みんな大好きB10
有休を終え、職場復帰しても初日は取り掛かる仕事もなく、カイドウの補佐に回りながら、製造部に移動となったイリスの様子を見に行く。カイドウの許しもあって、見学もさせてもらえた。
ビームシールドは予定どおり明日には完成する。すでに形になっていたため、あとは微調整を残すだけだという。
一通りの作業を終わらせてもまだ暇になる。
それをカイドウに伝えると「そりゃお前、整備士業だけでも俺の部下どもの倍以上の作業量だっただろうが」と呆れられてしまった。
そんな自覚はなかったのだが、振り返ってみればジャケット製造の一部と新装備の設計のすべてを同時進行させ、パイロット補佐とドローンカメラの操縦を兼ねるという、言葉にしてみればこれ以上とないマルチタスクを行っていて、ゾッとした。
そういえば俺、第2話辺りで「マルチタスクは苦手なんだよこんチクショウ」とか叫んでなかったっけ。
俺、いつの間にライトノベルや漫画のチート系主人公になったのだろうか?
手持ち無沙汰になり、悶々としながらプロトタイプガリウスGのチェックを始める。カイドウを説得して、いつでもビームシールドの実証実験を行えるように。こっそりと推進器をチェックし、推進剤を注入できるよう掃除をしたりして。
実証実験の許可が降りても、プロトタイプガリウスGが動かないのでは意味がない。
長い間ドローンカメラのための、大きすぎる操縦席になっていただけだからな。
それに実証実験だけではない。
ヒナが犠牲になるあの瞬間にも、俺が間に合わなければ意味がない。それがすべてだ。
ゆえに翌日。試作ビームシールドが完成し、さて実験はどうしようかとカイドウがシドウに相談を持ちかけたところを見計らって、割って入る。
「おやっさん。シドウ少尉。ビームシールドの実証実験、俺にやらせてください。ガリウスGとパイロットに、なにかあってはいけませんから」
「いや、だからって、お前だってなにかあっちゃ、コトだぜ?」
「実験なら俺がやる。俺のガリウスはFで、正式な量産機だ。もし不備で故障したとしてもパーツの替えはある。なんだったら七号機以降のナンバーズに乗り換えてもいいな」
「お前なぁ。パイロットの戦果は機体で決まるわけじゃねぇってガキの頃から言い聞かせてんだろうが。手前の腕前で勝負しやがれ。………つっても、お前のFも長い間頑張ってたもんなぁ。なら、そろそろ第七世代機に乗り換えてもいいか」
俺の話はスルーされた。チクショウ。
シドウが七号機に乗り換えるのは第1クールの終盤だ。これまで培ったガリウスFのデータを七号機に同期させ、シドウに合わせた調整を行い、そしてガリウスF・Sカスタムに用いた外付けのスラスターや外装を強引に取り付けたガリウスG七号機・Sカスタムが完成する。
さて、頼みの綱であったシドウが俺の提案を呑まないのであれば、次は誰を頼ろうか。
やはり最高責任者であるクランドか。それとも裏の支配者たるレイシアか。デーテルは役立たずだ。最初から勘定に入れていない。
「お前は俺の副官だ。お前に倒れられては、俺も困る。理解してくれ」
お、おぅ………イケメンの説得って、なんでこう、意味不明な破壊力を秘めているんだ?
違う。絆されるな。ここで折れてはなんの意味もないだろうが。
「待ってください隊長。最後までやり遂げてこその────くそっ!」
諭されてたまるか。と食い下がろうとした時。
また今日もアラートが鳴り響く。
「アンノウンだ。エースはプロトタイプガリウスGに搭乗。リモートにてミーティングに参加し、逸早くドローンカメラで出撃」
「………はい」
本っ当、空気を読まねえなぁ、アンノウンは。
すでに第6話Bパートも中盤だ。
ビームシールドの設計と製造は間に合った。あとはあの悲劇の瞬間に間に合わせればいいというのに、大人たちの説得に再び難儀する。
「………ま、お前も最後までやり遂げて一人前になりてぇってクチなんだろうけどよ。そんな慌てんなって。お前が誰よりも努力してることなんざ、このドッグにいる人間なら、俺含め全員知ってらぁ。尋常じゃねぇペースで、よくやったぜ。一人前にゃまだしてやれねぇがよ。学徒兵のなかじゃ、もう誰よりも数十歩先にいんだよ。一人前まであと数歩ってところだな。胸張りな」
「………そういうことじゃ、ないんですよ………っ」
カイドウに八つ当たりしても仕方ない。ガキやデーテルみたく喚いてもなにも変わらない。
怪訝そうな顔をするカイドウに見送られ、プロトタイプガリウスに搭乗。ハッチを閉めて引き篭もる。
「………いったい、あとどれくらいの時間が残されているんだ」
肝心となるのはそこだ。Bパートでも数回の戦闘があったとだけされている。数回………2回か? それとも3回? あるいは9回?
ヒナが犠牲になる戦闘が、どのタイミングで発生するのか予想できない。原作破壊行為のツケがまた回ってきた。
処刑を言い渡された囚人が、予定日を明かされずにその日の夜を迎える心境だ。胃が絞られるようにキリキリと痛み出す。
操縦席に座ると、電源を入れてシステムを起動。プロトタイプガリウスGのメインカメラが見たものをスクリーンに投影した。
右往左往する整備士たち。
ミーティングルームではシドウが集まったソータたちに軽く説明をしているところだ。右のモニターのひとつをミーティングルームに設置したカメラに同期して、内容を聞いた。
アニメ本編の会話から、イベントとトラブルの発生を推測するしかない。幸いにも、この日のミーティングはアニメ本編にはなかった。
『───以上だ。なにか質問は? ………無いな。よし。ミチザネ隊、出撃! ノギはドローンカメラで先行しろ!』
「了解」
クソッ………目を皿のようにして観察しても、ミーティングルームとドッグの会話を聞き分けようとしても、半分くらいしか理解できなかった。本編にあった会話があったかすらも不明。
カタパルトに乗せられたドローンカメラの編隊が射出され、プロトタイプガリウスGのコクピットもドッグから宇宙空間に切り替わる。
しかし、次の瞬間。1番のドローンカメラがいきなり爆発したのだった。
「なにっ!?」
『お、おいエース! いったいなにがあった!?』
「不明です! いきなり爆発しました! 整備不良があったわけじゃないとすれば………これは、狙撃!?」
『狙撃タイプだと!? お、おいそりゃあ………なんだってんだ!?』
グラディオスの鼻の先でいきなり爆発した原因は、俺が狙撃だと述べるも、現段階ではカイドウだけでなく全員が不可能だと答えを出すだろう。
なぜなら狙撃を可能にするアンノウンFタイプは第2クールから登場する。存在を知る俺からすれば、不可能だと断定するには早計だった。
ブクマ、リアクションありがとうございます!
最近は多彩なリアクションが入ってきて、面白いです。号泣?のマークが増えてきました。とても嬉しいです。
さて、Bパートも終盤です。いよいよ切羽詰まってきました。
どうやってヒナを助けるのか、助けられるのか………おそらく今日中に明らかになることでしょう!
現代のストックは3話分。あと4話を書き溜めなければなりません。いつもながら日曜日は追い込みですね。ですが皆様からの応援があれば、きっと乗り切れるはず! なにがどう面白かったなど、お声を届けてくれるとなおのこと喜んで筆を加速させることでしょう!
次回の更新はいつもどおり7時頃を予定しております!
作者からのお願いです。
この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!
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