥‥」

 これだけの規模がある軍事基地を、どうやってこんな戦闘区域の真ん中に建設したのか一抹の疑問を覚えたが、それは任務という最優先事項によって瞬く間に上書きされる。

 そもそも、そういった事を考えるのは参謀の仕事であって、一兵卒の仕事ではない。

 兵士はバックパックを下ろして地面に伏せると、狙撃銃を構えた。

 ゴーグルを外してスコープを覗きこむと、綺麗な赤色の瞳が露わになる。

 風向きと距離を確認して高倍率スコープのゼロインを調節すると、目出し帽を少し下げて口元を出し、小型無線機のマイクを口元に寄せた。

「こちらシャーナ。狙撃地点に着いた。監視を開始する。オーバー」

「こちら本部。了解。オーバー」

 短い無線連絡を終えて、兵士は無線のマイクを戦闘服のポケットに戻す。

 素早く目出し帽を上げて、寒気に晒された口元を隠した。


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