悪役令嬢はサバイバルに出ることにした
なろうラジオ大賞の作品です
1000字未満とぎゅっと濃縮しているので、細かいことは気にせずにお楽しみください!
「アリア! お前との婚約を破棄し、国外追放を命ずる!」
煌びやかな夜会の最中、婚約者ダンテの声が突如てして響き渡った。
周囲の貴族たちは「ついに来たか」と含み笑いをし、新しく迎えられた聖女は彼の腕に絡まり、勝ち誇ったように微笑んでいる。
(……よし、計画通り!)
アリアは心の中で大きくガッツポーズを決めた。
「承知いたしましたわ。ただ、一つだけよろしいかしら?」
「命乞いか?」
「とんでもない」
言うや否や、アリアはドレスの背の紐を一気に引き抜いた。「何だ」と観衆が息を呑む中、重たい布が床に落ちる。
現れたのは、可憐さも気品も一切ないサバイバル仕様の迷彩服。腰にはナイフ、太ももには閃光玉。それと、背中には膨れ上がったバックパック。
「追放先は『屍の密林』でよろしいですわね?」
アリアは手際よく腰からナイフを抜き、ダンテの鼻先へ突き立てた。
「では殿下。それから裏で悪行を働いている新聖女様も、お達者で。私はこれから火を起こし、泥水を濾過して飲み、魔獣の肉を燻製にする最高のスローライフを楽しみますので」
この婚約破棄イベントは、これで十五回目。
最初は抗った。だが、どんなに泣いても、どんなに新聖女の悪行を暴いても、結末は変わらなかった。
森の中で餓死し、怪我をし、病に倒れ、生死を繰り返すうちにアリアは生き延び方を学んだ。
彼女は来るこの日に向け、万全の準備を整えていたのだ。
「ごきげんよう」
背を向けた、そのとき。
「待ってくれ」
呼び止めたのは、一人の男。飾り気のない外套、鍛えられた体つき。ただ者ではない気配を醸し出している。
「その装備……本気で屍の密林に行くつもりだな」
「ええ。止めても無駄ですわよ」
男は少しだけ口元を緩めた。
「いや、同行させてほしい」
「なぜ?」
「俺は名の出ないハンターだ。貴族の裏仕事を請け負っている。ちょうど、屍の密林の深部を調べる仕事があってな。一人で入るつもりだったが……あんたを見て考えが変わった」
アリアは一瞬だけ考え、肩をすくめた。
「共同生活は得意じゃありませんの」
「狩りなら任せてくれ」
実用的で無駄がない。その言葉は嫌いではなかった。
「では、その条件で」
二人は誰にも見送られず、夜会を後にする。
十五回目の婚約破棄の、その先で。アリアはようやく理解した。
生き延びる道は、誰かに与えられるものではない。自分で選ぶものなのだと。
そして今回は隣に立つ足音がひとつ分多い。
それだけで、十分だった。
お読みいただきありがとうございました!
この後、二人は新聖女が密林の放った魔物を美味しくいただいたり、ヒーローがとある貴族から引き受けた裏仕事で新聖女の悪行を暴きに殴り込み(物理)に行ったりと波瀾万丈だけど幸せな人生を歩みます。
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